スキマスイッチ、『おっさんずラブ』主題歌起用で生まれた“新たな発見”

 土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)が面白い。同作は、2016年に放送された深夜ドラマが一部キャストを変更・追加し、満を持しての連ドラ化。主演・田中圭、ヒロイン・吉田鋼太郎、ライバル・林遣都で贈る“この春いちばんピュアなラブストーリー”だ。女好きだがまったくモテない春田創一(田中圭)が、春田の前ではピュアで乙女な一面を覗かせる部長・黒澤武蔵(吉田鋼太郎)、仕事も家事もパーフェクトにこなすルームシェア中のイケメン後輩・牧凌太(林遣都)の2人から思いを打ち明けられ、とまどいながらも心揺れ動く様子が描かれていく。今夜放送第4話の予告では、牧の上司・武川政宗(眞島秀和)が“第三の男”として牧に急接近との報が。さらなる波乱の展開が予想される。

 ドラマ放送前には、告知用ポスターにつけられた登場人物ごとのキャッチコピーが秀逸だと話題を呼んだ。「好きになった人が男だった、それだけのこと。」(黒澤)という短いフレーズの中にこのドラマの本質が言い表されている。人が人を好きになり、その思いを伝え、成就するということはどんな相手であっても簡単なことではない。加えて、自分とは異なる価値観を持つ相手に思いを伝えることがいかに難しいことなのか。全体がコメディタッチで描かれることで、随所に垣間見える切ないポイントが一層強く浮かび上がっている。

スキマスイッチ『新空間アルゴリズム』(通常盤)

 そんなラブストーリーの主題歌を務めるのが、スキマスイッチの「Revival」だ。同曲は最新アルバム『新空間アルゴリズム』に収録されているミディアムナンバー。主題歌決定に際して発表されたスキマスイッチ・常田真太郎のコメントで「主題歌になることで、また違う歌詞の捉え方をする人も出てくるはずですし、曲の振り幅につながる相乗効果が楽しみです」とあるように、同曲はドラマのために書き下ろされた楽曲ではないという。しかし、ドラマ終盤、その回のクライマックスで流れてくるこの曲を聞いていると、このドラマのためにあるような曲に聞こえてくるのが不思議だ。

 あたたかみのある鍵盤、アコースティックギターの音色と大橋卓弥のやさしい歌声で奏でられる〈揺れる揺れる 心と心がまた揺らいでいる/受け入れたつもりでいたのに/いつの間にか 記憶も存在も手が届かないとこに隠すように はぐらかしてた〉というサビは、まるで自らの素直な気持ちを受け入れることに躊躇する登場人物たちの心情を映すかのようだ。さらに、その先の歌詞にある〈嬉しいことを 小さな身体全部で 伝えようとしてくれる/君がたまらなく/愛おしかった〉という部分からは、第2話で牧が春田のおでこに背伸びをしてキスをする名シーンがよみがえる。ドラマをきっかけにこの曲全体を聞くことで、まさに常田のコメントにあったような“曲の振り幅”が生まれ、新たなストーリーとともに楽曲の魅力を再発見することができる。

 スキマスイッチといえば、「全力少年」のような快活なメッセージソングから「奏」のような心に響くラブバラードまで数多くの代表曲を持ち、J-POPの中でも“王道”をいく存在であるという印象がある。そんな彼らの楽曲が“おっさんたちの純愛”を描くドラマ主題歌に起用されたことを当初意外に感じた人も少なくないだろう。しかし、『おっさんずラブ』で描かれているのは、あくまで“王道”のラブストーリーであり、その相性は抜群。ドラマを見ずとも意外と感じたとするならば、そのこと自体が“恋愛は男女間にのみ成立する”というものの見方と同じようなことなのかもしれない。

 ただ一方で、スキマスイッチの大橋はその意外性を加味したようなコメントを寄せている。「僕らの音楽のパブリックイメージって、あまりクセのないフラットなものだと思うんです。でも、実は結構クセのある楽曲も作っているので、こういう意欲的なドラマの主題歌に選んでいただいて、うれしかったです」。『おっさんずラブ』の主題歌起用は、彼らにとってはさまざまな一面があるということを伝えるきっかけにもなったようだ。

 今夜放送の第4話にはスキマスイッチが本人役としてカメオ出演を果たすこともアナウンスされている。『おっさんずラブ』とスキマスイッチ、双方の思いがこのコラボレーションを通して広く伝わることを願う。

(文=久蔵千恵)

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