XGは名実ともにグローバルアーティストだった ワールドツアーで磨かれたパフォーマンスの進化を体感

XGが2月23日、東京・有明アリーナでグループ初のワールドツアーの日本凱旋公演『XG 1st WORLD TOUR “The first HOWL” Landing at Tokyo』を開催した。デビューからたった3年で、アジア、北南米、ヨーロッパまで全46公演を予定し、名実ともにグローバルアーティストのスターダムを駆け上がっているXG。この1年間で世界を見てきた彼女たちにとって、今回の有明公演は、凱旋公演とも位置付けられる。数十年後にも語り継がれているであろう彼女たちの軌跡を、ここに記そうと思う。

定刻を過ぎた頃、マイケル・ジャクソンの「スリラー」が流れると会場のムードが一気にライブモードへ切り替わる。VCRでXGのシンボルであるオオカミが全員を宇宙空間に連れ出し、XGの世界に没入した瞬間、近未来からやってきたような衣装に身を包んだXGが「What’s up Tokyo! You ready?」と登場し、ロックテイストの「SHOOTING STAR」で幕が上がった。
赤紫のレーザー光線が張り巡らされる中、世界を知る者だけが表現できる、重厚感を感じるダンスブレイクで瞬く間に魅了。全米ビルボード “Hot Trending Songs” 初登場首位に輝いた「GRL GVNG」を経て、JURINが「新たにXGのアンセムに仲間入りした」と語る「HOWLING」、2024年に彼女たちの代表曲となった初のオールラップソング「WOKE UP」へ――これは、XGが世界基準である証明とも言えるセットリストだ。この時点で、“世界” とは彼女たちにとって憧れる「場所」ではなく、彼女たち自身の存在、いる場所そのものが「世界」なのだと思い知らされる。歌い終わるたびにあちらこちらから漏れ聞こえる「最高!」の声、7人に共鳴して会場中から飛び交う、狼に似た遠吠え。その全てがXGを熱狂的に求めていた。
序盤のVCRでは、XGが輩出されたオーディション「X-Galaxy」参加当時の7人が、覚悟の言葉を語る場面が流れた。本ツアーを通じてここに立ち返ることで、XGが生まれた意味、XGとは何者なのか、そしてこれまでの道のりを、ALPHAZ(XGのファンの呼称)と共有する時間だったように思う。映像の中のJURINが語った「一回売れて落ちるんじゃなくて、永遠に売れているアーティストになりたい」という言葉を、彼女たちは今、人生をかけて体現している。

中盤は2ndミニアルバム『AWE』収録の「SPACE MEETING Skit」を挟み、2stepのビートで銀河を駆け抜けるような「IYKYK」や弾むベースサウンドをダンスミックスで魅せた、“Thank God, I’m Fly” を意味する「TGIF」、広げた両手を上下させるダンスがアイコニックな「SOMETHING AIN’T RIGHT」など、広いジャンルにまたがる名曲が盛りだくさん。まさに終わらないパーティー(〈the party don’t stop〉/ 「TGIF」)のはじまりだ。さらに、HINATAが「XGが日本に帰ってきましたー! ただいまー!」と元気よく声を上げたり、MAYAが「今日も“ぶちかましのかまかまこ”でお願いします!」とXG用語でALPHAZに呼びかける様子に、母国ならではのコミュニケーションが垣間見えた。


これまでもメンバー1人ひとりのソロパフォーマンスを取り入れてきたXGだが、本ツアーでも公演ごとに変わる選曲でALPHAZを夢中にさせた。この日披露されたのは、中世風のドレスを纏ったJURIAによる「Without You」(マライア・キャリー)、アメリカンガールなピンクのミニドレスが輝くMAYAによる「Give your heart a break」(デミ・ロヴァート)、ロリータ衣装に身を包み、まるでアヴリル・ラヴィーンの風格を見せたHINATAによる「Pray」(Tommy february6)、直視しきれない色気あふれるダンスを見せたJURINによる「Luxurious」(グウェン・ステファニー)、和傘を取り入れダンスのみで“色気と殺気”を表現したCOCONAによる「長く短い祭」(椎名林檎&浮雲)、レトロフィルム感ある白黒フィルターで、昭和の歌謡曲の雰囲気が歌声とよく似合っていたHARVEYによる「東京キッド」(美空ひばり)、スモークを張った雲海風のステージにたたずむ姿が、正真正銘のディーヴァ(歌姫)だったCHISAによる「Halo」(ビヨンセ)の7曲。全て、彼女たちがどんな思いで歌い、そして踊っているのか、目で、耳で、そして心で受け取ることができる時間だった。