THE ALFEE、GLAY、LUNA SEA、UVERworld……常識を覆してきた伝説の野外ライブ 前代未聞の動員数や演出を振り返る

 あなたの心に残っている伝説のライブを思い浮かべてほしい。私が真っ先に思い浮かべるのは、2011年にアメリカ・ニューヨークで行われたポール・マッカートニーのヤンキー・スタジアム公演である。ライブ本編の最後に演奏された「Hey Jude」で満員のヤンキー・スタジアムがひとつになった瞬間は、忘れることのできない大切な記憶だ。

 ライブハウス規模の公演で、アーティストとオーディエンスが渾然一体となって生み出す親密で熱狂的なライブは、何ものにも代えがたい音楽体験である。一方で数万人規模のオーディエンスを迎える大型ライブには、ライブハウス規模の公演にはないダイナミズムがあり、否が応でも感じる「大きさ」への本能的な畏怖の念にも似た衝撃は、強烈な印象を残す。そして、大型の野外ライブにおいては、その開放感はもちろん、ときには自然の力をまざまざと見せつけられることで、我々を他のライブでは体験し得ない特別な音楽体験に導いてくれるのだ。

 今では珍しくない大型の野外ライブを日本に根づかせるにあたって大きな役割を担ったのは、意外にもTHE ALFEEである。アメリカのフォークデュオ・サイモン&ガーファンクルが1981年、ニューヨークのセントラルパークに53万人を集めた伝説の野外ライブを成功させた翌年から、27年間に渡って定期的に夏の野外ライブイベントを続けてきたTHE ALFEE。もちろん、1982年以前にも吉田拓郎とかぐや姫による、オールナイト野外ライブが静岡県掛川市・つま恋で開催されるなど、日本における野外ライブの歴史はすでに始まっていたものの、THE ALFEEのように長期間にわたって野外ライブを継続した功績は大きい。そして、1986年に行われた『THE ALFEE 1986.8.3 SWEAT&TEARS TOKYO BAY-AREA』では、当時単独ライブ初の10万人動員を記録。このように、一過性ではない開催形式によって、その圧倒的な動員数にも裏づけされるオーディエンスの支持を集めてきたことは、今日につながる日本での大型野外ライブの礎になっている。

 『THE ALFEE 1986.8.3 SWEAT&TEARS TOKYO BAY-AREA』は、しばらく日本音楽史における動員数記録をキープし続けたものの、1999年にこの記録が大きく塗り替えたのが、GLAYの野外ライブ『GLAY EXPO '99 SURVIVAL』、いわゆる伝説の20万人ライブだ。幕張メッセ特設会場で開催されたこのライブは、当時NHKのニュースで報道されるほどの社会現象にまで発展し、いまだに日本最大のライブ動員数記録を保持している。

GLAY / サバイバル (GLAY EXPO '99 SURVIVAL)

 そんなGLAYの20万人ライブと同じ1999年には、販売チケット枚数に上限を設けないという驚くべきシステムのもと、LUNA SEAの10周年記念ライブ『10TH ANNIVERSARY GIG [NEVER SOLD OUT] CAPACITY∞』が東京ビッグサイト スペシャルオープンステージで開催された。チケット販売枚数を無限に設定することができるのも、野外の広大な会場で開催するからこそだが、さらに驚くべき「野外ライブらしい」伝説も残されている。前日に吹いた突風によりステージセットが崩壊したものの、その崩壊したセットを廃墟に見立てて、そのままライブを決行したのだ。まさに、前代未聞の伝説の野外ライブと言って差し支えないだろう。

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