連載「lit!」第145回:BABYMETAL、乃木坂46、超ときめき♡宣伝部……アイドルの“今”を映し出す最新曲5選

 変化は常にエンターテインメントの中心にある。その最前線ともいえる日本のアイドルシーンでは、メンバーの卒業と加入、コンセプトの刷新、音楽性の拡張が日々交錯し、ファンの感情と共鳴しながら進化し続けている。2025年前半。新体制のスタート、新たなセンターの抜擢、そしてジャンルを越えた音楽的挑戦――“今”という時間を切り取るような楽曲が、各グループから次々と届けられている。本稿では、その中から5曲をピックアップ。新章を歩み出したアイドルたちの「現在地」と、そこに息づくリアルな熱を探る。

乃木坂46「ネーブルオレンジ」

乃木坂46『ネーブルオレンジ』

 乃木坂46の38枚目シングル曲「ネーブルオレンジ」は、訪れた世代交代の空気を象徴する1曲だ。Wセンターを務めたのは、5期生の井上和と中西アルノ。繊細でありながら芯の強い歌声を持つ2人が描くボーカルラインには、まさに“次世代”を感じさせる説得力がある。サウンドはどこか歌謡曲の匂いを漂わせるノスタルジックな仕上がり。明るさと切なさが交差するメロディに、「過去の恋」「記憶の残り香」といった情緒が織り込まれ、乃木坂46がこれまで紡いできた世界観を巧みに継承する。「THE FIRST TAKE」で披露された歌唱も、静かな感動を呼んだ。ライブでは、しなやかで統制の取れたダンスと、控えめながらも確かなエネルギーが会場を包みこむ。乃木坂46の今は、次世代が伝統を引き継ぎながら、自らの色で塗り替えていく過渡期の輝きに満ちている。

ZOCX『badface/ENDINGING』

【MV】ZOCX『badface』 Music Video

 ZOCからMETAMUSE、そしてZOCXへ。改名と再始動を経てなお、常に衝動を携えながらアップデートを続ける彼女たち。新体制初のシングル『badface/ENDINGING』は、ZOCXというグループの二面性と再生の決意が詰まった両A面だ。「badface」では、自己嫌悪と葛藤を正面から見つめるようなリリックが、作詞作曲・大森靖子、編曲・大久保薫によるメロウで毒気を孕んだサウンドに乗って揺れる。一方の「ENDINGING」では、盟友サクライケンタによるダイナミックなアレンジが、グループとしての“覚悟”を映し出す。戦慄かなのの復帰、そして新メンバーの加入で生まれたケミストリーが、ZOCXのライブ現場では鮮烈な熱狂として表れる。理屈を超えた衝動と、剥き出しの感情が交錯するステージは、まさに“ZOCでしかありえない何か”を体現している。

【MV】ZOCX『ENDINGING』 Music Video

AKB48「まさかのConfession」

まさかのConfession Music Video / AKB48 65th Single【公式】

 20周年を迎えたAKB48が提示したのは、原点回帰と進化の融合だった。65枚目シングル曲「まさかのConfession」では、18期研究生・八木愛月がグループ史上初となる研究生センターに抜擢。名実ともに“新たな時代”が幕を開けた瞬間だ。軽やかで王道なアイドルポップに乗せて描かれるのは、冴えない日常を過ごしていた少女の心を揺らす、突然の告白。MVのストーリー構造も「まさかの主役抜擢」というテーマを強調し、まるで八木本人のシンデレラストーリーと重なって見える。劇場公演、お話し会、SNSなどを通じてファンと接しながら、ステージで成長を見せ続けるAKB48の今を、まっすぐな眼差しで射抜いたような一曲だ。“会いに行けるアイドル”の根幹は、今も変わらず息づいている。

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