カイジ、トネガワ、ハンチョウ……予想不能な広がりを見せる“福本伸行ユニバース”の懐の深さ

“福本伸行ユニバース”の懐の深さ

 こうした福本伸行ユニバースの自由さ見ていて思い出すのは、故・水木しげる先生の漫画です。『ゲゲゲの鬼太郎』『悪魔くん』など、水木しげる先生の主に子ども向けのアニメ作品として成功し、今なおニチアサの顔を張っています。しかし水木しげる先生の漫画本体は、ユーモラスな部分はあるものの、非常にダークでシリアスな作品です。アニメとは別物と言ってもいいでしょう。ネコ娘なんてドンドン原型がなくなっていますが、水木しげる先生は生前、特に気にしていないと語っておりました。

 私には今の福本先生が、どこか水木先生と重なるような気がしてなりません(お金にシビアな点も共通していますし)。ひょっとすると数年後にはニチアサで『賭博黙示録カイジ』をやっているかもしれません。『遊戯黙示録カイジ』みたいなタイトルで、命の危険がないゲームで遊ぶような感じの……どうです? ないとは言い切れないのが怖くないですか? 『カイジ』を読んだあとに『トネガワ』『ハンチョウ』を読むと、そんな気分になるのです。だってカイジが耳をアレしてたとき、利根川がムーンウォークする漫画が出来るとは思わなかったじゃないですか。無限に、しかも予想不能の方向に広がってゆく福本伸行ユニバースから目が離せません。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

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