私立恵比寿中学、ダンスパフォーマンスはなぜ強靭なのか? 卒業した仲間たちの想いを背負うことで“今”へ繋げたステージの魅力

 私立恵比寿中学のダンスパフォーマンスの素晴らしさとはどういうところなのか。そう考えた時、筆者は自分なりにひとつの答えを導き出した。

 ここであらためて、エビ中の人数変遷について振り返りたい。2009年の結成時は5名体制で(当時から現在までグループに在籍するのは真山りかのみ)、インディーズ時代の最大人数は13名。メジャーデビュー時には9名体制へと組み変わり、その翌年に3名が転校(脱退)し、その後に小林歌穂、中山莉子が転入(加入/この時点で8名体制)。2017年に松野莉奈が急逝、翌年には廣田あいかが転校をし、2018年からの2年間は6人体制となるが、その間にも安本彩花の休養があった。2021年には桜木心菜、小久保柚乃、風見和香が転入して9人体制。一方で、一時休養をはさむなどしていた柏木ひなたが2022年12月16日をもってのグループ卒業を発表。入れ替わるようにして、2022年10月に桜井えま、仲村悠菜が転入して現在の10名体制となった。

 14年というアイドルグループとしてはかなり長い活動期間ではあるが、それでもメンバーの転入/転校/卒業がめまぐるしいのがエビ中の特徴だ。これは決してネガティブな意味ではなく、人数が一定する期間がほとんどなくここまでやってきたと言える。

 エビ中のダンスにおいてリスペクトするべき点はそこである。メンバーの数が一定しないということは、その都度、ダンスにおける各自の担当パート、全体のフォーメーションなどについて考える必要があるということだ。もちろんボーカルパートが変わることによるダンスの変更もある。つまり、大小の修正を常に繰り返しながら14年間、走り続けているのだ。これは相当な体力と気持ちの強さがないと乗り越えられないものだ。

 ただ、だからこそエビ中のダンスはエキサイティングに映る。スクラップ&ビルドを頻繁に行わなければならない事情からくる“新鮮さ”は間違いなくあり、だから観る者を飽きさせないのではないだろうか。

 何よりエビ中のダンスは、これまで転校/卒業していった仲間たちの気持ちをちゃんと背負い続けているように見える。いや、背負っているどころか、時にはその場にいないはずのメンバーたちの姿が浮かんでくる瞬間があるのだ。

かまいたち ・濱家隆一「エビ中の強みはみんながずっと一緒にいること」

 たとえば、2021年に行われた当時の6人体制ラストとなった全国ツアー『私立恵比寿中学 Best at the moment series「6Voices」』では、闘病のために公演に参加できなかった安本の存在を間違いなく感じることができた。安本も一緒にステージの上で踊っているように思えた。どうやったらそんなパフォーマンスができるのか、私たちにはわからない。しかしエビ中は、そういう光景をこれまで何度も見せてきた。そして、それこそがエビ中にしかできないダンスパフォーマンスなのではないだろうか。

 もちろんそれは、エビ中のチームワークのよさを抜きには語れない。ラジオ番組『エビ中☆なんやねん』(MBSラジオ)でも共演したかまいたち・濱家隆一は、雑誌『B.L.T』2019年4月号(東京ニュース通信社)のなかで、エビ中のチームワークについて「番組のイベントで一緒になったときも、6人(当時)がずっと一緒にいるんです」「6人でしゃべって、6人でご飯を食べて、ケンカもせずにここまでの結果を残して今も一緒に仕事ができている。それは、絶対に全員の人間性がいいからで、そこがエビ中の強みなんやろうなって」と語っている。グループのダンスは、ひとりだけが際立っていても見栄えはよくない。その点で、エビ中は日頃からの一体感がパフォーマンス時の統制力、迫力に繋がっているのだろう。

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