『あやうく一生懸命生きるところだった』訳者が語る、韓国社会に学ぶ“正解に縛られない”生き方

『あやうく一生懸命~』訳者インタビュー

絶対正解の人生マニュアルなんてない

――心を決めたら行動が速いですよね。一方で、ブームでワッと流行りのお店が増えたと思ったら、また違うお店になっていたりして。韓国に行くたびに、日本にはない情熱を感じます。

岡崎:この前韓国に行って驚いたのが、その時に出会った現地の編集者の多くが「最近は残業していない」って言うんですよ。すごいなーと思って。日本が「働き方改革だって言うけど全然変わらないね」とか言ってる間に、パパパッて社会が変わっている。その行動力は、本当に見習いたいところです。韓国の社会を見ていると、本当に正解とされている生き方が少なかったんだと思います。みんなが「これだ」っていうのを見つけたら、みんなでそこに走っていくしかなかった。日本はまだ「○○のプロフェッショナル」とか「勉強ができなくても一芸があるから」とか、別のルートが許されているイメージがありますけど。もちろん、その別ルートは別ルートで大変なこともありますが、韓国ではこの本が、そういう道を見つけようとする時間があってもいいよね、っていう気づきになったんじゃないでしょうか。よく「日本の慎重さと韓国の情熱を足して2で割ったらちょうどいい」って言われてますけど、本当にそう思います。「幸せになりたい」という思いは日本も韓国も同じだけど、考え方や行動が違うから、それぞれで良いノウハウを持ちよれたらいいと思うんですよね。実際の現場はいろいろあるでしょうが(笑)。

――この本、よく日本の小説やマンガが登場しますよね。

岡崎:『孤独のグルメ』『散歩もの』、是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』など……娯楽コンテンツから生き方に気づきを得るなんて、ハ・ワンさんはさすがだと思いますね。取り上げているコンテンツがすでに日本でも周知されているから「翻訳本の感じがしなかった」というような感想が寄せられるのだと思います。

――ところでハ・ワンさんと同じく、岡崎さんも美大卒だそうですね。。

岡崎:はい。この本を読んでいて、ハ・ワンさんのものごとを見る視点が優しいなあと感じます。美術鑑賞って、多様性を認めるってことだと思ってます。絵を見てどう思うかなんて、人それぞれで。美術には正解がないから好きなんです。デザインにはありますが……(笑)。人生も一生かけた自分の作品だと例えるなら、正解なんてなくて。他の人が見てあーだこーだ言う声に、不必要に傷つく必要もない。

――美術館に行って、いろんな絵があったほうが楽しいですもんね。

岡崎:そう。だから、いろんな人生があっていいともっと認められてほしいですね。正解、間違いじゃなくて、もっとやさしい目線で認め合えたらいいですよね。道は一つじゃないですから。

■書籍情報
『あやうく一生懸命生きるところだった』
著者:ハ・ワン
翻訳:岡崎暢子
出版社:ダイヤモンド社
価格:本体1,450円+税
<発売中>
https://www.diamond.co.jp/book/9784478108659.html

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