KANDYTOWNの終演に続いてBAD HOPは解散、国内HIPHOPクルーに新時代到来か ニューカマー3組への期待

 BAD HOPが、2月9日に解散前ラストアルバム『BAD HOP』をリリースした。そして同月19日には東京ドームでラストライブを開催する。同公演のチケットは1月31日にソールドアウト。国内のHIPHOPアーティストとしては、まさに前人未到の快挙である。彼らだけでなく、2023年にはKANDYTOWNの“終演”など、国内HIPHOPシーンの先頭を走っていたクルーが第一線から退く形となった。

 多様化の道を進む国内HIPHOPシーンを走り抜いたクルーたちが姿を消すとなると、次はニューカマーの台頭を期待せざるを得ない。本稿では、国内HIPHOPシーンを牽引したクルーの功績を辿るとともに、今後活躍を見せるであろう新興グループを紹介したい。

 まず、直近のシーンでの大きな話題といえば、やはり先述したBAD HOPの解散だろう。BAD HOPは、神奈川県川崎市を拠点に活動してきたクルー。双子の兄弟であるT-Pablow、YZERRを中心に2014年に結成され、2018年には日本武道館にてワンマンライブ『BreatH of South』を開催。その後もHIPHOPフェスはもちろん、昨年には『FUJI ROCK FESTIVAL ’23』への出演も果たしている。平均年齢20代でスターダムを駆け上がった彼らは、2023年5月に開催されたHIPHOPフェス『POP YOURS 2023』のステージで解散を発表した。のちのインタビュー動画(※1)では、解散について「早い段階で話していた」「在るべき姿に戻ろうと思った」と語っている。

BAD HOP / Kawasaki Drift (Official Video)

 彼らが打ち出す楽曲のスタイルは、地元 川崎での壮絶なストーリーをそのままリリックに落とし、USメインストリームのトレンドを取り入れたビートに乗せて歌い上げるものだ。メンバーそれぞれが過去を振り切り駆け上った今を歌う「Kawasaki Drift」や、〈毎日がweekend/今日も遊ぶ〉から始まる印象的なフックが特徴の「Ocean View」がその代表だろう。

 海外のトレンドにアンテナを張り「やりたいことをやる」というクルーのスタイルを分かりやすく提示したBAD HOP。それまで“氷河期”とも揶揄されてきた国内HIPHOPシーンを溶かした、まさに火付け役と言えるような存在だろう。

BAD HOP / Ocean View feat. YZERR, Yellow Pato, Bark & T-Pablow (Official Video)

 2023年3月にクルー最大規模となる日本武道館での公演を開催し、“終演”を迎えたKANDYTOWN。KANDYTOWNは、東京・世田谷をルーツとし、2012年に結成されたクルー。BANKROLLとYaBastaを母体としており、ラッパー/DJだけでなくビートメイカー、アートディレクターなどのメンバーも所属している。2016年リリース「Get Light」では『Reebok』、2020年リリースの「PROGRESS」では『NIKE』とシューズブランドとコラボしており、ファッションシーンからも注目を集めるクルーとなった。

Reebok CLASSIC X KANDYTOWN [GET LIGHT]

 彼らの楽曲はソウル/R&Bからのサンプリングを基礎としたトラックの上に、確かな熱を内包したリアルなリリックをしっとり乗せるのが特徴だ。90年代に台頭したHIPHOPを落とし込んだメジャーデビュー作『KANDY TOWN』はもちろん、KANDYTOWNの美学を貫いた2022年リリースのラストアルバム『LAST ALBUM』は必聴の名盤である。

 なお、クルーの終演後は、それぞれが活動を継続しており、2023年9月に開催された『THE HOPE 2023』ではIOやKEIJUがソロ名義で出演している。IOのステージではKANDYTOWNメンバーが集結し、軽快なダンスナンバー「R.T.N」を披露するなど、終演後も“KANDYTOWN LIFE”は続いているということをシーンに見せつけた。

KANDYTOWN – R.T.N from LAST LIVE

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