渡辺美里、鈴木雅之、TM NETWORK、緑黄色社会ら輩出 著名人プレイリスト企画から紐解くEPICレコード45年の軌跡

 1978年8月、親会社にあたるCBS・ソニーの姉妹レーベルとして……ここではライバル的存在のロックレーベルとして語る方が伝わりやすいだろうが……丸山茂雄率いるチームが立ち上げたレコードレーベルがEPIC・ソニーである。現在は正確にいうとEPICレコードジャパンというレーベル名に変名しているが、アラフィフ世代には“EPIC・ソニー”という呼び方がしっくりとくる。設立当初はばんばひろふみらCBS・ソニーからの移籍組なり、宇崎竜童、大滝裕子、そして織田哲郎、北島健二を擁したWHYらを輩出したが、ばんばひろふみ「SACHIKO」、シャネルズ「ランナウェイ」のヒットが契機となり、土屋昌巳率いる一風堂、佐野元春、THE MODSらロック勢を売り込む戦略が始まる。

 レーベルイメージ的な潮目が大きく変わったのは1985年にデビューした渡辺美里のヒット。その楽曲提供陣である大江千里、TM NETWORK、まだデビュー前だったが岡村靖幸らにも注目が集まり、当時のEPIC・ソニー販促チームによる紙媒体やラジオ、TV番組へのプロモーション、さらにはビデオコンサートなどのイベントが功を奏して、大沢(大澤)誉志幸、THE STREET SLIDERS、BARBEE BOYS、LOOKら他の所属アーティストも気になるような連携ができた。当時中学生くらいの僕らの財力ではすぐレコード購買に手が届いたわけではないが、レコード屋に行けばグッズが無料で貰えたり、イベントに行けばTV番組では一部しか観られなかったプロモーションビデオがチェックできたのである。

 EPIC・ソニーによるビデオコンサート『BEE』から松岡英明がデビューしたように、リスナーがヒット曲を生み出すなり、新たなスターを育んでいくような体験が味わえるのも魅力で、思えば音楽ファンがアーティストを青田買いしているような気分だったのだ。さらにはFMラジオ全盛の時代であり、普段はエアチェックしたカセットテープを伸びるか切れるかしてしまうまで聴き、お金が貯まったタイミングで、お目当てのレコードやアイテムを買ったわけだ。

 また、それまで「明星」(現在はMyojo)や「平凡」を毎月買っていたのが、ライバルCBS・ソニーとのリリース合戦が相乗効果をもたらし、CBS・ソニー出版(後のソニー・マガジンズ)の「GB」、「PATi·PATi」、「WHAT’S IN?」に買い替えるようになるなど、1980年代後半のロック、ポップミュージックのカルチャーにEPIC・ソニーが与えた影響は極めて大きい。特にプロモーション戦略は当時の時代性などももちろんあるものの、メディアミックス的な大胆不敵なアイデアが多く、僕などは設立45周年が経った今も検証をし続けているのである。

 80年代当時からのアーティストで言えば、現在EPICに所属しているのは鈴木雅之と渡辺美里のみになってしまったが、意外と当時活躍していたアーティストも現役で精力的なライブ、レコーディング活動を行なっていたり、その横のつながりも健在だったりする。共に何より重大なのはEPICは現役レーベルであり、90年代ならCHARA、DREAMS COME TRUE、JUDY AND MARYらを輩出したし、近年で言ったら緑黄色社会や花冷え。などはいかにもEPICの血筋を感じるバンドだと、アラフィフ世代代表として思える。

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