EXOメンバーと事務所の契約問題はなぜ起こった？　韓国アイドルが直面する“魔の7年契約”の壁を越えた先に残る課題

　ここからは少し、今回の契約解除通知の件について、誰が、どのような主張をしているのかを時系列でまとめていこう。

　まず、事の発端は6月1日にEXO-CBXの3名が、SMエンタテインメントに契約解除を通知したことだった。彼らの主張を要約すると、論点は「契約期間」と「アーティスト側に支払われる報酬」の2点に収れんされる。契約期間について、彼らは練習生期間を含めると、20年以上にわたってSMエンタテインメントに所属しなければならない契約内容になっていることを不服としており、報酬については事務所側が不透明な会計をしていると主張したうえで、精算資料の開示を求めている（※2）。

　これに対し、SMエンタテインメントはすぐに公式文書を発表して反論（※3、4）。要約すると、「①EXO-CBXの3名は外部の人材に契約解除をするよう促されている可能性が高い」「②事務所としては、二重契約が成されていないかを確認をしようとしたが、3名が一方的に契約解除を申し立てている」「③精算資料はいつでも確認できるよう用意がある」「④再契約は大手弁護士事務所の弁護士立会いのもと、1年6カ月にもわたって何度も表現を修正して行ったものであること」の4つの論点が主張された。

　その翌日にメンバー3名から、今回の問題の本質から逸れた反論をしないようにというSMエンタテインメントへの注意喚起を示した文書が公開されると、5日に事務所サイドが一歩引き下がった形で「他のメンバーの合意のもとで、精算資料をコピーして提供する」との文書を公開（※5）。そして同じ頃、メンバー3名が公取委にSMエンタテインメント所属アーティストへの調査を要請したことを発表した（※6）。

　これに対して、同日午後には事務所側が「今回の件は多くの部分が事実と異なっている」と反論（※7）。夕方にはメンバー3名が事務所側に再反論し、精算資料がまだ開示されないこと、事務所側は過去に公取委から契約内容に関して是正命令を受けているにもかかわらず、いまだに改善されないこと、再契約の際には自ら契約内容に合意したというよりも、契約せざるを得ないような心理状態に追い込まれていたことなどを文書を通じて世間に訴えかけ（※8）、この文書に対するSMエンタテインメントからの反論文書は、6月12日深夜の本稿執筆時点ではまだ出ていないという状況である。

　今回のEXOの契約解除騒動は、米国のNMEなどでも報じられ（※9）、世界からも注目される事態へと発展してしまった。SMエンタテインメントは過去にも契約トラブルが発生している事務所ではあるものの、そもそも再契約から半年で契約解除を通知されるという異例の事態は、なぜ起こってしまったのだろうか。

　その原因について、韓国の現地メディアでは、芸能人を不当な扱いから守る法律である「大衆文化芸術産業発展法」で定められた各種規制の抜け穴が原因だと指摘している（※10）。また、再契約時はデビュー当時とは違い、活動の規模やフェーズが大きく変化しているほか、年齢を重ねたメンバーが今後の人生やキャリアをあらためて考える時期にあることも影響していると考えられるのではないだろうか。

　EXOは今後、7月10日のカムバックについてはEXO-CBXも参加する完全体で行うと発表している。これに先立ち、昨日6月12日にはアルバム収録曲の「Let Me In」が先行配信された。果たして契約解除の件は、どのような形で収束を見せるのだろうか。

※1：https://jp.yna.co.kr/view/AJP20090707003700882
※2：https://v.daum.net/v/20230601094258745（筆者訳）
※3：https://v.daum.net/v/20230601103100949（筆者訳）
※4：https://n.news.naver.com/entertain/article/609/0000731685（筆者訳）
※5：https://v.daum.net/v/20230605081345457（筆者訳）
※6：https://v.daum.net/v/20230605091220879（筆者訳）
※7：https://v.daum.net/v/20230605150834631（筆者訳）
※8：https://v.daum.net/v/20230605183729809（筆者訳）
※9：https://www.nme.com/news/music/baekhyun-xiumin-chen-still-part-of-exo-contract-dispute-sm-entertainment-3451040（筆者訳）
※10：https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/1094741.html（筆者訳）