タヌキの婚活ラブコメ漫画『ラブ・ミー・ぽんぽこ!』が描く、笑えてときめく結婚観

『ラブ・ミー・ぽんぽこ!』レビュー

笑いのない見開きは22回のみ

 この【少女漫画】は、うら若きタヌキ女子が、色々と生きづらいタヌキの世を出て、条件の良い人間の男と結婚するための婚活物語です。

 突然ですが、「キツネ七化けタヌキは八化け」という言葉を聞いたことはありますか? 日本の伝承物語で、化ける動物の代表格といえばキツネやタヌキ。ただ、「狐の嫁入り」を始めとして、化ける動物としてのキツネには神秘的な印象があり、一方でタヌキは何となくコミカルで、ちょっと詰めが甘いイメージです。

 人間同士ですら高度な心理的駆け引きが要求されると噂の婚活。どれだけ上手に化けたとしても、タヌキが人間界で婚活できるの!? 大丈夫!? と、心配になりますよね。

 私も心配のあまり、書店で見かけたこの漫画を即座に購入し、家に帰るなり一気に読んでしまいました。読み終わって最初に思ったことは、「意外ときちんとラブコメだった」という素朴な感想でした。タイトルから、「これはラブコメって言うより、コメディ9.5:ラブ0.5くらいかな…」と思っていたのですが、そんなことはありません。ちゃんと、今後に期待が持てるラブ要素がたくさん出てきました。

 ラブの相手は、序盤からきっちり出てきます。彼らから、今ヒロインタヌキに向けて出ている矢印は、まだちゃんと恋愛感情と呼べるものとは限りません。何らかの意識を持っている、という状態です。でも、その矢印が微妙で方向性が定まっていない点こそが、少女漫画の醍醐味といっても良いでしょう。現時点に対してヒロインタヌキに様々な態度で接している彼らが、今後どのように恋に溺れていくのかを考えただけで、ワクワクしてきます。

 一方でコメディ要素ですが、期待通りにてんこ盛りです。小さな書き文字・顔芸に至るまで、随所にタヌキラブコメらしい笑いが溢れています。面白さを何とかわかりやすく伝えられないかと、笑いにシビアな人間になりきって、笑いのない見開きを探してみました。私の独断に拠ると、条件に合致する見開きは22回。紙の漫画のページ数はおよそ190ページです。計算上、95回ページをめくることになるのですが、めくったページで笑いが待っている確率は85%以上! もちろん笑いのツボに個人差はありますが、読んでいる時間の85%、クスッとしたりニヤッとしたり、ニマニマしたりできます。

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