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tofubeats × imdkm『リズムから考えるJ-POP史』対談 「イノベーションの瞬間を記録している」

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 ライター/批評家のimdkmが初の書籍『リズムから考えるJ-POP史』を刊行したことを受けて、9月25日にユーロライブにて盟友・tofubeatsをゲストに迎えた対談イベントが開催された。『リズムから考えるJ-POP史』執筆のきっかけから小室哲哉がJ-POPに与えた影響、宇多田ヒカルのリズムの解像度、そしてimdkmの今後の執筆の予定についてまで話は及んだ。(編集部)

『リズムから考えるJ-POP史』の出版について

imdkm

imdkm:元々「リアルサウンド」や自分のブログに、ポップスやヒップホップ、EDMなどのリズム構造や構成の分析、J-POPの歌の譜割りについての記事を書いていたんですよ。リズムについては、自分の得意技の1つにしようかなとは思っていましたね。そこに本の依頼もあったし、2018~2019年に出たJ-POPの新譜で、リズムのアプローチが面白い作品が多くて。この本はそういう状況から遡って、「J-POPを30年見てみたらどうなるだろう?」という企画です。

 本を出すことが決まってからは、10年ごとに、こういう部分をピックアップしたら面白いんじゃないかなというものを見繕って、時系列に並べて。それが実際の本の構成になりました。だから組み立て方は、ほぼ最初の発想から変わってないですね。1章から2章は1990年代、小室哲哉から始まって、和製R&Bが出てきて、CDの全盛期が終わるまで。3~5章は2000年代で、m-flo、中田ヤスタカ、Base Ball Bear。クラブカルチャーが入ってくることを踏まえて、2000年代のダンスミュージックとJ-POPがどういう風に関係していったのかを総括してます。で、6章は2010年代。30年の流れの中で、トピックが繋がるようには意識してます。例えば、m-floとか中田ヤスタカの話をした後に4つ打ちロックの話をするっていうのも意味があって。4つ打ちロックって今は夏フェスとかのイメージがあると思いますが、2000年代ってダンスミュージックとかフレンチエレクトロとかの影響で、ジャンルの入り混じった猥雑な印象があったんですよ。だから4つ打ちロックとして2010年以降に括っちゃうと、その猥雑さが忘れられちゃうかなって。トピックだけを見るとちょっとアラカルトっぽいけども、僕の中ではこのように並べることに歴史的な意義を感じてますね。

tofubeats:WEBの記事も読んでいましたけど、本で読むと全然印象違いましたね。より網羅的になっているのもありますけど、やっぱりストーリーが大分色濃くなっていくんで。これがあったから、こうなったみたいな流れが、よりわかりやすくなってますね。WEBの記事からどれくらい書き足しました?

imdkm:WEBは一記事4000字で、本は一章がほぼ一記事のトピックなんだけど、本だと一章12000字くらい。3倍ですね。最後の宇多田ヒカルや三浦大知の話は書き下ろしに近いです。WEBよりも割と突っ込んだ話をしてますね。

小室哲哉がJ-POPに与えた影響

tofubeats

imdkm:1章では、小室さんがプロデュースした楽曲のBPM分布図を入れてるんです。それの結果が結構面白くて、TRFのシングルのBPMを見ていくと、どういう戦略で楽曲のリリースが続いたかっていうのが如実に見えてくるんですよ。小室さんは、90年代にダンスミュージックのボキャブラリーをJ-POPの中に持ち込んできた人ですよね。だから最初は「BOY MEETS GIRL」のようなアップテンポでわかりやすい曲だったんですけど、TRFがリスナーに受け入れられていくごとに段々BPMを落としていって、ハウスやガラージのような玄人好みの感じになっていく。それは意識的にやっていたという小室さん本人の発言もあって。つまり、ある種のダンスミュージックとしての正当性みたいなものをJ-POPの中で実現しようとしたときに、一番わかりやすい尺度がBPMだったのかなと。「Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~」はTRFが『レコード大賞』をとった代表曲ですが、「BOY MEETS GIRL」とかのテクノっぽいグルーヴとは明らかに違いますよね。ブラスやストリングスが入ったりして。「これは新しい音楽だ」とテクノミュージックをJ-POPに翻案してきた小室さんが、TRFの活動に段々と手ごたえを感じる中で、2年くらいかけて「ここまではいけるだろう」と感じてリリースした曲であり、それが『レコ大』をとった。リスナー側がどこまで実感していたかはわからないけども、小室さんの中では割ときれいなストーリーになっていそうだなと思います。

tofubeats:このあとにSMAPの4つ打ち期であったりとか、ハロプロをダンス☆マンがアレンジした時期が出てくるので、実際に小室さんの教育がシーンに時間差で反映されていますよね。

imdkm:トータス松本が「ガッツだぜ!!」(ウルフルズ)を制作するにいたったきっかけ「Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~」をはじめとするtrfや小室哲哉作品だったという発言もしていて。これは小室さんが持ち込んだ4つ打ちのグルーヴを、「これが今リスナーに受け入れられるんだ。だったらダンスミュージックっていうものを自分たちでもやってみよう」っていうモチベーションだったようなんですね。だから、日本人受けするディスコ歌謡、最近でいうと「恋するフォーチュンクッキー」(AKB48)とかにまで繋がる流れをつくったのは、小室さんの90年代の仕事だったんじゃないかなと。

tofubeats:そういうインパクトを与えたリズムの変遷は、本の中でも各章で取り上げられてますよね。たとえばMISIAが出てきて、R&Bが受け入れられて、宇多田ヒカルが出てきたり……そういうイノベーションの瞬間を、この本はちゃんと記録してます。あと読んでいて面白いのが、やっぱりJ-POPのイノベーションってリズムが軸だったんじゃないか、という気がしてきちゃうところですね。それについてどう思いますか? 本のテーマが“リズム”というのはありますけど、メロディでイノベーションが起きてたっていう印象よりは、リズム(で起きていた印象)の方が強いんじゃないんですかね?

imdkm:tofubeatsも解説で書いてくれているけど、リズムって新しいジャンルに結び付きやすいんです。たとえば音階が変わったからって、突然別のジャンルが生まれるってことは中々ないわけですよ。でも、4つ打ちじゃなくて8ビートだよねとか、8ビートじゃなくて16ビートだよねとか。そういう考え方をすることで、リズムに関する感覚が如実に変化していることは確かですね。かつ、そういうのって言語化しにくいんです。リズムって直感的にわかりそうで、実はちゃんと分析するのは難しい。メロディとかは、ここでこういう転調があって、これは新しいですねって言いやすいですけど。だから、リズムの微妙な差異が産む新しさっていうのを強調して、プレゼンしているのがこの本ですね。

tofubeats:画期的ですよね。J-POPって上にのってるのは日本語だし、メロディがあってコードがあって、というのは全部一緒じゃないですか。だからJ-POPという枠の中だと、自由度が高いのは実はリズムなんですよ。ポピュラー音楽であれば、ある意味リズムは問われてないっていうのがJ-POPの特徴なので。普通はリズムが変わったら(ジャンルの)棚が変わっちゃうわけですよ。それがJ-POPであるがゆえに、付け替え可能だったっていうところに着目して30年追っていくと、こうもバリエーションあるのかということに気づかされました。

      

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