Kenta Dedachi、音楽ルーツを辿った初のカバーライブ アーティストとして目指す場所を再確認するステージに

Kenta Dedachi、初のカバーライブレポ

 Kenta Dedachiが初のカバー企画ライブ『Back to Covers』を東京・TimeOut Café & Dinerにて開催した。

 Kenta Dedachiは1999年生まれのシンガーソングライター。2018年に渡米を果たし、その後もロサンゼルスと日本を行き来しながら音楽活動を続けてきた。昨年12月にLAの大学を卒業し、今年2月に帰国した後は、5月に弾き語りをメインに構成したワンマンライブ『Kenta Dedachi Acoustic Live “Cozy notes”』を東京・大阪で開催。「“Cozy notes”とはまた違うライブをしたい」との想いで開催されたのが、今回のカバーライブだという。

 2回に分けて開催された公演のうち、本稿では1公演目の模様を振り返る。ステージに登場したKentaは、「まずは1曲歌って始めようと思います」とリオン・ブリッジズの「Beyond」を披露。客席の雰囲気を確かめるようにゆっくりと見わたしながら、抱えたアコースティックギターの音色にのせて、伸びやかな歌声を響かせた。

 直訳すると「カバーに戻る」となる『Back to Covers』だが、ライブタイトルについてKentaは「カバーから自分のミュージックジャーニーが始まった」と語った。高校まで通っていたインターナショナルスクールが小規模で、周りの学校にあるような部活動がなかったため、放課後を利用して好きなアーティストの楽曲をカバーし、YouTubeに投稿し続けたという。当時に戻った気持ちでライブをしたいという想いが、今回の企画には込められているそうだ。

 ライブは基本的に、1~2曲終わるごとにトークを挟んでいくスタイルで進行した。演奏の前後に、Kentaがその曲にまつわる自身の思い出や考えを語っていく。話を聞いていると、選曲にも非常にこだわったことが伝わってくる。続いて披露されたのは、エド・シーランの「Thinking Out Loud」と「Perfect」。エド・シーランはKentaが尊敬するアーティストの1人だそうで、「いつか自分も彼のように世界中で愛される曲を書きたい」と語った。

 一度ギターを置き、キーボードの弾き語りで届けたのは、小坂忠へのリスペクトを込めた「主の御言葉待ち望む」。会場をしっとりした雰囲気に満たした後は、再びギターを抱えてMercyMeの「I can only imagine」を披露し、後半にかけて力強いストロークとハイトーンボイスで盛り上げていく姿に心を揺さぶられた。「主の御言葉待ち望む」は牧師でもあった小坂忠が書き下ろした讃美歌であり、父親が牧師で、子供の頃から教会に通っていたKentaにとって賛美歌は大切な音楽ルーツだというが、同曲が小坂の作曲であることを知ったのはだいぶ時間が経ってからだったという。きっかけとなったのが「I can only imagine」のカバーソングを手がけた際に、日本語の訳詞を小坂に相談したこと。そういった意味でもKentaのルーツを語る上で欠かせない、大切な2曲が披露されたパートとなった。

 ここからはセルフカバーのセクションへ。披露する2曲はリリースされてはいないものの、同世代のミュージカル俳優・三浦宏規のライブに向けて提供したもので、1曲目の「心の花」はゆったりとしたバラードだ。ギターのアルペジオにのせて、Kentaは優しい歌声を響かせる。そこから一転、“夏の思い出が詰まった街”という意味があるサマーソング「Summerville」では、爽やかな演奏が会場を包む。体を揺らしながら聴いている人も多く、演奏後には大きな拍手が起こった。

 「カバーライブも楽しいですね!」と嬉しそうに語った後は、待望のリクエストコーナーへ。今回のライブでは事前にSNSでリクエストを募っており、集まった数はなんと100曲近くあったという。時間の都合で今回は2曲のみの披露とのことで、残念がる観客に向けて「これからも(カバーライブを)やりましょう!」と笑いかける。そんな多数のリクエストから選ばれた1曲目は、Dan + Shay, Justin Bieberの「10,000 Hours」だ。偶然にもリクエストをした観客が一番前に座っていたとわかり、「リクエストありがとうございます!」とコミュニケーションを交わす場面も見られた。

 2曲目はディズニーの名曲「星に願いを」(クリフ・エドワーズ)。ここでKentaは、ステージにもう1つ用意されていたギターを手に取る。以前に自身のYouTubeチャンネルで紹介していた、自作のラバー・ブリッジ・ギターだ(※1)。ギターのブリッジがラバーに変わっているため、通常のギターと比べると少しこもったような、まろやかで奥行きのある響きに聴こえる。独特な音色がファンタジー感のある楽曲とマッチしていて、弾き終えたKentaも「雰囲気あるでしょ?」と語った。

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