『映像研には手を出すな!』芝浜高校はまるで九龍城や軍艦島! 人工島に自然発生した迷宮の魅力

『映像研には手を出すな!』芝浜高校の魅力に迫る

 漫画・アニメ・実写ドラマと好調な展開をみせる『映像研には手を出すな!』。今回は、3人組の通う高校ーー芝浜高校についてみていきたい。何らかのメディアでこの作品に触れたことがある方にとっては「この高校はどうやら普通の高校ではない」ということは、すでに周知の事実であろう。

秘密の隠れ家の高校版ーーそれが芝浜高校だ

 増築に増築を重ねた建物。意味の分からない高低差。学校へ行くには水上にかかる橋を渡る必要があり、まるで外界から切り離された迷宮だ。学内を歩くだけでちょっとしたダンジョン感を味わうことができる。

 子どもの頃、考えたことはないだろうか? 「秘密基地に住みたい」「広い世界を冒険したい」「水上都市かっこいい」「地下に潜りたい」「風車を回してみたい」これらすべての欲望を詰め込んだのが芝浜高校なのだ。

芝浜高校のモデルは九龍城? 軍艦島?

『フィラメント~漆原友紀作品集~』(講談社)表紙

 芝浜高校は、もともとは軍の設備であった人工島に「自然発生した」高校である。そのため、建物の規格も用途も何もかもがバラバラだ。コンクリートで作られたいわゆる通常の校舎のような建物もあれば、トタン板でできた建物もある。

 この建物の入り組み方は漆原友紀の『フィラメント~漆原友紀作品集~』の中の一作、「迷宮猫」の世界観にも似ている。建物と建物が密集しており、迷路のように入り組んでいる。実際、迷宮猫の主人公は迷子になってしまった。芝浜高校と通じるものがある。

 この2つの物語に登場する建物。現実世界にあるものとも酷似していないだろうか。そう、軍艦島と九龍城だ。

 軍艦島とは、炭鉱を中心にして栄えた島だ。島内で生活のすべてが完結でき、かつては多くの人が暮らした場所であった。炭鉱を中心にところ狭しと建物が立ち並び、入り組んだ迷路のような都市を形成していた。その形状や四方を水に囲まれているところが、芝浜高校の設定とよく似ている。今は人の住まぬ廃墟と化しているが、かつての繁栄がそのまま廃墟と化している魅力に引き付けられ多くの観光客が訪れている。

 また、軍艦島の他にもう一つ似ている建物がある。いや、あった。それは、多くの人が住み、かつて世界最大のスラムであった九龍城だ。

 一時的に無法地帯となった影響で、人々による勝手な建築がどんどん進められた。その結果、建物が継ぎ足しに継ぎ足しを重ねて密集し、一つの巨大な城を形成する至った。どの国の法律も適用されない無法地帯。ともすれば治安が悪くなりそうな状況であった。しかし、住民たちの間で自警団が作られ自治は守られていたという。今はもう取り壊され写真や映像の中でしか見ることができなくなってしまったが、あの混沌としたノスタルジー感は今も多くのファンを惹きつけてやまない。

 今回は軍艦島と九龍城を例にあげたが、このように人々を惹きつける建物は世界中に多くある。その中のどれがモデルとなったかは知る由もないが、芝浜高校にはこれらの建物と同じ魅力を感じさせられる。

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