UNISON SQUARE GARDEN、結成20周年の今出すことに意味のあるベスト盤 究極を目指し続けた3人の音楽開拓史
結成20周年を迎えたUNISON SQUARE GARDENが、初のベストアルバム『SUB MACHINE, BEST MACHINE』を7月24日にリリースした。
結成10周年記念アルバム『DUGOUT ACCIDENT』(2015年)ではシングル表題曲を1曲も収録しなかったり、結成15周年記念アルバム『Bee side Sea side ~B-side Collection Album~』(2019年)はタイトル通りカップリング集だったりと、これまでベストアルバムのリリースを頑なに避けてきた彼らがいよいよ踏み切ったということで、20周年の特別さが窺える。とはいえ、今作もストレートなベストアルバムではない。CD3枚のうち、DISC1は、結成~メジャーデビュー前後に制作されたものの音源化されていなかった未発表曲11曲と新曲「アナザーワールドエンド」によって構成されている。つまり、ベストアルバムにも関わらず、CDまるまる1枚分はほとんどの人が知らない曲が収録されているということになる。
代表曲や有名曲を網羅したベストアルバムは、新規リスナーに対する入り口になり得るが、はたして、これまでリリースをリアルタイムで追ってきたファンにとっても価値のあるアイテムになっているのか――という課題は以前からあったように思うが、多くのリスナーがストリーミング配信サービスを利用し、疑似ベスト的なプレイリストを各々自由に作成することも可能な現代ならばなおさら、ベストアルバムの存在意義が問われるところだろう。未発表の蔵出しというアイデアは、おそらく「CDを買った人が一番いい思いをするように」とパッケージの充実を図ってきた今までと同じテンションで出てきたものだろう。なお、「アナザーワールドエンド」を除くDISC1収録曲はストリーミングでは配信されない。
未発表曲と言うと、“クオリティがOKラインに達さずにボツになった曲”というイメージを持つ人もいるかもしれないが、そうではなく、たまたまタイミングに恵まれなかっただけであることがDISC1を聴くとよく分かる。冒頭2曲=「星追い達の祈り」「空の在処」で“最後の最後に短3度転調”(VImをVIにクオリティチェンジし、Ⅰとして鳴らすことで解決する)という同じ手法が採られていたり、若干の青さは垣間見えるものの、どの曲もクオリティは高く、「そもそもいい曲がたくさんあったから、1stシングルから名曲をリリースできたのか」というふうに合点がいく。突然カウントが3+3+3+2になる「レボリューションナンバーミー」、サビで歌っている内容に今のユニゾンの姿勢に近いものを感じる「ミカエルは雲の上」、「Cheap Cheap Endroll」(6thアルバム『Dr.Izzy』収録曲)の〈美人、如雨露、酸素マスク〉などと同じく、語感的にしっくりくる名詞を並べたフレーズである「bad music disco」の〈ドリル・冷蔵庫・長電話〉、「ラズベリー、my dear」の〈君の代わりなんて誰も 居るはずがないんだよ〉というメッセージ……現在にも繋がる個性の片鱗を随所から感じ取れるだろう。
歴代シングル表題曲と配信限定曲をリリース順に収録したDISC2・3は、1stシングル曲「センチメンタルピリオド」~5thシングル曲「オリオンをなぞる」の再録と6thシングル曲「流星のスコール」の再ミックスがアツい。メジャーデビュー時よりもやわらかい歌声による「センチメンタルピリオド」に“大人になったUNISON SQUARE GARDEN”を感じ、涙腺が緩んだのも束の間、「今の自分たちの手で、よりよい曲に」という熱意のこもったアプローチの数々に高揚させられる。そんな再録&再ミックスを含む計22曲から垣間見えるのは、速い・複雑・緻密の3拍子が揃った3ピースアンサンブルを自らの王道として確立させ、新しい発想も取り入れながら、その個性を尖らせ続けたバンドの歴史だ。めくるめく音楽開拓史のラストを飾るのは、昨年リリースした19thシングル曲「いけないfool logic」。華やかかつ軽やかなサウンドに乗って歌われる〈結局僕らが勝利しちゃうから 狂騒をくれよ!〉というフレーズが頼もしく感じられた。