スキマスイッチ、3つの視点から紐解く20年間愛される理由 J-POPの王道と新鮮さを両立する手腕

スキマスイッチ、3つの視点から紐解く

 7月9日22時からCSチャンネル・日テレプラスにて、スキマスイッチの特集番組『The Day.~アーティストたちの特別なあの日~【スキマスイッチ】』が放送される。

 今年5月に初のトリビュートアルバム『みんなのスキマスイッチ』を発表し、デビュー20周年を経て、さらに精力的に活動を続けているスキマスイッチ。今回放送される特集番組は、そんな2人の軌跡を3時間にわたって、番組独占インタビュー映像とパフォーマンス映像(ライブ映像)で辿るプログラムになっている。放送を前に、本稿では「スキマスイッチが20年間愛され続けている理由」について触れてみたい(尚、番組放送日の7月9日は、スキマスイッチのメジャーデビュー日だ)。

次世代にも受け継がれるJ-POPの王道を極めたメロディ

スキマスイッチ
スキマスイッチ

 2003年に「view」でデビューして以降、多様な音楽ジャンルを取り入れながら、数々の名曲を生み出してきたスキマスイッチ。幅広い世代の心を掴むポピュラリティを放ちながら、コアでマニアックな遊び心も忘れない。そんな大橋卓弥と常田真太郎のスタンスは、ポップフィールドで戦うミュージシャンにとって、ひとつの理想とも言えるものだろう。藤原聡(Official髭男dism)、はっとり(マカロニえんぴつ)、Ayase(YOASOBI)など、現行のJ-POPシーンで強い存在感を放っているアーティスト達も大きな影響を受けたと明かしていて、スキマスイッチが生み出した名曲であり、彼らのエッセンスは、次世代に脈々と受け継がれている。

 名曲と呼ばれる楽曲の条件は様々あると思うが、そのなかでもかなり大きなウエイトを占めているのが「口ずさみたくなるメロディ」だろう。スキマスイッチの音楽もその例に漏れず、メロディがたまらなく心地いい。しかし、それがただ流されるように通り過ぎていってしまうものではなく、“しっかりと耳に残るフックも込みで”というのが、スキマスイッチらしいメロディだろう。たとえば、「奏(かなで)」のサビにある〈君が大人になっていく〉の〈な〉の部分や、「パラボラヴァ」のサビにある〈すぐ会いたい〉の〈会いたい〉の節回しは、一聴するだけで強いインパクトを残し、自然と口ずさみたくなってしまうキャッチーさがある。また、「全力少年」のように、メロディはすっと入ってくるけれど、歌ってみるとかなり難しいというのは、彼らの楽曲をカラオケで歌ったことがある人にはお馴染みの現象のはず。さらに、スキマスイッチの2人がルーツにあげているサザンオールスターズやMr.Childrenに代表するような、言葉を詰め込む独特な符割りも加わり、耳心地はいいのだけれども、しっかりと耳に残るポイントがあり、つい口ずさみたくなってしまう求心力が、とてつもなく高い。

 個性的な主旋律はもちろんのこと、対旋律もキャッチーだ。対旋律とはカウンターメロディともいい、主旋律を引き立たせるために存在している、いわば第2のメロディとも言えるものなのだが、要は、ボーカルだけでなく楽器も歌っていて、そのフレーズも口ずさめるということ。個人的に推したいのは「8ミリメートル」。ゆったりとしたラインで進んでいくのだが、イントロから象徴的に使われているメロトロンが醸し出す淡くて切ない空気を、後に入ってくるストリングスがさらにドラマティックに盛り上げていくところは、これぞ日本のポップスと言いたくなる珠玉のバラードナンバーだ。また、この曲に限った話ではないのだが、そういった王道的なJ-POPの手触りはありながらも、コード進行やアンサンブルにひねりが加えられていて毎回驚かされるところも、彼らの音楽にとって重要なポイントだろう。

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