TM NETWORKがますます面白くなっている 進化し続けたデビュー40周年の歴史を振り返る
2024年4月にリリースされたデビュー40周年記念アルバム『40+ ~Thanks to CITY HUNTER~』に収録された「Whatever Comes」「君の空を見ている」「DEVOTION」を聴いていても、2020年代のTMサウンドの型を確立したところが実に素晴らしい。その中で異色作と思うのは、『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』挿入歌として配信された「Angie」。もちろん映画の挿入歌という前提があってこそ生まれた曲とはいえ、こんなにもゴスペルティックなコーラスを前面に押し出した楽曲はこれまでのTMにはなかった。そしてなんといっても見事なのは、Netflix映画『シティーハンター』のエンディングテーマ曲としてリメイクされた最新曲「Get Wild Continual」(『40+ ~Thanks to CITY HUNTER~』にも収録)。これまで何度とリアレンジされてきた「Get Wild」だが、“Continual=継続している”と名付けられたこの曲は、原曲テイストを素直に踏襲しつつも強烈な4分打ちのダンスビート、タムタムフィル、ドライヴギター、リズミカルなストロークのアコースティックギターを押し出してリアレンジされている。原曲同様にやはりスネアを外したリズムアレンジだ。そして、宇都宮隆の声色がとても若々しくてエネルギッシュな印象である。
こうした再起動以後の動き、新たにレコーディングされた楽曲、書き下ろされた新曲に通じて思うことは、フィジカル的にもパワフルに感じるTM NETWORKである。重複するが、基本的にはサポートメンバーの力を最小限に、それも三人でプレイしようという心意気の大きさ。三人が60代半ばを迎えて、今できる最大限のことをステージングで見せようという意識も強くあるのだろう。ただし、ツアーでのステージパフォーマンスがフィジカル的にもこなれていくことで、さらなる次が見えてくるというのもツアーミュージシャンの醍醐味。『40th FANKS intelligence Days ~YONMARU~』で一段落するであろうTMのライブプロジェクトだが、結果的にネクストステージに繋がるものとして5月18、19日のKアリーナ横浜公演が無事開催されることを心から願う。
5月15日には『TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-』のリリースも発表されている。以下50音順のアーティスト名でCAPSULE 「Self Control (方舟に曳かれて)」、GRe4N BOYZ 「SEVEN DAYS WAR」、くるり 「STILL LOVE HER (失われた風景)」、坂本美雨 「TIMEMACHINE」、澤野弘之 feat. SennaRin 「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」、西川貴教 「LOVE TRAIN」、乃木坂46 「BE TOGETHER」、B'z 「Get Wild」、ヒャダイン with DJ KOO 「Maria Club (百億の夜とクレオパトラの孤独)」(Remix)、松任谷由実 with SKYE 「Human System」、満島ひかり 「ELECTRIC PROPHET (電気じかけの予言者)」という、ちょっと驚きな面子も含んだトリビュートアルバムと、その原曲を収めたディスクとの2枚組仕様としてリリースされる。
原曲主義者の僕としては近年のトリビュートアルバムの類における安易なカバーには食傷気味なのだが、『TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-』に関しては想像以上の完成度で大変驚かされた。わりと収録曲順が進むにつれて原曲アレンジから遠ざかっていく流れであり、全然違うアレンジになるのかと予想していたCAPSULEは比較的原曲を踏襲。Bメロの秀逸なボイシングアレンジなどはTMが逆に採り入れてみても面白いのでは!? と思わせるアイデア提示型だ。そしてとにかく話題のB'zは原曲リスペクトたっぷりの完成度で、Tak Matsumotoが終始雄弁なギタープレイで、アーミングプレイも聴かせてくれているのに胸が熱くなった。「Route 246」でTK復活劇の一役を担った乃木坂46は 「BE TOGETHER」をエネルギッシュに歌唱していて素晴らしい。原曲愛を感じる西川ノブユキのギターソロも見事である。TK信望者の齋藤飛鳥が卒業してしまっているタイミングでのカバーになったことだけが残念だが……。
松任谷由実(ユーミン)はなんと鈴木茂、小原礼、林立夫、松任谷正隆によるSKYEとのコラボレーション(ちなみにこのメンツでベースが小原礼ではなくて細野晴臣だったらキャラメル・ママ〜ティン・パン・アレイとなる)。「Human System」でホーンセクションをフィーチャー、リズム&ブルーステイストの演奏を、ちょっと抑えつつもリズミカルに歌い上げているユーミンがちょっと意外な仕上がり。くるりの「STILL LOVE HER (失われた風景)」はエレクトロニカっぽいテイストで、代表曲の「ばらの花」に通じるところがあるかもしれない。岸田繁のボーカルもどこか宇都宮隆テイストをほんのり香らせており、締めでは「This Night」を織り交ぜるところも痛快でこれほどまでにTMリスペクトな名演を聴かせてくれるとは! TMの初期の重要曲である「TIMEMACHINE」「ELECTRIC PROPHET (電気じかけの予言者)」を、坂本美雨、満島ひかりが柔らかく歌い上げているところも好印象である。
それにしてもまさかこういうかたちでB'zが「Get Wild」をカバーすることになるとは思わなかった。2017年には『GET WILD SONG MAFIA』というかたちでコンピレーション盤がリリースされているわけだが、「Get Wild Continual」共々、順当に追加収録されるべきリアレンジ、カバー楽曲は増えている。
デビュー当時のTM NETWORKがライブについて消極的だった理由に、やりたいことにテクノロジーが付いてきていなかったということがあった。最新ツアーでは「ようやく今になってやりたいイメージが具現化できるようになってきた」と語られる一幕があっただけに、今後ますますTM NETWORKのライブパフォーマンスは面白くなっていくのではないか。TMのツアー終了後は、三人それぞれソロライブに着手するのだろうし、考えてみれば三人とも現在の活動のメインとしてライブがあるところは共通している。ちょっと気が早すぎることを書くが、『TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-』のカバー劇が起爆剤となり、TM NETWORKのさらなる新曲制作やリアレンジに結びつくことを期待している次第だ。
(TOP写真=Mirai Yamashita)
■リリース情報
『40+ ~Thanks to CITY HUNTER~』
2024年4月21日(日)発売
¥5,500(税込)
詳細:https://www.110107.com/s/oto/news/detail/TP03263
『TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-』
2024年5月15日(水)発売
¥4,950(税込)
詳細:https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=3539&cd=ESCL000005948
『Get Wild Continual』
2024年5月22日(水)発売
¥2,200(税込)
詳細:https://www.110107.com/s/oto/discography/MHKL-91
■関連リンク
公式サイト:https://fanksintelligence.com/
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