生田絵梨花「もどかしさやわからなさが表現に繋がる」 挑戦の日々から生まれる音楽活動の原動力

表現者として怒涛の日々を駆け抜けている生田絵梨花。ミュージカルやドラマの出演作が立て続く一方、歌手としての動きもますます活発になってきており、楽曲のリリースやツアーはもちろん、音楽番組でMCを務めるなど、多岐にわたる活動を展開中だ。そこで、1st EP『capriccioso』(2024年4月)でデビューを果たして以降の1年間の音楽活動を振り返るべく、生田にインタビュー。絶えず挑戦を続ける過程で、より大きくなっている“歌手としての原動力”に迫った。(編集部)
「いろんなジャンル経験が一つのアイデンティティ」
――生田さんの2024年全体の振り返りをしていきたいと思うんですけど、まずはミュージカル『レ・ミゼラブル』の帝国劇場公演、お疲れ様でした。
生田絵梨花(以下、生田):ありがとうございます!
――これから『レ・ミゼラブル』の全国ツアー公演が3月から再開し、生田さんが主演を務めるNHK特集ドラマ『天城越え』のオンエアが控えていて。
生田:あとは、帝劇のコンサート(帝国劇場 CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』/2月14日〜28日まで開催)ですね。
――そんな俳優として多忙を極める生田さんですが、いろんな活動軸が並行して進んでいる中で、歌手としての生田絵梨花というのはご自身にとってどのような軸になっていますか?
生田:歌手活動以外では、例えばいただいた作品でその人物やセリフをどう表現していくかというのが求められていることなんですよね。音楽活動ではどう感じるかを自分の言葉で伝えますし、ライブでも何かの役を演じるわけではなくて、自分自身としてステージに立って最初から最後まで、音楽もMCもお客さんと一緒に作っていく――そうやって自発的にできるのが違いとしてあります。その軸の中で応援してくださる人、曲を聴いてくださる人と繋がれる瞬間が私はすごく好きです。単発的にというよりも、この先、自分の人生とともに長く続けていけたらいいなという思いが強くあります。

――誰かを演じるか、自分を表現するかの違いがあると。
生田:もちろん自己実現をしてるわけではなくて、聴いてくれる人が(気持ちや人生を)重ねられるようにという意識はずっとあるんですけど、表現するものと想像していくものが一体になっているのが音楽という感覚ですね。
――乃木坂46の時代から、舞台に出演しながらグループに帰って活動に還元していく部分はあったと思いますけど、ソロになってからは歌手と俳優の仕事を並行して進めていくということにおいて意識の変化は感じますか?
生田:グループ時代は両立していくとなった時に、グループに行くと自分の足りていない部分とか追いついていない部分をフォローしてくれる仲間がいました。でも一人になると、もちろんチームのみなさんはいますけど、一度ステージに立ったらそこには自分がすべての責任を背負って存在しなきゃいけない、何かを発さなきゃいけないというところは大きな違いなので、持ってるダンベルが重くなってくるような感覚。でもその分、鍛えられる大変さと楽しさ、やりがいの両方を感じていますね。
――その期待と成果が、ツアーに表れているのかなと思っています。例えば『Erika Ikuta Autumn Live Tour 2023』では、「ハレンチ」(ちゃんみな)でMusical『GYPSY』の振り付け師の方が入っていたり、『Erika Ikuta Tour 2024「capriccioso」』では『レ・ミゼラブル』の「夢やぶれて」を披露していたり、生田さんのいろんなキャリアがツアーに表れていると感じています。
生田:確かに。ツアーでは持ち曲だけでセトリが組めるほどには曲数がなかったので、いろんな挑戦をしたかったですし、いろんなジャンルを経験させてもらっているということが自分の一つのアイデンティティだと思っていて、それをツアーにも詰め込めたらと思っていました。単純に来てくれた人に楽しんでもらいたいと思うと、どんどん想像が膨らんで、いろいろとやりたくなっちゃうんです。

――生田さんが日本版声優としてアーシャの声を担当した『ウィッシュ』の楽曲を披露していることもその一つの表れですよね。『ウィッシュ』で生田さんを好きになったファンの方も多いのだろうなと、ライブ会場に行くと強く感じます。
生田:ありがたいですね。ディズニーは自分にとっての夢だったので、そこで一つひとつのステージを踏みしめて歌うことは、大きな緊張やプレッシャーだったんですけど、それをやり遂げられたことで、ステージで歌うということに関して、自分自身の段階を一つ押し上げてくれたというか。それまでは歌うこと自体、一回一回に緊張していたんですけど、ディズニーの経験を経て、歌うことがより楽しく思えるようになっていったなと思います。
――ディズニーのスタッフの方から「これからは『ウィッシュ』の曲を持ち曲にできますね」という言葉をかけられたとライブのMCで話していましたよね。『ウィッシュ』の楽曲を実際に持ち曲として披露しているというのが、“願いの力”ではないですが、夢を叶えることを生田さん自身が体現しているなと感じます。
生田:「ウィッシュ~この願い~」で歌っている内容には、願いの力を持って諦めないというメッセージが込められていて。自分も人間ですし、挫けそうになったりすることもあるんですけど、アーシャの役をやらせてもらっているんだから諦めちゃいけないなって自分を奮い立たせるものに今もなっていますし、この先の人生においてもそういった存在として近くにあり続けるんだろうなと感じています。
パフォーマンス力を高める“ファンとの関係性”
――改めて『Erika Ikuta Tour 2024「capriccioso」』は、生田さんにとってどのようなツアーになりましたか?
生田:1st EP(『capriccioso』)でデビューした後の初めてのライブだったので、最初は楽しもうという方が大きかったんですけど、私が勝手にいろいろ気負ってしまっていたんです。だけど、始まってみたらファンのみなさんが温かく、どんなことが起こっても包み込んでくれたり、歌っている間も真剣な優しい眼差しで見つめてくれたりすることが、私の心をほぐしてくれたり、助けてもらったなと思っています。ライブは一人じゃ作れないな、みんなで音楽は作るものだなということを感じたツアーでした。最初から決めていたわけではなく、ツアーを重ねるごとにこの思いを一つ形にしたいなと思って、ツアーの最終日に「シンフォニー」という新曲を披露したり、そういったことは『capriccioso』のツアーが初めてでした。
――ツアーを重ねていくたびに、『capriccioso』の楽曲が育ってきている感覚はありましたか?
生田:やればやるほど、どんどんなじんできて、自分のパフォーマンスもより楽しめるようになってきてる感じがしますね。「Laundry」は実は弾くのがめっちゃ難しくて、最初は譜面を置いて鍵盤をガン見しないと弾けない状態だったんです。だけど、だんだんと自分の演奏とか歌も楽しめるようになってくるし、そうなってくるともっとみなさんの顔を見たりとか、温度を感じたいなって思うから、そういう面も含めてやればやるほど楽しめているなと思います。

――アコースティックギター演奏の披露もありましたよね。
生田:コロナ禍で、時間があるからというのでやったことのなかったバイオリンとギターをちょっとだけ触っていたんですけど、自分は目標がないと動けないタイプで……久しく4年ぐらい弾いてなかったんです。これはライブで披露するしかないなと思って、ハマいくの「ビートDEトーヒ」をチャレンジコーナーとしてやらせてもらったんですけど、ライブでギターの弾き語りができることを企画だけで終わらせないで、今後のライブでも続けていきたいと思っているんです。なので、今年に入ってマイギターを買いました! 今までお借りしていたギターだったので、実際に持つと愛着が湧きますし、もっと頑張って練習しようと思っています。
――ファンの方からピックをプレゼントされたということを、生田さんがナビゲートを務める『Volkswagen DRIVING WITH YOU』(J-WAVE)で話していましたよね。
生田:そうなんですよ! ピックとピックケースを、後援会(生田絵梨花後援会)のみなさんからプレゼントしてもらって嬉しかったですね。メッセージが入ったアルバムには、『capriccioso』のロゴだったり、コンセプトがデザインとして描かれていて、すごく考えて、見てくださっているなと感じました。
――そのピックは今後ライブで使用したり?
生田:ライブで使いたいなあと思っているんですけど、演奏法によってはピックの大きさや固さが変わったりするので、実際使えるかはまだわからないんです。ピックには、ファンの方からの「よければ練習の時などに使ってください」というコメントが添えてあって……めっちゃ優しくないですか?(笑)。もちろん本番で使ってもらえたらきっと嬉しいんだろうけど、そういうのを押しつけないいろんな気遣いを感じちゃって、さすがだなと思いました。プレゼントのことだけじゃないですけど、そういったファンの方の心遣いに、私は助けられて伸び伸びやらせてもらっているなと感じます。