乃木坂46「ネーブルオレンジ」は派手さはないが“豊か”である 井上和×中西アルノによるボーカル表現の極み

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参考:https://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2025-04-07/

 2025年4月7日付(4月1日発表)のオリコン週間シングルランキングで1位を獲得したのは、乃木坂46の『ネーブルオレンジ』。表題曲「ネーブルオレンジ」のセンターを務める井上和と中西アルノの歌声の相性のよさには震えました。冒頭50秒程度で、「勝負あった」と感じたほどです。

 「ネーブルオレンジ」には、いくつかの言及すべき軸がありますが、やはりまずは井上と中西によるボーカルに触れずにはいられません。低音がふくよかな井上のボーカルで幕を開け、そこに中西のボーカルが続くスタイルなのですが、そこでの中西の抑揚の付け方や歌い回しを含めたニュアンスの豊かさは、満点の解答用紙を見た感覚になります。MVでは、井上と中西が東急多摩川線の車両内で歌うシーンもあるのですが、この2人がそんなところで歌ったら車窓がビリビリと音を立てそうだ、と感じるほどです。

乃木坂46『ネーブルオレンジ』

 『ネーブルオレンジ』のリリースに合わせて、『THE FIRST TAKE』で乃木坂46の「君の名は希望」を歌う動画も公開されたのですが、そこに登場するのは井上と中西のみ。こちらは聴いた瞬間に心の奥に染み込むほど繊細な中西のボーカルで始まり、しなやかにして凛とした井上のボーカルが続き、サビでの2人のハーモニーには胸が震えるものがありました。「ネーブルオレンジ」においても、この井上と中西のボーカルに重点が置かれています。

乃木坂46 - 君の名は希望 / THE FIRST TAKE

 また、「ネーブルオレンジ」のサウンドも、これまでの乃木坂46の路線とはやや異なる印象を受けました。一言で言えば、派手さはないのに豊かであるということです。特に1番のBメロでの、エレクトロなサウンドのループとストリングスは、「ネーブルオレンジ」のサウンドを決定づけています。編曲は樫原伸彦が担当。男声コーラスや、ダメ押しのようなエレキギターも利いており、サビの清廉さに酔いしれることになる――という構造です。

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