『Angel Beats!』から15年 『けいおん!!』『WORKING!!』『迷い猫オーバーラン!』…2010年春アニメは名曲揃い?

 先日、Keyブランドで有名なビジュアルアーツの公式X(旧Twitter)から「Angel Beats! 15周年」とポストされ、当時を懐かしむ声が多く挙がっていた。

 『Angel Beats!』と言えば、作中に登場するバンド・Girls Dead Monsterが歌う粒揃いの楽曲たちを思い浮かべる人も多いことだろう。80’s、90’sのロックを掛け合わせたストレートなバンドサウンドと、作曲を手掛けた麻枝准らしい変則的な拍子やメロディは多くの視聴者を虜にしてきた。また、神秘的なピアノの音色とLiaのクリスタルボイスがマッチしたOPテーマ「My Soul, Your Beats!」も語り継がれるべき名曲。2024年12月にこれらの楽曲がサブスク解禁されたこともあり、再び注目を集めている。

 そんな『Angel Beats!』が放送された2010年春クールのアニメを振り返ると、今でも語り継がれる名作が数多く並んでおり、作品を彩った主題歌の数々も現在のアニソンシーンに大きな影響を与えている。本稿では、2010年春アニメの作品と主題歌を振り返りながら、それらがどのような形で現在のシーンに影響を与えているかを探っていく。

 最初に挙げる作品は、“女子高生×バンドアニメ”の伝説的作品『けいおん!』。2009年にアニメ第1期が放送されるや否や、社会現象になるほどの一大ブームを巻き起こした。その第2期『けいおん!!』は、結果として作品的にも商業的にも第1期以上の凄まじい盛り上がりを見せたのだ。その盛り上がりを象徴する楽曲として、第2期第1クールのOPテーマである超速アッパーチューン「GO! GO! MANIAC」は外せない。MYTH & ROIDやOxTとしても活動する音楽プロデューサー・Tom-H@ckが手掛けた情報密度の高いサウンドに平沢唯役の豊崎愛生の可愛らしい歌声が乗っかった中毒性の高いこの曲は、歯切れのいいイントロのギターリフやスラッシュメタル並みの高速ビートなど、テクニカルな要素がこれでもかと詰め込まれている名曲だ。

 一方で、OPテーマ以外の『けいおん!』の楽曲はバンド初心者でも演奏できるような簡単なフレーズが多いことでも知られており、実際「ふわふわ時間」や「天使にふれたよ!」といった劇中で演奏された曲たちは、OPテーマと比べると「自分でも弾けるかも?」と思わせる魅力があった。第2期第1クールのEDテーマ「Listen!!」もそんな楽曲の1つ。自己主張の強いキーボードとうねるベースラインが印象的なキャッチーな楽曲で、サビの爽快感と秋山澪役の日笠陽子の柔らかくもクールな歌声も相まってずっと聴いていられる心地よさがたまらないのだ。

 『けいおん!』はキャラソン文化の世間への周知や現在のガールズバンドアニメブームの先駆けといったアニメ作品への影響はもちろん、多くの人へ楽器に触れるきっかけを与えたという意味で音楽シーンへの功績も大きい。秋山黄色やすりぃといった『けいおん!』の影響を公言しているアーティストが続々と出現しているのも、15年という月日を感じさせるのに十分だろう。

 キャラソン文化という繋がりで同じクールに放送されていたのが、ファミレスを舞台にしたラブコメアニメの『WORKING!!』第1期。種島ぽぷら(CV:阿澄佳奈)、伊波まひる(CV:藤田咲)、轟八千代(CV:喜多村英梨)の歌うOPテーマ「SOMEONE ELSE」は、スカパンクの要素を入れ込んだ中毒性の高いキャッチーなポップチューンだ。

 対して、哀愁漂うロカビリー調なEDテーマは、小鳥遊宗太(CV:福山潤)、佐藤潤(CV:小野大輔)、相馬博臣(CV:神谷浩史)が歌う「ハートのエッジに挑もう Go to Heart Edge」。こちらはどこか懐かしさを感じさせる楽曲で、バックに流れるギターのサウンドと合間に挿入されるクラップ音が特徴的である。どちらもアニソン界の至宝とも言える存在である神前暁が手掛けており、嫌味なくスッと耳に入ってくる気持ちよさと耳に残るメロディを両立させるという、彼の特徴が明確に表れた楽曲だ。

 そして、このクールのキャラソン主題歌で最もインパクトのある楽曲が、芹沢文乃(CV:伊藤かな恵)、梅ノ森千世(CV:井口裕香)、霧谷希(CV:竹達彩奈)の歌う、アニメ『迷い猫オーバーラン!』OPテーマ「はっぴぃ にゅう にゃあ」だろう。不安定ながらもなぜか何度も聴きたくなる、奇跡的なバランスで成立している電波ソングで、過去にはタイトルに掛けて元日に108回ループ再生する番組が放送されるなど、アニメが終了したあとにも様々な形で愛されている楽曲である。

TVアニメ「迷い猫オーバーラン!」OP映像(はっぴぃ にゅう にゃあ/ 芹沢文乃(伊藤かな恵)&梅ノ森千世(井口裕香)&霧谷希(竹達彩奈))【NBC A&✕M30周年記念OP/ED毎日投稿企画】

 萌えや中毒性の高さといった電波ソングを構成する要素は、「うまぴょい伝説」や「シカ色デイズ」といった後世のバズ楽曲にしっかりと継承されていたりする。そういった意味では、2010年頃までに生まれた“電波ソング”はニッチと大衆性の狭間でカルト的な人気を博していたと言えるかもしれない。

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