私立恵比寿中学 真山りか、安本彩花、小久保柚乃……グループのパフォーマンスを支える表情豊かな歌唱力

「『一本の柱に、みんなでぎゅっとくっつくイメージで頑張ろうね!』って、ボイトレの先生から声をかけてもらったんです」(星名美怜)

「その言葉は、ポイントポイントでけっこう言ってもらっているんです。私たちが、落ちそうな瞬間に言ってもらえるというか(笑)」(真山りか)

「本当に追い詰められてて、不安も大きかったからなー」(安本彩花)

 雑誌『BRODY』2020年10月号(白夜書房)のインタビューのなかで、星名、真山、安本の3人は廣田あいかの転校(脱退)翌日に行われた2020年1月4日の6人体制での初ライブ当日の朝、ボイストレーニング時にトレーナーからそう声をかけてもらったという。星名は、「その言葉をかけてもらってから、よりグループとしての歌、全員でのパフォーマンスという意識が高まったと思います」「それまでは、自分がここでかっこよく見えればいいなとか、どこかでそういう思いがそれぞれあって、歌がソロパートの集まりで」「でも今は、1曲の中で6人がバトンをつないでいく、リレーのような歌になっていると思います」と歌唱意識に変化が出たと語っている。

 “エビ中”こと私立恵比寿中学は、アイドルシーンのなかでも歌、ダンスともにトップクラスの実力を持つ。それは結成14年目を迎えたベテラングループとしての経験や技術向上はもちろんのこと、人間としてもアイドルとしても成長した点、それぞれの楽曲解釈の深さや豊かさも影響しているだろう。

岡崎体育が真山りかの歌の技術を高評価「安心感を与える歌」

 本稿では、エビ中の歌唱面に話題を絞ってみたい。たとえば、2015年1月リリースの2ndアルバム『金八』ではメンバーそれぞれがまだ10代だったこともあり、青春時代ならではの疾走感、ちょっとした生意気さやヤンチャ感が歌からみなぎっていて、パワーが炸裂していた。しかし、2019年3月リリースの5thアルバム『MUSiC』では、元気な歌いっぷりの曲もありながら、「曇天」のようにシリアスで大人っぽいムードも漂ってくるようになった。エビ中の動向を長年見守っていると、歌や声の質感の成長、そしてそれに合わせて楽曲のボーカルエフェクトなども変化していることがよくわかる。

【MV】私立恵比寿中学 「曇天」

 現在、歌唱面でグループをリードするひとりとして挙げられるのが、真山りかだろう。「サドンデス」(2016年)、「Family Complex」(2019年)を提供している岡崎体育は、雑誌『BRODY』2020年10月号のなかで「真山さんは、初めて僕とレコーディングした時に比べると、本当に声が大人になった感じがします」と振り返っている。その印象について、「女性としての声の重みじゃないですけど、しっとりとした声になりましたよね」「表現力も、すごく高いです。具体的には、声での演技、抑揚の付け方、間の取り方」「ブレスの長さとか、歌い出しのタイミングとか、そういうところの間ってすごく大事なんです」「真山さんは、その間の取り方がすごく上手ですね。呼吸の入れる位置もすごく適切なので、聴きやすいし、安心感を与える歌になってきた印象があります」とテクニックを高く評価している。

【メイキング】私立恵比寿中学 「サドンデス」レコーディングメイキング

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