UNISON SQUARE GARDEN、極まる3ピースアンサンブル 充実感に満ちた『Ninth Peel』ツアー“2周目”

ユニゾン『“Ninth Peel” next』レポ

 UNISON SQUARE GARDENの全国ツアー『TOUR 2023 “Ninth Peel” next』が終了した。今回のツアーもMCはなし。アンコールは驚くほどすぐに始まるなど、音楽以外の要素は徹底的に省かれ、ライブのフォルムは年々シャープになっている。ステージ上の斎藤宏介(Vo/Gt)、田淵智也(Ba)、鈴木貴雄(Dr)は自分たちの音楽を鳴らすのみで、観客一人ひとりに関与しない。客席にいる私たちは音楽そのものや、演奏する3人の姿から何かを受け取るのみ。バンド結成20年を前にこのツアーの盛況ぶりを見るに、純度高いこの空間を心から求める人は増えている。

 今年は9thアルバム『Ninth Peel』と19thシングル『いけないfool logic』(TVアニメ『鴨乃橋ロンの禁断推理』オープニング主題歌)をリリースし、2本の全国ツアーをまわったUNISON SQUARE GARDEN。本稿で言及する『“Ninth Peel” next』は、今年1本目のツアー『TOUR 2023 “Ninth Peel”』から約3カ月空けてスタートしたツアーで、『Ninth Peel』リリースツアーの“2周目”と位置づけられていた。

 そもそも「2周目とは?」という話になるが、推察するにツアーを2本組みたくなるほどいいアルバムができたこと、観た人に「なるほど、だから2周まわったのね」と思わせられる自信があること、そもそもライブをやりたいから活動しているようなバンドであること、様々な要素が重なって実現したものと思われる。蓋を開けてみれば、前ツアーでクライマックスに演奏されたアルバムリード曲「恋する惑星」やシングル曲「kaleido proud fiesta」「カオスが極まる」をセットリスト前半に固めるという大胆な采配ながら、尻すぼみとなることはなく、前ツアーで披露されなかった「もう君に会えない」「フレーズボトル・バイバイ」に絶好のポジションを与えつつ過去曲と連鎖させることで、見事なカタルシスを生むことに成功していた。もはや他の追随を許さない域に達している3ピースアンサンブルと豊かなディスコグラフィ、彼らが19年かけて培ったものがあってこそ成せる技だ。

 この記事では、12月11日のZepp Haneda(TOKYO)公演を振り返りたい。1曲目は、音源とは違い、斎藤の弾き語りから始まるアレンジの「スカースデイル」。直後に待っていたのは「天国と地獄」→「恋する惑星」→「BUSTER DICE MISERY」→「23:25」という怒涛の展開で、鈴木が高速4カウントを放ったり、斎藤が曲の最後の音に被せて次の曲のギターリフを弾き始めたりと、様々なアプローチで曲間を繋げながら次々と演奏していった。初っ端から、メジャーキーの明るい曲とマイナーキーの鋭い曲が交互に登場する乱高下続きの展開。フロアは大きく波打っているが、ステージ上の3人は細かなクイックターンを重ねながらも冷静で、場を完全に掌握している。「kaleido proud fiesta」の祝祭感で全てを包み込むと、斎藤が「最後までよろしく」と告げ、締めの音と同時に暗転。あまりにも鮮やかな締めに、拍手と歓声が広がった。

 ここで鈴木のドラムソロ(今までライブ後半に設けられることが多かったため、この位置はなんだか新鮮だ)。やがて斎藤と田淵も合流し始まったのは、シングル『Catch up, latency』カップリングのロカビリーナンバー「ここで会ったがけもの道」で、アルバム収録曲「アンチ・トレンディ・クラブ」が続いた。変則的なリズムの曲だが、3人の息はぴったりで、それが何よりの気持ちよさになる。3人とも見事な歌いっぷり&鳴らしっぷりで、これは明らかに、年中ツアーをまわっているバンドでなければ出せない音。次の「きみのもとへ」もナイスグルーヴだ。

 そして「新曲!」と2本のツアーの間にリリースされた「いけないfool logic」を披露。これ以上にないほど華やかかつ多展開の曲で、五線譜上を駆け回るように各楽器が動きまくっている。こういう曲を演奏している時のユニゾンからは、混沌とした世界すらも楽しんでみせる勇敢さと力強さが感じられて、明るい曲だがグッとくる。しかしまだ終わらない。曲の導入となるSEが流れてきて「カオスが極まる」が始まった。今さっき“これ以上にない”と書いたが、3人でバトルしながらさらなる境地に入っていくアンサンブルに、勝手に天井を決めるなと言われた気分になる。音の渦から飛び出してくる〈画すべき一線を越えろ 楽園は近い〉〈恍惚の泥沼だ 助けないで〉〈前例になく超気持ち良い〉といった言葉が、ユニゾンのギター&ボーカル/ベース/ドラムとして個々が特化した先で、誰にも真似できない3ピースサウンドを獲得したこのバンドの生き方と重なる。斎藤と鈴木が最後まで出しきるように鳴らすなか、両手を広げて「どうだ」とでも言いたげな田淵。のちに暗転。大きな歓声が上がった。

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