B'zとエレファントカシマシが迎えるデビュー35周年 リスナーを鼓舞し続ける2組に共通するかっこよさ

独特のチームワークを維持するエレファントカシマシ

 もう一つの35周年、エレファントカシマシのブレイクは1996年「悲しみの果て」だろう。一部ではすでに熱烈な人気を誇っていながら、なかなかチャンスに恵まれず、一般認知的には遅咲きとなった。レコード会社移籍を繰り返しながら、ボーカルの宮本浩次が、数々の苦境をエネルギーに変え、身体から暴発させるように暴れ、歌う。それをデビューから変わらない石森敏行(Gt)、高緑成治(Ba)、冨永義之(Dr)のメンバー3人が静かに支える。そのチームワークは、時に危うく見えながら、彼ら独特の黄金比でバランスを保っているようなイメージだ。それが時代にぶつかりながら、思いきり尖ったり、逆に驚くような包容力を見せたりして進路を取る。壮大にしてユニークなバンドである。

 デビュー時は客に向かい、曲の聴き方が悪いと怒鳴ることもあった宮本。一方で最近では率先して「宮本浩次のYouTuber大作戦!」としてアルバムを解説したり、質問に答えたりする動画を投稿している。ゴツンゴツンと壁に当たり、年を重ねるごとに角が取れていく姿が見ていて清々しい。エレファントカシマシとして『NHK紅白歌合戦』の舞台に立ったのは、結成30周年の2017年。長年かけて夢を叶える姿が、なんとも彼ららしい。

 スピッツやMr.Childrenなどの後輩バンドにもインタビューで「仮想敵って言ったらアレだけど、俺は一方的にライバルだと思ってる」と素直に嫉妬し、彼らの音楽を片っぱしから聴いたという。50代から宮本はソロで歌謡曲をエモーショナルに歌い上げ、まさに紆余曲折からの縦横無尽。彼の柔軟性は、同時代デビューのロックシンガーで今やピカイチではないだろうか。

応援の底にある「ラブソング」の要素

 B'zとエレファントカシマシの共通点は、日本語の聴きやすさである。ゴリゴリのロックサウンドに乗せ、ときに社会的なメッセージを織り込みながらも、どこか一対一のラブソングに思える聴き心地。喜びも哀しみも世代を超え共有できる彼らの言葉選びは、どこか古風でロマンチックだ。ときには「ガストロンジャー」(エレファントカシマシ)や「ギリギリchop」(B'z)など、説明が難しい時代のエネルギーに名を与え、世間への憤懣を爆発させたりもする。その荒ぶり感もわかりやすい。いい意味で悟らず、ときには泥臭い、それが愛おしい。

 そしてなにより驚くのは、デビュー35周年を迎えた今、稲葉も宮本も、デビュー当時と同じ熱量と変わらぬキーで歌う。その体力・気力は、同じ50代の私からしてみれば超人的だ。だからこそ、サブスクで彼らを知った若い世代がライブを見て度肝を抜かれ、「もっと早く生まれてリアルに追いたかった」と思うほど心つかまれるのだ。

 彼らのそばにデビューから変わらぬ理解者としてメンバーが存在しているというのも大きいだろう。稲葉と松本の「一度も解散を考えたことがない」という揺るぎないパートナーシップ。エレファントカシマシの、独特のポジションでつながる絆。それぞれがソロで活動しても、必ずバンドという家路につき、ライブというホームで爆発する。この繰り返しを続け、今なお進化する彼らに、年を重ねる勇気すらもらえるのである。私が惚れた青春は、まだまだしっかりと横にあり、これからもきっと横にいてくれる。自分もまだまだいける、と。

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