B'zとエレファントカシマシが迎えるデビュー35周年 リスナーを鼓舞し続ける2組に共通するかっこよさ

 2023年、B'zとエレファントカシマシがデビュー35周年を迎える。まさに時代の変換期1988年にデビューし、平成を丸ごと駆け抜けきた彼ら。時に歩み、時に突っ走り、今もその背中の大きさを見せつけている。

 B'zは揺るぎなく王道ど真ん中を進み、エレファントカシマシは縦横無尽にルートをとる。アプローチは違えど、日常の喜びも迷いも悩みも、すべて超絶技巧で響かせるサウンドはともに圧倒的だ。昭和歌謡から引き継ぐ「大衆性」のエキスと、J-POPの波に乗った斬新さ、平成の混乱期を寄り添ってきたやさしさと激しさが混在し、世代を超え、ダイレクトに心に響いてくる。最強の「35周年組」は、人間はもがく姿が最高にかっこいい、と私たちを鼓舞し続ける。

変わらぬ目線で平成と伴走してきたB'z

 B'zは1988年デビューではあるが、彼らがこの年活動した期間は本当に短く、リリースは1stシングル『だからその手を離して』と1stアルバム『B’z』の2作品のみ。B'zのデビューは9月21日で、当時は「昭和の終わりの直前」。9月19日に昭和天皇の容態悪化が報道され、社会全体が自粛ムードになっていた。彼らはそこにデビュー時期が重なる形になった。

 その後も平成に入ると、バブルが崩壊し不況が続き、自然災害が多発とエンタメ業界全体で苦しい時期が続く。しかしその一方で、ITが普及し、世の中はとても便利になる。音楽シーンではJ-POPという言葉が誕生し、バンドブームが爆発、新たな音楽やエンタメの萌芽が沸々と顔を出しはじめた。

 当然、ライバルも数多登場する。90年代にはスピッツ、GLAY、Mr.Children、L'Arc〜en〜Cielといった才能が立ちはだかる。さらに1990年代中~後半には小室ブーム、2000年代には歌姫ブームが吹き荒れる。2010年のグループアイドルの台頭、配信という音楽形式の移行、コロナ禍によるリモート、サブスクの普及――。平成の30年プラス、令和の5年で、音楽の伝え方、価値観は驚くほど変わった。

 その時代に合わせ〈変えていく〉というより、すべてを〈見つめながら〉、シーンを走ってきたB'z。ニュートラルな姿勢を崩さず、1990年の5thシングル『太陽のKomachi Angel』から2023年7月12日に発売した54thシングル『STARS』まで、オリコン週間シングルランキングで50作連続1位をという記録はまさに偉業だ。

 7月19日に放送された『クローズアップ現代』(NHK総合)のインタビューで、二人はこう答えている。

「時代によって食い込むというか、そういうことよりも、われわれだけができるようなことみたいなものに。むしろ自信を持ってやっていった方がいいかなというふうには思います」(稲葉浩志)

「なにか大変なことがあると、まずは“音楽じゃない”じゃないですか。例えば、まずは食べることだとか、住むところだとか(中略)。だけど、僕たちの順番が回ってきた時のためにね、ちゃんと皆さんが応援できるような音楽は準備してましたけどね」(松本孝弘)

 自粛の雰囲気の中にデビューし、激動の時代を見てきた彼ら。第一線に立ってもその経験を忘れず、音楽の力を信じて出番を待ち、準備する勤勉さ、誠実さは代えがたい強みだ。

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