K-POPの“聴きやすさ”重視のトレンドがグループの真価をより総合的なものに ILLIT『SUPER REAL ME』評

 LE SSERAFIM、NewJeansに続くHYBE傘下の5人組ガールグループ、ILLIT。サバイバル番組『R U Next?』から誕生した彼女たちが、3月25日に1stミニアルバム『SUPER REAL ME』をリリースしてデビューを果たした。デビュー前から注がれていた期待に応えるように国内外で好成績を残し、韓国ではガールグループのデビューアルバムの初動新記録を達成しているほか、米ビルボードが集計するグローバルチャート(グローバル200)のトップ10入りも果たした。日本でもオリコン週間アルバムランキング(2024年04月08日付)で3位にランクインするなど注目を集めている。

 そんなデビュー作『SUPER REAL ME』だが、リード曲の「Magnetic」を含めた4曲はいずれも4つ打ちで、よくいえば統一感のある、言い方を選ばなければ平坦な仕上がり。K-POPのミニアルバムでは比較的よく聴かれる、スローなバラードを交えて歌唱力の聴かせどころをつくったり、あるいは明確な物語を中心に据えるようなコンセプト志向をとったりすることはせず、ウェルメイドなポップソングを手堅く揃えたような印象だ。

 「Magnetic」はアタックのやわらかくドリーミーなシンセのアルペジオやエレクトリックピアノが高域でゆらめく一方で、ビートもベースラインもかなりソリッドで太い。リリース情報ではpluggnbとハウスのハイブリッドと形容されているが、端的に言えばウワモノがpluggnb的で、基本となるビートがハウス、というところだろう。テンポがハーフになる部分は、リードシンセのさりげなくもメロディアスな展開も含めpluggnbへの目配せになっている。

 とはいえ、そのクオリティは高いとしても、個人的にはいささか単調で、ここぞという聴きどころに欠ける印象は拭えない。むしろ、かなり意図的に耳を捉えるひっかかりをなくしていこうとしているようにも思える。アンチクライマックス的なゆるいメロディや、2小節ごとに完結して継続的なグルーヴを削ぐことで高揚感を高めすぎないビートとベースライン。サビの〈You, you, you, you……〉のリフレインの刻みにしても、ちょっと機械的でドライだ。そのシンプルさゆえに耳に残ると言えなくもないが、クセになるほどユニークでもない。フレーズ自体のひねりもなければ、ひねりのなさを魅力に昇華する大胆さもない。すべてがほどほど。このあたりに、その耳あたりの良さとクオリティに比して、こころから「Magnetic」最高! と言い切れないもやもやがある。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる