YOASOBI、back number、SUPER BEAVER、sumika……それぞれの挑戦が詰まった最新ライブ映像作品の見どころ解説
WOWOWでは、7月からYOASOBI、back number、SUPER BEAVER、sumikaのライブや、ドキュメンタリーの放送・配信が目白押し。7月8日にはYOASOBIの『YOASOBI ARENA TOUR 2023 “電光石火”』さいたまスーパーアリーナ2DAYS公演の最終日をノーカットで放送・配信。7月22日には、back number初の5大ドームツアー『in your humor tour 2023』東京ドーム公演の模様を独占で放送・配信。7月23日にはSUPER BEAVER自身最大規模となる富士急ハイランド・コニファーフォレストでのライブ『生中継!SUPER BEAVER 都会のラクダ SP ~ 真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち ~』を生中継するほか、sumikaが2022年~2023年にかけて行った最新ツアーと、結成10周年を記念して行った横浜スタジアムライブの裏側に迫るドキュメンタリー『Documentary of sumika 2022-2023 ~Starting Over~』も放送・配信。本稿では、その4つのライブ作品の見どころと注目ポイントを紹介していきたい。(編集部)
『YOASOBI ARENA TOUR 2023 “電光石火”』
最新曲「アイドル」が米ビルボード・グローバル・チャート“Global Excl. U.S.”やApple Musicグローバルチャートで1位を獲得するなど、世界的なブレイクが目前に迫っているYOASOBI。4月から6月にかけて行われた全国アリーナツアー『YOASOBI ARENA TOUR 2023 “電光石火”』でikura(Vo)とAyase(Comp)は、さらなる進化を遂げた音楽性、ライブパフォーマーとしての類まれな魅力を示してみせた。
7月8日の放送では、ツアーのファイナルとなるさいたまスーパーアリーナ2DAYSの初日公演を放送・配信。オープニングはド派手なレーザービームと強烈なエレクトロサウンド。「YOASOBI、はじめます!」というikuraの宣言からはじまった攻撃的なアッパーチューン「怪物」によって、会場のテンションは一気に上がっていく。「さいたまの声、聞かせてくれ!」(ikura)の煽りに反応し、“Hey!Hey!”と声を出し、体を揺らしまくって楽しむオーディエンスの姿も印象的(大人から子供まで年齢層がとにかく広い!)。冒頭から画面にグイグイと引き込まれ、YOASOBIのステージを生々しい臨場感とともに味わえる映像に仕上がっている。
さいたまスーパーアリーナでテイラー・スウィフトのライブを観て、「いつかこのステージに立って歌いたい!とずっと思ってました」(ikura)というMCの後に披露されたのは「アンコール」。音楽を鳴らすこと、歌うことに対する真摯な思いが伝わる演奏と、スマホのライトを照らす観客の思いが響き合うシーンは、この日のライブの大きなポイントだったと思う。
そして、何よりも心に残ったのはikura、Ayaseの笑顔だった。“小説を音楽にするユニット”というコンセプトをもとに、YouTubeで楽曲を発表するところからはじまったYOASOBI。“声出しOK”となった今回のツアーで二人は“ダイレクトに観客をつながった”という感覚を初めて得たのではないだろうか。しっかりと時間をかけてオーディエンスとコミュニケ―ションを取り、ひとりひとりに手渡すように歌うikuraの姿も印象的。AssH(Gt.)、やまもとひかる(Ba.)、ミソハギザクロ(Key.)、仄雲(Dr.)という凄腕ミュージシャンによるハイクオリティな演奏にもぜひ注目してほしい。
ライブ終盤の「祝福」では、心地よい疾走感に溢れたサウンド、ポジティブな意志を刻んだボーカルによってライブのハイライトを演出。さらに「群青」が生み出した圧倒的な一体感、新たな代表曲「アイドル」の素晴らしさなど、全編がハイライトと言っても過言ではない。YOASOBIの最新ツアーをぜひ、心ゆくまで堪能してほしいと思う。
『back number “in your humor tour 2023”』
2023年3月から4月にかけて行われた、back number史上初の5大ドームツアー『in your humor tour 2023』。4月16日の東京ドーム公演で彼らは、このバンドの根本的なスタンスと新たな表現を同時に体現してみせた。
2020年に中止となったインターハイ(全国高等学校総合体育大会)に関わる高校生たちから受け取った手紙をきっかけに制作された名曲「水平線」。日常の素晴らしさ、大切な人との何気ない関わりの美しさを描いた「アイラブユー」(NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』主題歌)など、コロナ渦以降も質の高い楽曲をリリースしてきたback number。これらの楽曲を収めたオリジナルアルバム『ユーモア』は、彼らのキャリアハイを告げる充実作となった。
ドームツアーの中心を担っていたのもアルバム『ユーモア』の楽曲。生々しいバンドサウンドを軸に、さらに表現の幅を広げた新曲群がドームという晴れ舞台でどう表現されたのか? まずはそこが大きな見どころになるだろう。また、「クリスマスソング」「高嶺の花子さん」「スーパースターになったら」といった既存の代表曲と新曲が絡み合い、“2023年のback number”をリアルに体感できることもポイントだと思う。
「秘密のキス」は女性を主人公にした映像とともに披露。ライブ中盤ではアリーナ後方に設置されたサブステージに移動し、清水依与吏(Vo/Gt)、小島和也(Ba/Cho)、栗原寿(Dr)の3人だけで演奏するなど、このバンドの多面性を実感できる演出もたっぷりと施されている。レーザーを駆使したド派手なステージングにも目を奪われるが、根底にあるのはやはり、一人ひとりの観客と正面から向き合う真摯な態度だ。
ライブハウス、ホール、アリーナと少しずつ段階を上げながらライブバンドとしての地力を蓄えてきた彼ら。すべての音、すべての言葉に全身全霊で思いを込めーー清水依与吏はライブのなかで「当たり前なんだけど、一生懸命、1曲1曲、命がけでやっていくので」と語ったーーオーディエンスの心と身体に直接届ける。それこそがback numberのライブの醍醐味であり、そのスタンスは東京ドーム公演でも微塵も揺らいでいない。