年末年始の文芸書ベストセラー、伝統を更新するミステリー『medium 霊媒探偵城塚翡翠』と『魔眼の匣の殺人』に注目

年末年始の文芸書ベストセラー、伝統を更新するミステリー『medium 霊媒探偵城塚翡翠』と『魔眼の匣の殺人』に注目

週間ベストセラー【単行本 文芸書ランキング】(1月7日トーハン調べ)
1位『黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続』宮部みゆき 毎日新聞出版
2位『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼 講談社
3位『暗約領域 新宿鮫XI』大沢在昌 光文社
4位『ライオンのおやつ』小川糸 ポプラ社
5位『大名倒産(上・下)』浅田次郎 文藝春秋
6位『アラフォー賢者の異世界生活日記(11)』寿安清 KADOKAWA
7位『落日』湊かなえ 角川春樹事務所
8位『魔眼の匣の殺人』今村昌弘 東京創元社
9位『冒険者をクビになったので、錬金術師として出直します! 辺境開拓?よし、俺に任せとけ!(3)』佐々木さざめき 双葉社
10位『人間』又吉直樹 毎日新聞出版

 2020年最初の文芸書(単行本)のトーハンベストセラー。注目はなんといっても2位の『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(相沢沙呼)だろう。著者のデビュー10周年を記念する作品ともなった本作。年末に発表された宝島社「このミステリーがすごい!」2020年版国内篇、原書房「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング、Apple Books「2019年ベストブック」2019ベストミステリーでは、軒並み1位を獲得した。

 デビュー以来、“日常の謎”にこだわりつづけてきた相沢氏が、禁じ手としてきた殺人事件をはじめて描いた本作は、これまで数々の難事件を解決してきた推理作家・香月史郎が、黒髪に碧玉色の眼、蒼白(そうはく)の肌をもつ少女・城塚翡翠と出会い、新たな事件に巻き込まれていく物語。推理作家が探偵役、というのは古来ある手法だが、この翡翠という少女はなんと死者の声を聴く霊媒。つまり推理しなくとも最初から真実(犯人)がわかってしまうということで、ある意味これも、推理小説においては禁じ手だ。一切の手がかりを残さない殺人鬼、しかも翡翠に狙いをさだめたその魔の手から、いかに逃れて解決に導くか。ご都合主義に走らず読者を高揚させ納得させる物語の道程に期待が高まる、のは当然なのだが、読者の予測をかるがる覆す仕掛けがそこかしこに散りばめられているのが、本作が高く評価された理由だろう。

 「すべてが、伏線」。そんなキャッチコピーを謳われれば、誰だって常以上に注意を払って読み進めるし、簡単には騙されまいと警戒する。それでも騙されてしまうから、驚嘆も常以上に大きくなるのだ。

 すべての読書好きを魅了した青春小説『小説の神様』が本年、佐藤大樹(FANTASTICS from EXILE TRIBE)と橋本環奈の主演で映画化されることが決定し、喜ばしいことである反面、鮎川哲也賞出身でありながら代表作がミステリーでなくなってしまうことに焦燥を抱いたという相沢氏。作家としての矜持をかけた、2019年を代表するにふさわしい本格ミステリー作品だ。

 8位にランクインした『魔眼の匣の殺人』(今村昌弘)もまた、2020年「このミステリーがすごい!」で第3位にランクインした作品で、相沢氏と同じ鮎川哲也賞を受賞した『屍人荘の殺人』の続編にあたる。

 受賞の際、相沢氏も〈仕事中だったが、誘惑に勝てず一気読みしてしまった。あー、はい、面白い。これは面白い。〉とコメントを寄せた『屍人荘~』は刊行直後から話題となり、現在累計78万部を突破。「このミステリーがすごい!2018年度版」「週刊文春ミステリーベスト10」「2018 本格ミステリ・ベスト10」で1位を獲得したほか、第18回本格ミステリ大賞を受賞。国内ミステリーランキング4冠を達成し、12月13日からは神木隆之介×浜田美波×中村倫也という豪華キャストで実写映画化もされている。

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