GLAY、5年ぶり全国ツアーで再確認したバンドの一体感 今届けるべきレア曲に光を当てたハイコミツアーファイナル公演

GLAY、ハイコミツアーファイナルレポ

 GLAYの全国ホールツアー『HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY-』のファイナル公演が6月11日に東京ガーデンシアターで行われた。『HIGHCOMMUNICATIONS TOUR』はGLAYが“あえてコンセプトを決めない自由度の高いライブパフォーマンスを行う”というテーマのもと、2003年から不定期に行っているツアーで今回は6年ぶりの開催。さらにこのツアーは、コロナ禍以降、初めて観客が声援や歓声を送ることのできる“声出しOKライブ”となった。

 オープニングは、ルネサンス期の芸術とダークファンタジー的なイメージが重なる映像。ライブの開幕を告げたのは、最新シングル『HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-』の収録曲「THE GHOST」(作詞:TAKURO/作曲:JIRO)だった。濃密なグルーヴを生み出すベースラインが印象的なこの曲は、GLAYの現在地を示すと同時に、今回のツアーの軸になる楽曲。ステージ前方に掛けられた幕の後ろでロングコートに身を包みフードを目深に被ったメンバーたちが演奏に集中する様子と、幕に映し出される“ゴースト”の映像のマッチングも楽曲の世界観を際立たせていた。

 さらに抑制と解放感のバランスが心地いいロックチューン「THE FRUSTRATED」を披露すると、ステージ前の幕が上がり、コートを脱いだTERU(Vo)、TAKURO(Gt)、HISASHI(Gt)、JIRO(Ba)が姿を見せる。ド派手でキャッチーなギターフレーズに導かれたのは、「Lovers change fighters, cool」。オーディエンスは“キャー!”と“オー!”が混ざった歓声を上げ、サビではもちろん両手を上げ前後に振りまくる。メンバー4人は自由にステージを動き回り、視線を合わせ、観客を煽る。約5年ぶりとなる全国ツアーのファイナル。メンバー自身もこの瞬間を全身で楽しんでいるようだ。

GLAY TERU ライブ写真(写真=田辺佳子)
TERU(写真=田辺佳子)

 ライブの最初のピークは「FAME IS DEAD」だった。TERUの動きに合わせて観客が両手を左右に振り、サビでは大合唱が発生。TAKUROがバズーカで客席に向けてプレゼントを発射し、〈オマエが欲しい〉の“オマエ”を“TAKURO”、“HISASHI”、“JIRO”、“GLAY”と変えながら歌うなど、エンタメ性に溢れたステージが展開された。

 華やかで開放的な雰囲気から一転、TAKUROのブルージーなギターからはじまった「恋」では、終わりを迎えつつある“男と女”の関係、痛みにも似た悲しみを抒情的に描き出す。この曲から伝わってきたのは、TERUのボーカリストとしての深み。アッパーな楽曲からバラードまで、この日のTERUは明らかにコンディションが良く、歌の力でバンドを牽引していたと思う。

 「CHILDREN IN THE WAR」も強く心に残った。この曲はもともと『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2003』から披露され始め、当時勃発したイラク戦争を受けた、TAKUROの思いが強く反映された楽曲。この反戦歌が2023年のツアーで演奏された理由は、今更言うまでもないだろう。国家同士の争いのなかで、犠牲になるのはいつも子供たちであり、弱い立場の人々。この曲を演奏しなくてもいい日が来ることを願ってやまない。

GLAY TAKURO ライブ写真(写真=田辺佳子)
TAKURO(写真=田辺佳子)

 そしてライブのハイライトの一つを演出したのは、「pure soul」。1998年に発表され、ダブルミリオンを記録したアルバム『pure soul』の表題曲だ。歩んできた道を振り返り、悲しみや後悔を抱えながらも前を向いて生きようとする姿を描いた楽曲だが、〈祈るような毎日の中で もっと強く生きてゆけと/少しだけ弱気な自分を励ます〉というフレーズには、どうしてもこの3年間の状況を重ねてしまう。あまりにも辛かった時期を越え、ようやく声を出し合えるようになったーー「いつも支えてくれて本当にありがとう」というTERUの言葉は、会場に足を運んだすべての人の心に真っ直ぐに届いたはずだ。

 最新シングルの収録曲であり、TERUのポジティブな姿勢がそのまま刻み込まれた「限界突破」からライブは後半へ。HISASHIの尖りまくったフレーズが炸裂する「JUSTICE [FROM] GUILTY」「黒く塗れ!」、JIROのオルタナティブなセンスが伝わる「DOPE」によって会場全体のテンションはさらに上がっていく。メンバー4人のソングライティング、パフォーマンス能力、存在感がぶつかり合い、バンドとしてのポテンシャルを増幅させる。GLAYの本質をダイレクトに体感できるシーンが続く。

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