KANA-BOON、キュウソネコカミ、愛はズボーン、ナードマグネット……関西バンドが示す地元&ライブハウスへの愛

 関西出身のバンドは郷土愛と自分たちを育ててくれたライブハウスに対してのリスペクト度合いがとりわけ高い。私は音楽ライターと名乗るよりも、ずっと以前から関西のライブハウスでさまざまなバンドを観てきているが、定点観測していくとそのような結論を出さざるをえない。

KANA-BOONとキュウソネコカミの地元愛

 例えばKANA-BOON。活動初期は大阪・堺市にあるライブハウス、三国ヶ丘FUZZをホームとしていた彼ら。地元に対しての愛着は強く、2017年に同ライブハウスが主催した無料野外ロックフェスティバル『MIKROCK’17』に参加。またその翌年、メジャーデビュー5周年を迎えた彼らは三国ヶ丘FUZZにて5日間連続のライブイベント『Go Back Home』『Go Back Home ~ゆとり~』を開催した。そもそも、彼らが初めて1万人規模のワンマンライブを開催した会場は堺市と同じ泉北にあり、大阪の大規模邦楽ロックフェス『RUSH BALL』の開催場所として知られる、泉大津フェニックスであった。このように観ればKANA-BOONは故郷に対する想いが強いバンドであるといえる。だが彼らだけが特別にそうだというわけではない。

 KANA-BOONと同世代のバンド、キュウソネコカミ。彼らがメジャーデビューした際、メンバーは上京を選択するのではなく、地元・兵庫県西宮に在住することを選択した。ちなみに現在も関西で生活をしている。2020年には配信シングル「Welcome to 西宮」をリリースし、同年と2022年には西宮でワンマンライブも開催。このことから彼らもまたKANA-BOONと同様に地元への強いリスペクトを持っていることがわかる。さらに彼らが関西で初めてワンマンライブをした場所は大阪・梅田シャングリラである。そしてキュウソネコカミが10周年という節目の年、新型コロナウイルスのため有観客でのライブができなかった際、彼らが唯一配信ライブをした場所もまたこのシャングリラであった。

キュウソネコカミ -「Welcome to 西宮」

愛はズボーンとナードマグネット、イベントや楽曲を通した恩返し

 ではKANA-BOON、キュウソネコカミと同世代であり、現在でも関西のインディーズシーンで活動しているバンドはどうか。

 地元愛という点で忘れてはいけないバンドとして、まず挙げられるのが愛はズボーンだ。彼らは自らの地元を心斎橋・アメリカ村だと公言しており、2016年からは同所で『アメ村天国』というサーキットイベントを開催している。同イベントでは音楽だけでなく古着販売、アートワークの展示、さらには漫才などのお笑いも楽しめ、1日でアメリカ村を堪能できる。さらにアメリカ村という場所に対して「怖い」といったイメージを持つ人にも「クリーンで安全な場所」であることを知ってもらえるよう、サーキットイベントでは珍しく「アメ村ゴミゼロ運動」と題して、ゴミ拾いタイムが設けられている。こうしたより多く人に今のアメリカ村を知ってもらいたいという想いからの活動は、地元愛から成せることである。

 また同じく関西を拠点に活動するナードマグネット。同バンドの音楽的特徴は敬愛するカルチャーを歌詞に登場させたり、憧れのミュージシャンのリフやメロディをオマージュすることだ。そして時にその愛情は育ててくれたライブハウスに向けられることもある。その代表例の一つが「Do they know it's para-dice?」という曲だ。

Do they know it's para-dice? / 扇町ジャスティスリーグ

 同曲はコロナ禍に、大阪にあるライブハウス・扇町para-diceの店舗継続のため、有志のバンドマンが作ったチャリティーソングである。そしてこの曲でナードマグネットのボーカルでありソングライターである須田亮太が作詞、作曲、ボーカルと全面的に参加している。扇町para-diceを以前から「心のふるさと」と公言しているナードマグネット。本楽曲はそんな活動初期から幾多のライブを開催してきた場所への恩返しだともいえる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる