連載「lit!」第133回:Mrs. GREEN APPLE、Official髭男dism、SUPER BEAVER……2024年を象徴する名作5選
2024年を振り返ってみると、米津玄師『LOST CORNER』やBUMP OF CHICKEN『Iris』、マカロニえんぴつ『ぼくらの涙なら空に埋めよう』など、昨年も各アーティストから渾身の楽曲/アルバム作品が届けられた。
そういうわけで、語り出すとキリがないのだが、本稿ではチャート実績や話題性などを踏まえたうえで、邦楽ロック/バンドの2024年ベスト作品として5作をピックアップした。あらためて作品に触れながら、2024年を思い返してはいかがだろうか。
Mrs. GREEN APPLE「ライラック」
昨年、Mrs. GREEN APPLEの活躍は目覚ましいものだった。5カ月連続リリース、初のスタジアムツアーやKアリーナ横浜での定期公演に加え、直近では『18祭』(NHK総合)での名演も記憶に新しい。取り上げた「ライラック」は、5カ月連続リリースの第1作目として4月にリリースされた。“ミセス史上最高難易度”と言われた若井滉斗(Gt)のギター、Cメロで挟まれる心の揺れを表すような3・3・3・4の変拍子、終始疾走感のあるバンドサウンドに乗せて、何者でもないことを受け止めたうえで自分を愛していくと歌う。キャリアという面でも、スキルという面でも成長を感じさせながら、この曲でミセスは青春のその先を描いてみせた。今の彼らだからこそ生まれた曲だったと思う。なお、『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)では本曲と、〈あの頃の青〉である「青と夏」の2曲を歌唱した。
Vaundy「タイムパラドックス」
11月より自身最大規模のアリーナツアーを開催したVaundy。昨年も「ホムンクルス」「GORILLA芝居」「風神」と次々と作品が届けられたなかで、同年明けにリリースされたのが「タイムパラドックス」だ。『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』の主題歌として書き下ろされた同曲からは、〈ポケット〉〈未来〉といったドラえもんに関するワードを取り入れた遊び心も感じさせられつつ、初めて聴いた際に、まるで晴れた空の下をスキップしているようなイメージを抱いたのを覚えている。踊るようなピアノに、同じメロディラインが繰り返されるシンプルな構成。この軽やかさは、今までのVaundyにありそうでなかったものかもしれない。もちろん、タイアップ作品から導かれたのもあると思うが、彼の引き出しの多さにまたしても驚かされた一曲だった。
Omoinotake「幾億光年」
2024年に大躍進を遂げたバンドを挙げるとしたら、Omoinotakeは外せないのではないだろうか。ドラマ『Eye Love You』(TBS系)の主題歌として書き下ろされた「幾億光年」は、相手を一途に想う切ない歌詞と、それを際立たせる藤井怜央(Vo/Key)のボーカル、彼ららしい美しいメロディも光る一曲。1月24日の配信リリースから約3カ月でBillboard JAPANチャートにおけるストリーミングの累計再生回数1億回を達成し、バンドは念願の『紅白』初出場も叶えた。昨年、同曲をきっかけにOmoinotakeを知った人もいるかもしれないが、ジャージードリルビートが印象的な「渦幕」や、ラテンのリズムを取り入れた「空蝉」など、彼らには実験的な試みをしつつポップスに昇華した名曲が多数ある。ぜひこの機会に過去作品も遡って堪能してほしい。