アメリカ現代写真の原点、ロバート・フランクを辿る3冊ーーパーソナルな写真がもの語る、ケルアックらとの交流
そんなロバート・フランクに強く影響を受けた日本の写真家、操上和美氏が故人に捧げた写真集『April』も同社から発売になった。操上氏とロバート・フランクが共に訪れたニューヨーク、ノヴァ・スコシア、北海道富良野。ロバート・フランクの終の住み家であったノヴァ・スコシアと操上氏の故郷である北海道の風景がまるで同じの場のような錯覚を覚えるが、北海道で自らが被写体となったロバート・フランクを見つめると、彼がなにを思い感じているのかわかった気がした。
いま『The Americans』をめくると、そこに映し出される景色たちは一見特別なものだとは感じられない。名もなき人々の日常であり、いつもの町の風景なのだ。しかしロバート・フランクという「目」がファインダーを通してフィルムに焼き付けられた写真は広告や報道のような大衆へ向けてではなく、彼個人のプライベートなものであり極めてパーソナルな写真であるという評価を知ると、彼の写真が特別なものだと感じられないのは写真がとてもパーソナルなものになった時代に私たちが生きている何より証なのではないだろうか。それが半世紀が過ぎてなおロバート・フランクの写真に魅せられる理由なのかもしれない。
■すずきたけし
ライターとイラストレーター。元書店員。ウェブマガジン『あさひてらす』で小説《16の書店主たちのはなし》連載中。『偉人たちの温泉通信簿』挿画、『旅する本の雑誌』(本の雑誌社)『夢の本屋ガイド』(朝日出版)に寄稿。
■書籍情報
『SWITCH Vol.38』特集 追悼 ロバート・フランク[1924-2019]
価格:本体1,000円+税
<発売中>
https://www.switch-store.net/SHOP/SW3805.html
『Coyote No.35』(2009年)
<品切れ>
https://www.switch-store.net/SHOP/CO0035.html
写真集『April』
価格:3,200円+税
<発売中>
http://www.switch-pub.co.jp/kurigami-kazumi-april/
すべてスイッチ・パブリッシングより出版。
文中紹介のロバート・フランク写真集『The Americans』は日本版(JICC出版局/1993年発行)絶版。