『なんてったってAKB48』のアイドルソングは“あえて”のセレクトに? ラインナップから選曲の意図を探る
CD Chart Focus
参考:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2025-01-06/
2025年1月6日付(1月7日発表)のオリコン週間アルバムランキングで首位を獲得したのはAKB48『なんてったってAKB48』で、推定売上枚数は184,764枚だった。続く2位には、NCT WISHの日本1stアルバム『WISHFUL』(85,940枚)がランクイン。ほか、トップ10圏内の初登場作品としては、3位に中島健人『N / bias』(50,490枚)、4位 OCTPATH『Present』(48,196枚)、5位 まふまふ『世会色ユニバース』(33,065枚)、7位 藤井 風『Fujii Kaze Stadium Live “Feelin’ Good”』(26,363枚)、10位『きららトリビュートコレクション「結束バンドの歌ってみた」』(11,402枚)があった(いずれも推定売上枚数)。
さて、今回取り上げるのは首位のAKB48『なんてったってAKB48』。AKB48としては初となるカバーアルバムであり、「“アイドルタイムマシン”をコンセプトに、昭和・平成・令和の各時代を彩ったアイドルソングをAKB48メンバーがカバー」した内容になっている(※1)。キャンディーズ「年下の男の子」にはじまり、女性ソロアイドルからグループアイドル、あるいはダンスボーカルグループなどの名曲が合計14曲収録されている。
“タイムマシン”とはよく言ったもので、収録されているカバーのアレンジは原曲に忠実、というかほぼ完コピといっていい。正直にいえば、だからこそカバーというよりもどこかカラオケ的に感じられてしまうきらいがある。あくまでそれは、メンバー個々の歌唱力や表現力の問題ではなく、アルバムの構成やアレンジの方向性の問題として。どれほど素晴らしい歌唱でも、やはりこうしたコンセプトのもとでは“カラオケっぽさ”を逃れられない。この点は、グループの中から選抜された歌唱メンバーのキャラクターを把握しているファンであれば、また異なる文脈を見出して深く鑑賞できるだろう。
ただ、アレンジをオリジナルに沿うのであれば、気になってくるのが選曲だ。こちらについていえば、たとえば「Body & Soul」が選ばれているSPEEDは、アイドルではないとは言わないまでも、前後の流れからは少し浮いているようにも見える。先にわざわざ「ダンスボーカルグループなど」と書いたのはこのあたりの事情による。新しい学校のリーダーズについても同様だ。ただ、こちらは「オトナブルー」という楽曲自体がアイドル歌謡のオマージュというかパロディのようなつくりなので、なおさらややこしいのだけれど。
しかし、SPEEDや新しい学校のリーダーズが“アイドル”か否かがごく些細な問題に思えてくるのが、HoneyWorksの「可愛くてごめん」が選曲されていることだ。この曲はいわゆるキャラクターソングであって、アイドルソングとは言い難い。念のために言うと、歌っているキャラクターがアイドルというわけでもないのだ。「Body & Soul」にせよ「オトナブルー」にせよ「可愛くてごめん」にせよ、アイドルか否かという境界線をふまえた“あえて”のセレクトなのかもしれない。しかし実のところ、そうした選曲の妙というよりは、同時代のアイドルから選曲するのが難しかったのだろうか(なにを選ぶかだけではなく、実現するかも含めて)、と余計なことを思ってしまう。