EARTHSHAKER、アルバム『40』で回帰したバンドの原点 デビュー40周年の今とこれからを語る

EARTHSHAKER、40周年迎えた現在地

5人のうち誰かひとりが欠けたらこのサウンドは作れない(MARCY)

EARTHSHAKER 甲斐“KAI”貴之 (撮影=西村満)
甲斐“KAI”貴之

――長きにわたって活動を続けるバンドの場合、メンバーチェンジが何度かあっても不思議じゃないと思うんです。それこそ、不幸な事情でオリジナルメンバーが揃わないケースも多いわけで。でも、EARTHSHAKERはデビュー時の4人が今も一緒に活動していることはもちろんですが、そこにTOSHIさんを加えた5人が、2023年にアルバムを制作してツアーを行っている。その事実が今作の楽曲やサウンドが持つ説得力の強さにつながっているのかなと、お話を聞いていて感じました。

MARCY:5人のうち誰かひとりが欠けたらこのサウンドは作れないと思うので、“同じメンバー”というのはやっぱり説得力があるんだろうね。コロナ禍に「ずっとお酒を飲んでいました」みたいな人が今も元気でいられるだけでも、ラッキーと言えばラッキーですから(笑)。

TOSHI:奇跡ですよ。

KUDO:KAIに感謝やな(笑)。

SHARA:KAIには感謝せえへんけど(笑)。

KAI:自分でも生きていられるのが不思議ですよ。僕も自分の肝臓に感謝しています。

SHARA:(笑)。初期のテイストに自然と近づけたかったから、今回はKAIにもたくさんコーラスを入れてもらったし。

KAI:今回はコーラスが多かったから、大変でしたよ。しかも、結構高いキーで歌うことが多くて。軽く聴くときれいに聴こえるけど、よく聴いてもらうとデスボイスなんです(笑)。

SHARA:あれは不思議だよね(笑)。

KAI:ギリギリのところで歌っている声が聴けるので、お楽しみください。

――KUDOさんの激しいドラムからは、年齢を感じさせないエネルギーが伝わってきます。

KUDO:自分自身、今もこうして激しいプレイをしていることは信じられないですよ。特に今回は、レコーディングの時点で原点回帰しようと思っていたところが自分のなかにあって。それは曲に導かれたところも大きかったんだけど、「この曲だったら僕が自信を持って叩けるフレーズを惜しみなく披露できる」とか「複雑なことをするよりも、初期の頃のようにできるだけシンプルに叩こう」と決めたことによって、結果としてこの激しさにつながったのかなと、アルバムが完成した時に思いましたね。この40年、いろいろなことをやってきましたけど、結局はそれしかできへんという感じですよ。

――加えて、本作ではTOSHIさんのキーボードが大々的にフィーチャーされている点も、聴きどころのひとつだと思うんです。ギターとキーボードが交互にソロでバトルする構成は、とてもスリリングですよね。

SHARA:最高でしょ(笑)? やっぱりTOSHIはソリストなので、ずっとこういうことをやりたかったんです。

TOSHI:SHARAが最初に曲をくれた時から、「ここはキーボードソロ」という場所がもう決まっていて、「ここでギターと掛け合いをする」というリクエストも来ていたので、キーボードプレイヤーのプライドとしてはいい線いかないことには申し訳ないじゃないですか。だから、フレーズもしっかり練り込みました。先ほどの話とも重なりますけど、“昔のシェイカー”のよさと“今のシェイカー”のよさが合体していると言ってもらえるのが、今回はいちばんうれしいんですよ。自分はそこまで意識せずに、今できることを精一杯やっただけなんですけど、そういう評価を受けたことは自分としてはありがたいです。

EARTHSHAKER 工藤“KUDO→”義弘 (撮影=西村満)
工藤“KUDO→”義弘

――特にハードロックやヘヴィメタルというジャンルは、アスリートのように肉体的にもいろいろ求められることが多いと思います。40年にもわたり激しく歌い続ける、演奏し続けるという現実と、皆さんは今どう向き合っていますか?

KUDO:僕はシェイカーの活動をしていない時は、泳いだり自転車に乗ったり、日頃からアグレッシブに動くことが好きで。じっとしているのが嫌なんですよね。あと、一身上の都合でほぼほぼお酒を飲まない生活なのもあるんじゃないですかね。食べものに関しても、一身上の都合でいろいろ制限してしますし。

MARCY:一身上の都合って、検査の数値のせいでしょ(笑)。

KUDO:(笑)。でも、今のほうが体も軽いし、それによっていろいろできているんじゃないですかね。

TOSHI:僕は食べものに関しては、健康のためにはあまり考えていないんですけど、体型を維持するために少し我慢している部分はあるかな。それに、自分はキーボードを弾いているのがとても楽しくて。ライブでも「楽しそうに弾きますね」って言われることが多いんだけど、シェイカーでやっていると本当に楽しいの。それが日頃の老化防止であったり、健康にもつながっているのかもしれませんね。

SHARA:僕は長い歴史を通して「好き」と言ってくれるお客さんをがっかりさせたくなくて。「アルバムを買ってよかった」「次のアルバムを聴きたい」「ライブに来て楽しかった」「また次も観たい」と思ってほしいから、常にベストな演奏をできるように健康にも気をつける。それが僕の一番大事な仕事なんです。だってさ、エディ・ヴァン・ヘイレンやマイケル・シェンカーが太ったり、不健康そうに見えた時は悲しかったじゃないですか。そういう姿を見せて、お客さんに「ああ、自分の青春が終わった」と思ってほしくないからね。

MARCY:この年齢になってくると、運動機能含めいろいろ衰えてくるのは間違いないから、そこでできる限りのことを続けていくというのを繰り返しているだけで。だって、ランニングやトレーニングも10年前と同じメニューを今したら、逆に体調が悪くなるし、自分の今の状態と相談して、その時にできる限りのことを続けていくだけですね。

KAI:僕もね、年齢と共に足腰が弱くなってきているから、日々筋トレをしようと思うんだけど、お酒を飲んでしまって筋トレができなくなってしまうんですよ。

全員:(笑)。

KAI:そんな僕が唯一、ベースを弾くために筋力をつけようと思ってウエイトトレーニングだけは毎日――じゃないけど、5日に1回ぐらいは続けています。偉いでしょ(笑)?

――(笑)。現在は12月まで続く全国ツアーの真っ只中ですが、新作の楽曲はどれくらい披露しているんですか?

SHARA:(全10曲中)6曲くらいやってるよね。

MARCY:そうだね。1公演で20曲前後だから、比較的多いほうじゃないかな。ただ、これだけ長いことバンドを続けていると、選曲が難しいんだよね。

EARTHSHAKER 永川“TOSHI”敏郎 (撮影=西村満)
永川“TOSHI”敏郎

――キャリアが長くなればなるほどライブでは過去の楽曲を求められることが多く、せっかくニューアルバムを作っても数曲しか披露しないというバンドも少なくないですし。

MARCY:だから6曲と考えると多いとは思うんですけど、ライブとしてつながりが感じられるセットリストを僕らなりに考えているから、そこに対しては過去の楽曲と並べても違和感なく作れているんじゃないかな。

SHARA:新曲を書いて演奏し続けられるというのは、僕らが生きている証。「今をちゃんと生きています」という証だから、よりいい新曲を書いてみんなに喜んでもらいたいですし、できる限り新曲を演奏したいけどお客さんが聴きたい僕らの代表曲というのもあるので、今回のセットリストは順番的にも選曲的にもいい感じになっているんじゃないかな。初日の千葉の時点でものすごい盛り上がりで、本当に素晴らしかったから。

MARCY:極端なことを言えば、1stアルバムの曲と新曲とのあいだには40年もの時間があるのに、並べた時に自然な流れを作ってくれる。「40年も経っているなんて嘘でしょ?」と驚くほどにね。だから、40年前から僕らのことを応援してくれている人たちは、新曲に対して当時の自分たちの青春と重なるものを感じてくれているんじゃないかと、ライブをやってリアルに感じられました。

――きっと、この40年間に生まれてきたいろんな歴史や思い出の断片を、この新作の楽曲が全部つないでくれているのかもしれませんね。

MARCY:もちろんそのつもりで作ってはいたんだけど、本当にすべてにつながっているんだって、ライブを通して形として感じられたことはいちばんの収穫でしたね。特に、今作の歌詞に関しては、聴いた人がその曲にそれぞれの場面を重ねてもらって、自分の人生をもう一回前へ進めようと感じてもらえたらうれしいなと思って書いたものだから。

――僕自身は新作を聴いてEARTHSHAKERとの思い出を振り返れたと同時に、「あの頃こうだったな」と自分自身の人生を振り返るきっかけにもなりましたし、バンドとリスナーのつながりや絆もあらためて実感できました。

MARCY:リスナー一人ひとりのなかに、それぞれ異なるEARTHSHAKERがいると思うんだよね。僕たちにとってEARTHSHAKERはこれひとつしかないけど、聴いている人たちはそれぞれのEARTHSHAKERを大切にしている。その想いが新曲を通して重なればいいなと思うよね。

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