EARTHSHAKER、アルバム『40』で回帰したバンドの原点 デビュー40周年の今とこれからを語る

EARTHSHAKER、40周年迎えた現在地

 EARTHSHAKERから、新たなアルバム『40』が届いた。2018年にリリースした『THE STORY GOES ON』以来となるフルアルバムは、西田“MARCY”昌史(Vo)、石原“SHARA”愼一郎(Gt)、甲斐“KAI”貴之(Ba)、工藤“KUDO→”義弘(Dr)、そして前作アルバムより再びバンドに参加した永川“TOSHI”敏郎(Key)という5人体制で制作を行い、デビューから40年の時を経て再びバンドの原点に回帰した、珠玉の一枚だ。

 1999年の再結成から20年近くの時を経てTOSHIが再加入したきっかけ、コロナ禍でのそれぞれの思い、メジャーデビューから40周年を迎えた今の心境、アルバム制作からツアーの話まで、5人に話を聞いた。(編集部)

TOSHI再加入のきっかけ

――前作『THE STORY GOES ON』の制作からTOSHIさんがバンドに復帰して。1999年の再結成の時点ではデビュー時の4人でしたが、なぜそこから20年近く経ったタイミングにTOSHIさんが再加入することになったんでしょう?

石原“SHARA”愼一郎(以下、SHARA):TOSHIを再結成した時に誘わなかったのには理由があって。EARTHSHAKERが解散したあと、僕はSLYというバンドをやっていて、その頃にTOSHIのバンド(GERARD)のライブを観に行ったんですよ。そこで彼が思いっきりソロを弾くソリストだということがわかって。僕らがEARTHSHAKERとして望んでいたTOSHIとはまた違う、かっこいいTOSHIがいて、「こういう感じであれば、今の僕らはまだTOSHとは一緒にできない」「TOSHIのことをずっともったいない使い方をしていたな」と思ってしまったんです。そのあと再結成してから、僕もシンセにより興味を持つようになって、シンセを使って曲を書いたり効果音を入れたりといろいろな取り入れ方をしているうちに、「今なら一緒にできるんじゃないか」と思って。それと同じ頃に、ファンの方からTOSHIが体調を崩したという話を耳にして、気になって彼に連絡したんです。それと同じ頃に、MARCYとも「何年後かにTOSHIとまたアルバムを一緒に作って、ライブをしたいね」という話をしていたけど、そんなことを言ってる場合ちゃうなと。年齢的に、僕らもいつ何が起こるかわからんから。

西田“MARCY”昌史(以下、MARCY):それで「はよやろう!」と。

SHARA:最初は、前作も4人で作って、次からTOSHIを入れてって話だったんだけど、その前にライブを一緒にやったことでアルバムも5人で作ることになりました。

永川“TOSHI”敏郎(以下、TOSHI):これは面白い話やねんけど――って、面白くなかったらごめんなさい(笑)。

工藤“KUDO→”義弘(以下、KUDO):どっちや(笑)!

TOSHI:(笑)。ちょうど、SHARAからその話をもらう前に、知り合いと一緒にコンビニのイートインで簡単な食事をしていたら、店内でEARTHSHAKERの曲がかかってたんやわ。で、「EARTHSHAKER、今も活躍してるよね」「みんな、どうしてるんだろうね?」って話をしていたら、その知り合いから「もしEARTHSHAKERにまた入ることになったらどうする?」と冗談っぽく言われて、「入る入る!」みたいな話をちょうどしてたんよ。そのあと、たまたまSHARAのブログを見たら、誰かが自分の話をしてくれたみたいで、「また5人でできるようなことがあったらいいね」というようなことを彼が書いてくれていて。「そんなこと思ってくれてるの?」「自分もちょうどコンビニのイートインでEARTHSHAKERに入りたいって言ってたわ!」と思ってたら、SHARAと連絡が取れたので「もう病気も治って元気にしてるよ」と伝えて。で、「久々に一緒にやらへんか?」と言ってもらって、「やりたいわ!」と答えたんです。そこでワンツアーした最後の日にSHARAが「35周年で一緒にアルバムを作ろう」と言ってくれて、「作りたい! ありがとう!」って、どんどん話が進んだわけなんです。

甲斐“KAI”貴之(以下、KAI):運命やな。

EARTHSHAKER 西田“MARCY”昌史 (撮影=西村満)
西田“MARCY”昌史

――TOSHIさん復帰以降、特にここ数年はコロナの影響も大きくて思うようにライブができなかったり、できてもお客さんが声を出せないという厳しい状況でした。皆さんはこの現実とどのように向き合ってきましたか?

MARCY:そりゃあ普通じゃない状況が続いていたから、やりにくかったのはやりにくかったのかもしれないけど、そのなかでやれること……ライブも静かにやればできるわけだから、それをとりあえずやっていくうちに落ち着いたのかな。

SHARA:たしかに、最初の半年ぐらいはコロナでライブが全部なくなったけど、その時はその時で自分自身の練習ができていたし。普通は週末のライブのために曲を覚えたり、そういうことの繰り返しじゃないですか。だけど、ライブがごっそりなくなれば、自分がその時にやりたいこと、あるいは自分の弱点をなくしていくための練習ができるので、すごく有意義に過ごしましたよ。

KUDO: 2020年は緊急事態宣言もあって、ほとんど動けなかったじゃないですか。SHARAともちょっと似てるんだけど、あの頃はもっと効率的に叩かれへんのかなと思って、半年かけてグリップを変えました。普通だったら2、3年かかるところを、暇になったことで短期間でやることができたのはプラスだったかな。

KAI:僕はライブもなくなってしまって何かやろうとしても制限があってできないし、どうしようもないから、家でボーッとしながら酒を飲んでいました。

KUDO:期待通りの答えや(笑)。

――(笑)。で、デビュー35周年のタイミングだった前作から5年経ち、気づけば40周年ですものね。

KAI:35周年もついこのあいだっていう感覚だしね。

SHARA:それがまた恐ろしいよね。

「最後のアルバムになっても恥ずかしくない」くらいの気合いを入れて作った(SHARA)

EARTHSHAKER 石原“SHARA”愼一郎 (撮影=西村満)
石原“SHARA”愼一郎

――久しぶりにアルバム制作に着手する際、どんな作品にしたいか、どういうものを届けたいか、何かイメージしていたことはありましたか?

SHARA:僕は5年前のアルバムが完成したあとから、次のアルバム用にネタをiPhoneに録音し続けていたんだけど、コロナ期間を挟んだこともあってか、それを「さて、聴いてみるか」という気にはなれなくて。だから新たに曲を作り始めたんだけど、その時はこういう時代を経た今の自分から何が出てくるかというワクワク感もあって、「今自分が思うシェイカーを作りたい」と思ったんだよね。加えて、僕が18歳の時に初めて買ったギブソンのフライングVとかデビューした頃によく弾いていたレスポールとかを使って、今回は曲を書きました。「この曲はあのギターに呼ばれた」「あのギターがあったからこの曲が生まれた」という話をよく聞くじゃないですか。僕はそれまで、どのギターでも曲はできると思っていたんだけど、今回はそういうことを体験してみたいと思って、昔のギターを引っ張り出してみました。

――違いは感じましたか?

SHARA:わかんない(笑)。そこは聴いた人に判断してほしいところでもあるんだけどね。ただ、また次のアルバムが5年後となると、年齢的にも誰か欠けているかもしれないという怖さもあるわけで。だから、「これがEARTHSHAKERとして最後のアルバムになっても恥ずかしくない」くらいの気合いを入れて作ったという点においては、いつもと違ったものになったのかもしれません。

MARCY:歌詞に関しては、「40年間も応援してくれたファンの方々が喜んでくれるものは何なんだろう?」というところから、「1983年にデビューしてからずっとアルバムを作り続けてきたけど、みんなこういうのが好きなんだよね?」と考えていたら、そういうものを書きたくなってしまって。でも、ただ過去を振り返るだけじゃなくて、それがまた未来につながっていくような、今みんなが喜んでくれるものを作りたいと思いました。

――これは僕が本作を最初に聴いて感じたことですが、前作まではそれまでの経験の積み重ねによって進化を続け、毎回“最新型のEARTHSHAKER”を提示していたのに対し、新作は初めてEARTHSHAKERに出会った1980年代前半の記憶が鮮明によみがえってくるような、不思議な感覚に陥ったんです。だけど、そこで鳴っている音は最新のサウンドで、ただノスタルジーに浸るだけでは終わらないかっこよさが伝わってきました。

SHARA:その言葉がいちばんうれしいですね。

MARCY:40年という歴史がそれを可能にしたんじゃないですかね。昔の感覚を昔のままやれない僕らもいるし、EARTHSHAKER自体がこの40年間常に進化し続けてきたわけだから、そのなかで昔のあの感覚みたいなものを表現できるっていうのは、今だからこそできたんじゃないかな。

EARTHSHAKER - HEY! Mr. JOKER (Music video)

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