GLAY JIRO、高まり続ける音楽への情熱 挑戦を一緒に楽しめるメンバーとの制作やツアーに向けた思いを語る

JIROが語るGLAYの音楽的挑戦

 2月15日、GLAYが61枚目となる両A面シングル『HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-』をリリースした。JIRO(Ba)が作曲・TAKURO(Gt)が作詞を手掛け、3月からスタートするツアー『HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY-』の主題歌とも言える「THE GHOST」は、JIROの音楽的挑戦が詰まったミドルナンバー。もう一方のリード曲「限界突破」は、TERU(Vo)が作詞作曲を手掛けた、王道のGLAYサウンドに仕上がっている。さらにカップリングには、TAKURO作曲の幻の名曲「海峡の街にて」と、HISASHI(Gt)の熱望により三度目のレコーディングが実現したという「GONE WITH THE WIND(Gen 3)」を収録。リアルサウンドでは、JIROにインタビュー。今作の制作秘話やツアーの意気込み、高まり続ける音楽への情熱やGLAY愛について、たっぷりと語ってもらった。(斉藤碧)

実験的な「THE GHOST」をエンターテインメントにしてくれたメンバーに感謝

GLAYアーティスト写真

――まずは、JIROさんが作曲、TAKUROさんが作詞された「THE GHOST」のお話から聞かせてください。昨年、JIROさんはロック以外の音楽をたくさん聴いて、新たな要素を吸収しているとおっしゃっていましたが、今作はまさにその結晶のような1曲ですね。

JIRO:そうですね。この曲は去年の前半に制作したんですけど、その頃って、個人的な趣味として、R&B系とか現代のディスコミュージックをよく聴いていたんですよ。最初は70’sディスコミュージックにハマって、それを再構築したディスコミュージックをやっているリゾとかデュア・リパの楽曲を聴いて、こういうジャンルも面白いなと思って……。今まではヒットチャートに一切興味がなかったのに、今の洋楽ヒットチャートに載っているようなアーティストの曲をたくさん聴くようになったんです。グラミー賞を見て、「この人も、この人も聴いてた!」って思うくらい(笑)。そういうアーティストの楽曲は基本的に、サウンド作りがシンプルで音数も少ないんですけど、一つひとつの音の音圧は強いんですよね。その流れで、自分もそういう曲作りをしてみたいなと。最初の段階で、テンポもダンスミュージックの基本となる120BPMにしようって決めて、サウンド重視で作っていきました。

――とはいえ、エレクトロユニット・80KIDZとコラボレーションした「GALAXY」(前作『Only One,Only You』のカップリング)のような“人をノせる曲”とはニュアンスが違いますよね?

JIRO:たしかに。いつもだったら、ファンの人達がライブでどういうふうにノってくれるんだろう? って考えたりするんですけど、この曲に関しては、あまり考えなかったですね。120BPMっていうのも、GLAYの曲の中では遅いほうだし。もしかしたら、ファンの人達はノリづらいかもしれない(笑)。でも、今回はそういうことを取っ払って、自分が作りたいものを素直に作っていきました。

――「THE GHOST」というタイトルや歌詞の方向性は、どの段階で見えてきたんですか?

JIRO:もともと「THE GHOST」は、僕がデモテープを作った段階で、ギター以外の音は全部家で打ち込んでいったので、原型がだいぶ出来上がってたんですよ。

――コロナ禍で少しずつ揃えていったという、打ち込み機材ですか。

JIRO:そう、それをフル活用してオケを作ったんです。元をとったろうと思って(笑)。だから、最終的には亀田(誠治)さんが打ち込みし直したりしてるんですけど、フレーズや音色はほぼ一緒で。僕がデモ用に書いた仮歌詞も、後々TAKUROが書き直した今の歌詞と、似たような内容でした。

――なるほど、JIROさんの“影”が随所に存在するんですね。

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JIRO:最近のGLAYは、メンバー各々が自分の曲に責任を持つというか。作曲者がプロデュースした曲に他のメンバーが自分なりに演奏を加える、みたいなスタイルが定着しているので、作曲者の色が強く出るんですよね。で、そうやって完成したデモをTAKUROに聴かせたところ、「めちゃくちゃいい。次のツアーのテーマを“THE GHOST”にしようと思ってるんだけど、そのリード曲にJIROの曲がピッタリだ」と。実はTAKUROも、自分で作った曲に「THE GHOST」というタイトルで歌詞を書いてたらしいんですけど、「その曲をバラすから、JIROの曲に歌詞を載せてもいい?」って言ってくれたんです。そこまで言われたら、「もちろんです!」って返すじゃないですか(笑)。……という経緯があったので、わりと早い段階から歌詞の方向性は固まっていましたね。

――ベースのレコーディングに関しては、どのようなことにこだわりましたか?

JIRO:この曲はドラムも打ち込みだし、ベースもシンセベースと生ベースが同じフレーズでずっと展開していくので、レコーディングでは、ジャストなタイミングで弾かないといけなかったんですよね。ベースに揺れがないように。なので、いつもみたいに、ツルッと通しで一発録りするんじゃなくて。1つのフレーズを録ったら、それを繰り返し繋げていって。その上でサビと2番のAメロにちょっとパーカッシブなベースを入れてみたりとか、スパイス的な要素を加えました。

――多分ないとは思うんですけど、一応。JIROさんから「こういうギターがほしいんだよね」とリクエストするようなことは……?

JIRO:(食い気味に)ないない! 「はい次、ギター録って」って言うだけ(笑)。完全に分担制で、それぞれがいいと思う音を重ねてくれました。ただ、デモを作る段階で、TERUが最初に仮歌詞を歌ってくれた時は「この曲は、今まで通りのGLAYっぽく歌えばいいのかな? ビリー・アイリッシュの『bad guy』みたいなダウナーな歌い方も似合うと思うけど、JIROはどう思う?」って聞いてくれて。結局、「うーん、俺も想像つかないからお任せ!」って言っちゃったんだけど、そういうやりとりがありましたね。

――実際に仕上がったボーカルは、妖しい雰囲気はありながらも、ダウナーな歌声ではないですね。

JIRO:最初はかなりダークな感じで歌ってたんですけどね。何回かプリプロを重ねていくうちに、今の形になりました。

――完成した楽曲を聴いて、デモを作り始めた時と印象は変わりましたか?

JIRO:僕の中でこの曲は実験的に作った曲で、面白いけどマニアックな曲を作ったなぁ……っていう印象だったんですよ。TERUが仮歌を歌ってくれた時までは、そういう感じだったんです。でも、その後にどんどんギターが重なり、ボーカルが重なっていくことで、ちゃんとエンターテインメントになったなぁと思いましたね。僕のちょっと変わったテイストの曲をそこまで昇華させてくれたメンバーに、ただただ感謝(笑)。バギクラ(JIROがパーソナリティーを務めるラジオ番組『BUGGY CRASH NIGHT』FM802)で「THE GHOST」を初解禁した時も、「最初はGLAYっぽくない曲調でビックリしたけど、TERUさんが歌うと、やっぱりGLAYですね」っていう感想をもらって、TERUのポップで安心感のある声質、説得力のある歌声の力は大きいなと思ったし。どんな楽曲でもこの4人が揃えばGLAYになるんだなって、今作の制作を通して、改めて実感しました。

――実験的な曲作りを終えて、次なる制作への道筋も見えてきましたか?

JIRO:そうですね。長年ロックにこだわって曲作りをしてきた自分としては、今回の制作でそうじゃないところに少し触れて、これほど長いキャリアを積んだ自分にも、まだまだ音楽的な可能性が残されているんだと思えたことが嬉しかったです。しかも、そんな自分の挑戦をメンバーが一緒に楽しんでくれたので、GLAYとしても、この先にやるべきことが見えてきた気がしています。現時点では。

――と言うと?

JIRO:今はまだ、実際にライブでファンのみんながどう反応してくれるか、わからないから。それによって、この先僕らがやるべきことは変わってくると思うんですよね。でもまずは、メンバーが一緒に面白がってやってくれることが、バンドにとっては重要なことだと思うし、個人的にはいい雰囲気で活動できているなと感じています。

――私は4年ほど、GLAYのみなさんに定期的にインタビューさせていただいていますが、コロナ禍で思うように活動ができない中でも、JIROさんは「今、ベースを弾くのが楽しい」と度々おっしゃっていて。その初期衝動のような音楽愛から新曲が生まれ、バンド内もいい雰囲気の中、ハイコミツアーに突入すると思うと……胸が熱くなります。

JIRO:そうですね。ここ数年、コロナ禍で足止めを食らったことも多々あるけど、そういう時期がなければ新たな音楽を開拓することもなかっただろうし、この経験は何一つ無駄じゃなかったなって、自分でも思う。今、ベーシストとしてモチベーションを高く持てているのも、この時期があったお陰だし。だからこそ、早くライブでみんなに「THE GHOST」を届けたいですね。

「限界突破」は人付き合いを大事にするTERUらしい曲の作り方

GLAY JIRO

――では続いて、もう1つのリード曲「限界突破」について。こちらは、TERUさんが作詞作曲を手掛けた壮大なロックチューンです。

JIRO:「限界突破」に関しては、1年くらい前から、タイアップ(新作モバイルゲームアプリ『ブラッククローバーモバイル 魔法帝への道 The Opening of Fate』)絡みでTERUが曲を作ってたんですけど。実際にデモをもらうまではどういう曲調かもわからなかったし、珍しく亀田さんプロデュースじゃないってことで、どういう作り方をしていくかもわからなかったんですよね。それが結果的には、アルバム『FREEDOM ONLY』収録の「Holy Knight」という曲でお世話になった、YOW-ROWさんがアレンジしてくれたデモとして上がってきて。「Holy Knight」の時と同じく、そのデモテープもすごく完成度の高い状態だったので、そこから自分なりのベースラインを弾けばいいんだなと思っていました。ただ今回も、YOW-ROWさんが作ってくれたベースラインが超カッコよくて! そこにかなり影響を受けながらプレイしましたね。

――割合としては、YOW-ROWさん作のベースラインはどのくらい入っているんですか?

JIRO:大半はYOW-ROWさんが作ってくれたベースラインです。それを無理に崩していくと、この曲のよさが失われていくような気がしたので。ベースラインはもちろん、いろんな面でセンスのいい方なので、今回もたくさん刺激をもらいました。

――また、資料によると「限界突破」は、スノーボード好きなTERUさんが、スノーボード業界で“カービングの神様”と呼ばれるラマさんの「僕たちのスノーボード業界にも限界があるんですけど、その限界を超えること、限界突破することが僕の仕事であり目標なんです」という発言を受けて制作したとか。

JIRO:そうらしいですね。僕も少し前に、初めてラマさんと一緒にスノーボードしたんですけど、滑ってる最中のTERUに、ラマさんが「TERUさん、限界突破ッス! 限界突破ッス!」って連呼してて。その時はまだ歌詞をもらってなかったから、「TERU、いじられてるのかな?」って思ってたんですよ。そしたら「限界突破」って歌詞がきたから、ちゃんと伏線があったんだなって安心しました(笑)。TERUは人付き合いをすごく大事にするタイプだから、TERUらしい曲の作り方だなって思いましたね。

――こちらは疾走感があって、ライブで盛り上がりそうですね。

JIRO:そうなんですけど……この曲、フレーズ自体が結構忙しいんですよね。HISASHIとTERUが作る曲は、あまりにも手元が忙しすぎて、客席を見る余裕がないことがあるんですけど、「限界突破」もそんな感じになると思う(笑)。

――はたしてツアーでは、限界突破したJIROさんが見られるのでしょうか!

JIRO:(笑)。たしかに演奏は大変だけど、この曲は最初からハードルを高く設定して、早い段階から必死に練習してきた曲でもあるので、その成果を見せたいですね。

GLAY / 限界突破

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