宮部みゆき、異例の試み 単行本未収録の短編『ぼんぼん彩句』期間限定で無料配信

宮部みゆき、単行本未収録小説を無料配信

 宮部みゆきの短編小説『ぼんぼん彩句』6編が、5月1日から6月11日までの期間限定で特別配信される。これまで宮部の作品は電子書籍ではほとんど配信されていなかった。

 本作は月刊誌『俳句』で不定期連載されたシリーズで、単行本としての発売はまだおこなっておらず、先に電子書籍として配信されることとなった。配信は『ぼんぼん彩句』6篇の第1~3篇を5月1日に、第4~6篇を5月8日に電子書籍ストア「BOOK☆WALER」(https://bookwalker.jp/select/352/)にて行われる。「KADOKAWAアプリ」でも同日より読むことができる他、文芸WEBマガジン「カドブン」では5月1日より30日連続で全6編を分割掲載する。

*「ぼんぼん彩句 6 墓洗う」の一篇は無料電子書籍として5月11日頃より各電子書籍ストアでの配信も予定されている。

宮部みゆきコメント

《電子書籍版『ぼんぼん彩句』 特別配信のご挨拶を申し上げます》
 初めまして、宮部みゆきと申します。時代小説やミステリーを書いている作家です。電子書籍の世界ではほとんど作品を配信しておりませんので、このたび初めてお目もじする皆様も大勢いらっしゃると思います。どうぞよろしくお見知りおきのほどをお願いいたします。
 いつも紙の本の拙著をご愛読いただいている読者の皆様、こんにちは! 今日はウェブ上でお会いすることになりました。紙の本の新刊も準備中なのですが、この配信では、そちらとは別のシリーズ『ぼんぼん彩句』の短編6作をお目にかけたいと思います。

『ぼんぼん彩句』ができるまで
 エンタテイメント小説以外の文芸作品にはほとんど目を向けることのなかった私が、思いがけず俳句に興味を抱くようになったのは、倉阪鬼一郎さんが編まれた俳句アンソロジー『怖い俳句』(幻冬舎新書 平成24年9月)がきっかけです。「俳句という形式で語られる怪異」が目を瞠るほど新鮮で、強く心を揺さぶられました。
 自分も俳句を作ってみたい。そう思って、仕事で長いこと親しくしている方たちに相談してみますと、それは楽しそうだ、句会をやってみましょうと、たちまち話がまとまりました。私がいちばんの素人で、実は編集者さんたちには経験者が多く、最初からいろいろ教えてもらうことができたのは、とても恵まれていたと思います。
 こうして、3ヵ月に1度ぐらいのペースで句会(と打ち上げの楽しい宴会)を開いていたのですが、一生懸命(ヘボな)怖い俳句や怖くない俳句をひねり続けているうちに、私はもう一つ欲が出てきました。俳句を素材に短編小説を書きたい。
 俳句は、言葉で一瞬の情景を切り取ります。言葉による写真と言ってもいいでしょう。1枚の写真を題材に短編小説を書くように、一つの俳句を素材に短編小説を書けないか。というわけで、句会のメンバーの皆さんの作品を頂戴し、書き始めたのがこの『ぼんぼん彩句』という短編シリーズなのです。ちなみに、タイトル『ぼんぼん』は、俳句作りには素人、凡手の私たちのこと。『彩句』には、それでも彩り豊かな句をひねりたいと努力しています、という意味を込めました。
 今回ご披露する6つの短編は、初出としては、角川文化振興財団発行の月刊誌『俳句』に掲載されました。この歴史と伝統ある雑誌の購読者の皆様に歓迎していただいたことで、私はいっそう欲が出てしまい、春夏秋冬の季語が入った句をタイトルにして12本の短編小説を集め、単行本化を目指しています。
 とはいえ、そこまではまだまだ時間がかかる。ならば、雑誌とは違う形で今一度、多くの読者の皆様に、『ぼんぼん彩句』をご披露してみたい。私のわがままな思いつきを、KADOKAWAの担当部署の皆さんがかなえてくださいました。今年は、いつもとはまったく違うゴールデンウィークになりました。俳句と短編小説のコラボが作り出す小さな世界が、皆様にちょっとした気分転換をお届けできるとしたら、作者としてこれ以上の喜びはありません。
どうぞ、ゆっくりとお楽しみくださいませ。
STAY HOME SAVE LIFE
2020年5月1日 宮部みゆき

■内容紹介
『ぼんぼん彩句 1 枯れ向日葵』(ボンボンサイク 1 カレヒマワリ)
半年前に職場の仲間に笑顔で送られ寿退社をしたアツコは、その一か月後に婚約者から結婚を取りやめにしたいと言われる。9月のある暑い日、経路図も見ずにやって来た路線バスに乗り込んだアツコ。何人もの乗客を乗せては降ろし、最終的にバスが向かった先で出会ったのは……。

『ぼんぼん彩句 2 蜥蜴の子』(同 2 トカゲノコ)
小学5年生のケンイチは、引っ越した家の近くの、雑木林に囲まれた薄暗い丘が気になっていた。ある日、その丘を一人で探検中、トカゲに誘われるように、土の中から小さな虫メガネを見つける。実は、その虫メガネは5年前に行方不明になった男の子の宝物だった……。

『ぼんぼん彩句 3 月』(同 3 ツキ)
お姉ちゃんは二十歳の女子大生。やんちゃで口が達者な五つ年下のあたしと違って、おとなしくて控えめなお姉ちゃんは、かなりの美人なのにこれまで男子が寄りつかず、ずっと一人だった。そのお姉ちゃんに彼氏ができた。インスタグラムで見せてくれたタツヤ氏は背が高く、さっぱりした顔立ちのメガネ男子。お母さんもあたしもお姉ちゃんの幸せは、自分の幸せ。ソフトな感じで見守ることにした。だから、誰も気づかなかった。幸せいっぱいのはずのお姉ちゃんが、ときどき顔を曇らせるようになっていたことを。

『ぼんぼん彩句 4 薔薇』(同 4 バラ)
大学一年生のミチコの悩みは、恋人であるケイタのこと。告白されて付き合い始めたものの、ケイタや彼の友人は素行が悪く、ミチコを「金づる」としか見ていない。警戒したミチコは彼らと距離を置き始めたものの、バイト帰りに拉致されてしまう。ミチコが連れてこられたのは、心霊スポットとして有名な廃病院だった。廃病院にひとり取り残されたミチコの前に現れたのは、恐ろしい姿をした女の怨霊で……。

『ぼんぼん彩句 5 鶏頭』(同 5 ケイトウ)
結婚をしたとき、私は幸せになれると思っていた。けれど、それは間違いだった。夫にはずっと好きな女の子がいて、義父母も義妹も彼女が夫と結婚することを望んでいたのだ。それが実現しなかったのは、その女の子こと”みっちゃん”が15歳のときに死んでしまったからだ。月命日にお参りをし続ける義妹、”みっちゃん”の写真を会社に飾る夫、形見分けされた絵を大切にする義母。いちばんおかしいのは、だれ――?

『ぼんぼん彩句 6 墓洗う』(同 6 ハカアラウ)
お盆休みの一日、結城琴子は、家族連れで亡夫が眠る霊園に墓参りにきた。近くに住んでいる息子夫婦と二人の孫に加え、国際結婚した娘の沙苗が久しぶりに夫のカルロスとともに帰国しているので賑やかな一行だ。管理棟のカフェで嫁と孫たちと休憩し、洗面所に立つと、窓の向こうには墓を掃除する息子と娘夫婦の姿が見える。かけがえのない家族の情景だと琴子は思う。だが、その直後、かつて近所付き合いをしていた守口夫人と鉢合わせする。琴子は身体の奥で蛇のようなものがうごめくのを感じた。

撮影:ホンゴユウジ

■宮部みゆき(みやべ・みゆき)略歴
1960年東京生まれ。87年「我らが隣人の犯罪」でオール読物新人賞を受賞。『龍は眠る』(日本推理作家協会賞)、『本所深川ふしぎ草紙』(吉川英治文学新人賞)、『火車』(山本周五郎賞)、『理由』(直木賞)ほか著書、受賞歴多数。

■月刊誌「俳句」について
昭和27年創刊の俳壇を代表する俳句文芸誌。常に俳句文芸全般をリードして歩みを進め、誌史はそのまま日本戦後俳句史ともなっている。文芸誌の中でも文化人の信頼篤く、一流俳人の寄稿はもちろん、俳優や小説家など文化人インタビューも多く、バラエティ豊かな誌面が特徴。積極的に若手の発掘・登用を心がける「いつも旬」な媒体。年に4回の付録「俳句手帖」(春・夏・秋・冬)が付く。毎月25日発売、発行:公益財団法人 角川文化振興財団
http://www.kadokawa-zaidan.or.jp/haiku/

■「カドブン」について
作家と読者の橋渡し役を担う文芸の編集者自らが、 読者の皆様へ出来る限り近い距離で「物語」の面白さを伝え、 読書の楽しみを伝えたいとの願いから生まれたメディア。「物語」を愛するすべての人へ向けた、 作家インタビューや書評、 特集企画等のコンテンツを配信する。
公式サイト:https://kadobun.jp/
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