NCT、ファンを巻き込みながら新章へ “黄金期”=『Golden Age』で改めて示すグループが持つ可能性

 また、NCTの特徴であるハイコンセプトで緻密につくり込まれたサウンドにも、今作で改めて注目したいところ。

NCT U 'Call D' (Official Audio)
NCT U 'Kangaroo' Archiving Video

 TAEYONGとTENが参加した、電話のような効果音とシンセサイザーによるサウンドがリスナーの耳を奪う「Call D」、JOHNNY(ジャニー)やTAEYONG、JAEHYUNら7名が参加したジャジーなピアノとエネルギッシュなラップ、甘いボーカルが印象的な「PADO」、TAEIL(テイル)やKUN(クン)、RENJUN(ロンジュン)ら6名が参加した、リズミカルでジャジーなミディアムポップナンバー「Kangaroo」など、さまざまなコンセプトとカラーの楽曲は、無駄のないシンプルな構成と細部まで計算されつくし、洗練されたサウンドで、アルバムの最後まで一気に聴き通してもリスナーを一切飽きさせない力を持つ。

 そして、今作はこれまで以上にハイコンテクストな作品となっているからこそ、冒頭でも紹介したような議論が沸き起こるのだろう。特にダブルタイトル曲のひとつ「Golden Age」は、ベートーベンのピアノソナタ第8番「悲愴」の第2楽章を引用し、再解釈したもの。MVの中では、ナンバリングされた鍵や割れたガラスといった意味深長なモチーフが多数登場する上に、“終わり”を思わせるかのような演出も多々出てくることから、同楽曲は現在のNCTが新たな形へと進化を遂げる未来を示しているのではないかという意見も挙がっている。

 ちなみに、この楽曲でサンプリングされた「悲愴」は、ベートーベンが作曲・発表した当時、それまでのクラシックにはないあまりにも斬新すぎる構成に賛否両論が沸き起こったそうだ。そして、この曲を書き上げたときのベートーベンは難聴が悪化しつつある時期で、曲には「運命に打ち勝つ」「自分の新しい音楽をつくり上げて世に出したい」という決意を込めていたという(※1)。そうした大元の曲の背景も踏まえつつ、「Golden Age」の歌詞に描かれた「NCTの黄金期をファンとともに大切にしながら、これからも新しいページを刻み、明るい未来を描いていく」というメッセージを加味すると、NCTは同楽曲で新章の幕開けを宣言し、次の音楽シーンを切り開く斬新な音楽を世に届けていく決意を改めて表明したとも考えられるかもしれない。

 NCTは今後、9月に東京と大阪でスタジアムライブを開催するほか、10月6日にはNCT 127がカムバックを控えている。さらにはNCT TOKYOのデビューも今秋と言われており、新グループも誕生予定。まさに黄金期にあるNCTはこの先の活動の中でどのように独自コンセプトを深め、楽曲の魅力を体現し、新章へと突入していくのだろうか。

※1:https://www.j-cast.com/trend/2020/04/20384572.html?p=all

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