YOASOBIとNewJeans、世界に羽ばたくアジア発グループの現在地 独自の存在感を築くまで
昨年大晦日の『第74回NHK紅白歌合戦』におけるYOASOBIのステージの衝撃がいまだに抜けない。現在の音楽シーンを賑わせるグループやアーティストが一堂に会したあの包括的な演出は、ある意味で今の時代を象徴するステージだった。SEVENTEENやStray Kids、NewJeansなど名だたる顔ぶれが登場し、日本からも乃木坂46やBE:FIRST、JO1などが参加。MISAMOの3人のダブルピースや、司会の橋本環奈とanoが数年前にSNSで話題になったネットミームを再現する粋な演出も印象的だった。日韓の現役アイドルから元アイドルまで総出で手を取り合い、YOASOBIのために協力しようという雰囲気があの舞台から感じられた。この歴史的な演出が可能になったのも、ひとえに「アイドル」という楽曲の力だろう。
なにもYOASOBIが日本のポップミュージックを代表する存在だとか、YOASOBIはアジアの音楽シーンをリードするユニットだとか、そんなことを言いたいのではない。世の中には素晴らしい音楽が無数に存在しているし、今回のどの出演者も素晴らしいパフォーマンスを披露した。ましてや音楽は勝ち負けの世界では決してない。しかし、たしかにあの瞬間、あの4分間だけは、世界で最も輝いていたのは「アイドル」であった。
年が明けて1月7日、NHKは『NHKスペシャル 世界に響く歌~日韓POPS新時代~』を放送した。世界中で支持されているK-POPの現在地を、韓国経済の歴史などの視点から紐解き、これまでとは異なるアプローチで躍進を遂げたNewJeansの人気の秘密を、プロデューサーのミン・ヒジンや振付師へのインタビューから分析。並行してYOASOBIの海外ライブに密着し、日韓のポップミュージックが世界を盛り上げる新時代の到来といった切り口で、今後の両者の発展を期待させるような形でまとめていた。途中、日本の音楽産業が遅れを取った原因を解き明かしつつ、K-POPとJ-POPのあいだに存在する歴然たる“差”を痛感させるようなトーンも交えていたのが印象深い。
特にNewJeansは今、世界のエンタメシーンの中心にいると言っていい。デビュー以降、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長してきた彼女たちは、様々なアワードで新人賞を受賞。米ビルボードチャートでも連続チャートイン記録を更新し続けている。そんなNewJeansには、番組内のミン・ヒジンの言葉にもあった通り、従来のK-POPにはないものが多くの点から感じられる。
その一つがダンスだ。K-POPが世界を席巻するようになって久しいが、そうしたグループの多くが一糸乱れぬパフォーマンスで大観衆を沸かせている。対してNewJeansは、そうした常識にとらわれず、曲中で個々がバラバラの動きを見せることも少なくない。どことなく脱力感があり、ゆるやかな自由さがある。もちろん揃えるところは揃えるが、緊張の解れたゆるい部分と、ビシッと決める箇所の緩急が美しく、全体的に彼女たちの生き生きとした自然体な雰囲気が伝わるものとなっている。
音楽性もユニークだ。ジャージークラブやアトランタベースといったクラブミュージック由来のビートを下地に、余白の多い洗練されたサウンド感で強いグルーヴを生んでいる。今までのK-POPにはなかったこの斬新な音楽スタイルは、耳の肥えた音楽好きからの評価もすこぶる高い。ダンス面でも音楽面でも、他に類を見ない唯一無二の存在感を放っている。