『ヒプノシスマイク』斉藤壮馬ソロインタビュー&速水奨×竹内栄治スペシャル対談 2枚のEPで切り開いたプロジェクトの新境地
音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Divisiion Rap Battle-』(以下、『ヒプマイ』)のEP『The Block Party -HOMIEs-』『The Block Party -HOODs-』が8月23日に2枚同時リリースされた。“ヒプノシスマイクが使えなくなった世界を音楽フェスで勇気づける”という物語に沿って、ヒップホップ/ラップではないジャンルの楽曲が多数収録されるという、作品史上初の試みがなされたEPだ。
今回の特集では、新譜においてさらなる進化を遂げ新しい側面を提示した『ヒプマイ』
について、キャスト陣の想いを聞いた。前半では『The Block Party -HOMIEs-』でEveによる提供曲「夢の彼方」を歌った夢野幻太郎を演じる斉藤壮馬のソロインタビュー、後半は『The Block Party -HOODs-』で小出祐介(from Base Ball Bear)が手がけた「Closer」で初タッグを組んだ神宮寺 寂雷役・速水奨、天国 獄役・竹内栄治による対談インタビューをお届けする。(草野英絵)
【斉藤壮馬(夢野 幻太郎 役) ソロインタビュー】
――ラップやヒップホップというジャンルにとらわれない、ソロやディビジョンの垣根を超えた構成となる今回の初EPのコンセプトをお聞きになった時、どう思われましたか?
斉藤壮馬(以下、斉藤):『ヒプノシスマイク』というコンテンツ自体が、固定観念にとらわれない、挑戦的なマインドを持っているコンテンツだと感じていたので、驚いた気持ちもありつつ、同時にしっくりきたと言いますか。『ヒプマイ』なら何をやってもおかしくはない、そういうポジティブな驚きを覚えましたね。
――実際に、他の方々の楽曲もお聴きになられましたか?
斉藤:レコーディングの時に「Rivals」(有栖川 帝統〈CV:野津山 幸宏〉&観音坂 独歩〈CV:伊東 健人〉)を聴かせていただいて。僕自身、ビッケブランカさんがすごく好きなので、「ああ、“ザ・ビッケブランカ”だ!」と思うと同時に、「帝統と独歩、歌上手いな!」と。今までの楽曲にもラップではない歌唱パートはもちろんあったんですけど、あらためて歌唱にフィーチャーした楽曲を聴くとそれぞれの新たな一面が見えますし、これまでにはなかった組み合わせも非常に多くて、特にこの「Rivals」はEPの1曲目を飾るに相応しい、シャッフルビートが軽快な楽曲で「これは日常のいろんなシーンで聴きたくなるな」と思いましたね。
あとは、ボーナストラックが強いですよね! キャスト間でも「これはすごいぞ」と、すごく話題になっていて。女王蜂のアヴちゃんさん提供の楽曲(『The Block Party -HOMIEs-』収録ボーナストラック「おままごと」邪答院 仄仄〈CV:ファイルーズあい〉)もそうですし、「Bounce Back!」(帳 残星〈CV:大塚 明夫〉&帳 残閻〈CV:中尾 隆聖〉)は本当に……「勝てるのか?」って気持ちになったり(笑)。僕は養成所時代に中尾隆聖さんにお世話になったんですけど、変わらず隆聖さんの歌はやっぱりとても素敵で。各楽曲で、いろんなことに想いを馳せてしまいますね。個人的には、(山田)一郎(CV:木村 昴)の「HIPHOPPIA」が、「やっぱり一郎はこうあってくれるんだな」という安心感というか、ブレないスタイル、彼の一本通った筋を感じて。本当に、世界観としても深めていきようがあるんだなと思いましたね。
――夢野 幻太郎「夢の彼方」はEveさんによる楽曲提供です。初めて聴かれた時、どう思いましたか?
斉藤:もともとEveさんの楽曲は聴いていて、MVにもキャストとして参加させていただいたり、僕のラジオ番組(文化放送『斉藤壮馬 Strange dayS』)にゲストとして来ていただいたり、かなりご縁があって。僕は、自分の音楽活動のなかでいつかEveさんとコラボレーションしたいなと思っていたんですけど、『ヒプマイ』に先を越されてしまいました(笑)。だから、そういった驚きと共に楽曲を聴いたんですよね。でも、Eveさんの世界観が100%でも、『ヒプマイ』要素が100%でもなく、双方の世界観がいい形で融合しているなと思いましたね。個人的にも8分の6拍子の曲がすごく好みなので、そこからサビのリズムが変わるのも好きでしたし。Eveさんのハモリの構築の仕方ってとても独特で、その和声も素晴らしかったんです。レコーディングは大変と言えば大変ではあったんですけど、すごく実りが多かった。コーラスワークにも注目してほしい、非常に美しい楽曲だなと思いました。
――実際歌ってみて、最初に聴いた時とのギャップなどはありましたか?
斉藤:キーのレンジも広くて、耳馴染みのいい曲だとは思うんですけど、実際歌ってみると技巧的な部分も多い楽曲といいますか。でも、技巧に溺れすぎずにサラッと歌っているようなニュアンスが必要で、かなり難易度の高い曲ではあったかな。セリフのパートも一切ない、ラップもないなかで「夢野 幻太郎っぽさをどう表現するか」が、いちばんの肝だと思っていました。楽曲がメロディのある歌モノとして成立しているぶん、幻太郎がそれを歌っているということをどこまでお届けできるのか、かなりディスカッションをして、何パターンも試しながらレコーディングしました。すごく楽しかったですね。完パケした時にアレンジされた完成版を聴いたんですけど、非常に広がりのあるアレンジになっていて。不思議なもので、そのアレンジがすごく幻太郎の心象風景のようだなと感じたんですよね。いろいろなピースが集まって素敵な楽曲になったと思います。
――夢野 幻太郎らしさを出すことに関して、ラップやセリフがある時と、今回のような歌モノでは取り組み方や意識は違いますか?
斉藤:幻太郎は少し特殊なキャラクターだから、楽曲に対してどんなアプローチをしても「この曲はこういう幻太郎なんだ」と受け入れていただけると思うんですけど、やっぱりリスナー心理として「あ、ここは幻太郎っぽい!」と感じるポイントというものは、普段喋っている声色に近い部分で歌った時に感じることが多いと思うんです。楽曲にはキーのレンジがあって、幻太郎にも喋り声のトーンの基準となるような音域があったりするので、その表現はやはり難しい。ただ、これまでも「どうやって“幻太郎っぽさ”を出すのか」と毎回試行錯誤しながらやっているんですよね。僕が幻太郎っぽさを意識しているのは、語頭と語尾。幻太郎は下から潜るように発声するといいますか。語尾をスパッ!と切るのではなく、息を長めに残す。『ヒプマイ』のなかでも幻太郎はポエトリーリーディングや朗読に近いようなアプローチをすることが多くて、それが彼なりのラップのスタイルだと思いながら、今回は逆にモノローグみたいなものを歌で表現しているんだというふうに考えたりしました。でも、ひとつの正解を決めているわけではないし、聴いてくださった方が「今回の幻太郎はこうなんだ!」とそれぞれに思ってもらえるように、解釈の余地が残ればいいなと思っています。難しかったけど、楽しかったですね。