年末年始の文芸書ベストセラー、伝統を更新するミステリー『medium 霊媒探偵城塚翡翠』と『魔眼の匣の殺人』に注目

年末年始の文芸書ベストセラー考察

 「新しい密室トリックを造ろうと試行錯誤して閃いた」と今村氏が語る『屍人荘~』では、大学生探偵たちが孤島の洋館で、これまた本格ミステリーには禁じ手と思われがちな“あるもの”に取り囲まれてしまう話だったが、『魔眼~』で彼らはまたも陸の孤島に、未来を予言する老女とともにとじこめられてしまう。

 第1作目のプレッシャーも少なからずあっただろうが、昨年2月の刊行にもかかわらず8位ランクインを果たしているのは、映画をきっかけに原作を手にとった読者が続きを読まずにいられなかっただけでなく、「1作目に負けず劣らずおもしろい」「むしろ1作目以上におもしろい」という評価が盤石であったからだろうと思われる。

 古今東西、多くのミステリー作家の手によって使い尽くされたと思われたトリックを、「その手があったか!」という視点で新たに切り開いていく。『medium 霊媒探偵城塚翡翠』も『魔眼の匣の殺人』も、伝統を踏襲したうえで読者に新たな驚嘆と喜びを提供する作品だ。この2作とともに、本年もより驚きに満ちたミステリー作品に出会えることを願う。

立花もも◎1984年、愛知県生まれ。ライター。ダ・ヴィンチ編集部勤務を経て、フリーランスに。文芸・エンタメを中心に執筆。橘もも名義で小説執筆も行い、現在「リアルサウンドブック」にて『婚活迷子、お助けします。』連載中。

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