EXOメンバーと事務所の契約問題はなぜ起こった? 韓国アイドルが直面する“魔の7年契約”の壁を越えた先に残る課題

 2012年にデビューしてから現在まで、さまざまなコンセプトの楽曲と優れたパフォーマンス力によって、高い人気を集めてきたEXO。K-POPにおける第3世代を代表するグループのひとつでもある彼らのうち、EXO-CBXというユニットを組んでいるベクヒョン(BAEKHYUN)、シウミン(XIUMIN)、チェン(CHEN)の3名が今、所属事務所のSMエンタテインメントに契約解除を通知して大きな話題を呼んでいる。

 EXOは2022年末に事務所との再契約を果たしていただけに、わずか半年での契約解除通知は、過去の事例を振り返ってみても異例の事態と言わざるを得ない。韓国の現地メディアによる報道を見ると、EXOの3名とSMエンタテインメントの主張にはズレがあり、混迷を極めている。そこで今回、EXOの契約解除通知について、現在何が起こっているのかを整理しながら、なぜこのような状況が発生したのかをあらためて考えてみたい。

 時は遡り、2022年12月30日。EXOは、長きにわたる意見調整の末に、ようやくSMエンタテインメントとの再契約手続きを終えた。この「再契約」という言葉は日本の音楽シーンでは耳慣れないものだが、韓国の芸能界では一般的なものである。というのも、韓国では2009年7月より公正取引委員会が標準契約書(標準約款)を定めており(※1)、そこに芸能事務所とアーティストの契約期間を“最大7年”とする項目があるからだ。多くの芸能事務所が公取委の方針に従って自社アーティストとの契約を進めたことで、2009年以降、ファンのあいだにもアイドルグループは“7年契約”であるという認識が浸透していった。

 とはいえ、このような契約形態がスタートしてから、2000年代半ば以降に活躍した第2世代は、7年契約の壁を壊せないグループが多かった。miss A、2NE1、4Minuteなどは、7年目の年に解散。7年の契約期間で活動を終了したグループが多かったがために、“魔の7年契約”とも呼ばれるようになってしまったのである。

 ただ、およそ15年経った今、“魔の7年契約”の認識は少しずつ変わりつつある。というのも、第3世代の多くが再契約を果たすか、グループを解散せずに別の事務所で新たなスタートを切っているからだ。たとえば、デビュー時の事務所で引き続き再契約を行ったグループとしては、BTSとBIGHIT MUSIC(HYBE LABELS)、TWICEとJYPエンターテインメント、SEVENTEENとPLEDIS Entertainment(HYBE LABELS)が大きな話題を集めたのは記憶に新しい。GOT7は各メンバーがそれぞれ異なる事務所に移籍しながら、グループ活動を継続。少女時代や2AMも同様のパターンで活動を続けている。また、自分たちで事務所を新設するグループも出てきており、SUPER JUNIORやINFINITEは独自レーベルや会社を立ち上げ、活動を継続している。

 このように、7年契約を終えたあとのキャリアにさまざまな選択肢が生まれているなかで、EXOは全メンバーが再契約を選択。引き続き、デビュー時と同じ事務所で活動を続けていくと思われていたところに、今回のベクヒョン、シウミン、チェンによる契約解除通知が起こってしまったのである。

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