『アオアシ』が描く、ユースクラブ選手のリアル 部活動のサッカーとの違いとは?
Jリーグの下部組織を舞台に主人公の青井葦人の成長を描く『アオアシ』。昨年2.5次元ミュージカルにもなった人気作品もとうとう20巻に到達した。
初めて本格的にJリーグの下部組織を描いた作品
これまでの日本のスポーツ漫画、特に10代、学生年代をテーマにした漫画は、その大半が高校の部活動をその舞台としていた。もちろんこれまでの10代のスポーツ文化の多くを支えていたのは部活動である。特に高校年代の野球なら甲子園、バスケならウインターカップ、バレーなら春高と、TVでも放送され、一般的な知名度の高い大会も多く、漫画としてその舞台を題材にすることは同年代、もしくは部活動を経験してきた読者にとっては感情移入しやすいことに異論の余地はない。
しかし、『アオアシ』が舞台にしたのはJリーグの下部組織、いわゆるユースクラブである。Jリーグが開幕して28年目を迎える。これまでも日本のスポーツ界において、他競技でもクラブチームというものは存在していたし、サッカーのクラブチームというものも多く存在していた。ただ、プロを頂点としてピラミッド型に組織作られ、上から一貫した体制で専門的な指導を受けられるクラブチームというのはJリーグの誕生によって作られた比較的新しい文化といっても過言ではないだろう。だからこそ現時点でもJクラブのアカデミーとよばれる下部組織というものが、特にサッカーに興味がない人たちにとってはいったいどんなところなのか、どんなことを子供たちは学んでいるのか、正直理解していない人が大多数を占めると思う。
だが、むしろそんな人たちにこそ、『アオアシ』を読んで、Jのアカデミーというものがどういうものなのか興味を持ってほしいと思う。一般的にJ下部に属する選手は、早い子では小2〜3から数百人集まるセレクションを勝ち抜いて能力(もしくは将来性)を認められた、文字通り選りすぐりの選手たちの集まりである。彼らはジュニア(12歳以下)、ジュニアユース(〜15歳)、ユース(〜18歳)とカテゴリーが上がるたびにクラブからふるいにかけられる。Jの下部組織には、ジュニアユースまでは複数のチームを持っているクラブも多く、そういったチームではユースに上がる段階で、単純計算で半分がふるい落とされる形になるのだ。
もちろん単に持ち上がりだけではなく、ジュニアユース、ユースの段階で他のクラブ、学校に所属していてスカウトをうけたり、セレクションで合格を掴み取る選手もいるが、ユースの段階ではやはり外部からの合格はどのクラブでも数名である。幼少期からそういうサバイバルに勝ち残ってきて、質の高い指導を受け、なおかつトップレベルの選手のプレーを間近で見てサッカーに打ち込める最高の環境が与えられるユース選手は、当然ながら自分の実力にも自信を持っているし、選ばれた人間だというエリート意識を持っている選手も多い。エリート意識というより、クラブに対する、己に対するプライドが高いといえよう。