Uru、物語に寄り添い深みを与える歌声 『地獄楽』EDテーマなど、心を重ねる大切さを紡いできたアニメ関連曲

Uru、物語に寄り添い深みを与える歌声

 この数年間における日本のテレビドラマや映画、アニメを観る中で、Uruの歌声に一度は触れたことがあるという人は間違いなく多いはず。また、数々のドラマ主題歌を通して、これまでに何度も彼女の歌声に触れてきた人も少なくないだろう。例えば、「奇蹟」(TBS系ドラマ『コウノドリ 命についてのすべてのこと』主題歌)、「プロローグ」(TBS系ドラマ『中学聖日記』主題歌)、「あなたがいることで」(TBS系ドラマ『テセウスの船』主題歌)をはじめ、Uruはこれまでに何度もドラマの主題歌や挿入歌を手掛けている。昨年の「それを愛と呼ぶなら」(TBS系ドラマ『マイファミリー』主題歌)も記憶に新しいが、ドラマの物語と共に彼女の歌声や言葉を記憶している人は多いはずだ。

 それぞれの作品の本質を鋭く捉えた上で、丁寧に物語に寄り添うメロディと言葉を紡ぐソングライターとしてのスキル。そして、時に温かく、時にドラマチックに物語を彩るシンガーとしてのスキル。その2つを兼ね備えたUruは、ドラマの製作陣から、また何よりも視聴者から、強い支持と深い信頼を勝ち得ていると言えるだろう。ここではドラマ主題歌を例に挙げたが、Uruは、これまでに数々のアニメ作品の主題歌を手掛けているアーティストでもある。本稿では、彼女が誇る、様々なアニメの物語に寄り添うシンガーソングライターとしての才能について迫っていく。

 まず、現在放送中のアニメ『地獄楽』(テレビ東京系)のエンディングテーマに起用されている新曲「紙一重」について。各話のエンディングにおいて、グッと胸が熱くなる展開や思わず息を呑む衝撃的な展開が待ち受けている『地獄楽』であるが、そのエンドロールを温かな歌心で彩る「紙一重」は、熾烈な闘いに身を投じていく登場人物たちが胸に秘める繊細にして切実な感情を丁寧に掬い上げる役割を担っている。順を追って説明していくが、まず、「紙一重」というタイトルが素晴らしい。「紙一重」とは、ごくわずかな隔たりのことである。地獄と極楽を掛け合わせた『地獄楽』という作品のタイトルが何よりも象徴的なように、この物語においては、光と影、正義と悪をはじめとした、それぞれに相反しながらも背中合わせで対となる2つの要素が同時に描かれていく。

【Official】Uru 『紙一重』 TVアニメ「地獄楽」エンディングテーマ

 特筆すべきは、メインキャラクターである死罪人の画眉丸(CV:小林千晃)と、死罪人の打ち首執行人である佐切(CV:花守ゆみり)の関係性である。佐切は、仙薬を探すためにタッグを組むことになった画眉丸を監視する役目を負っており、それ故に2人の間には常にスリリングな緊張感が横たわっている。死罪人と執行人。本来は相容れないはずの2人だが、数々の経験を重ねていく中で、次第に両者の間には絆にも似た深い繋がりが生まれていく。

 Uruは、「紙一重」について、Twitterで「誰かの心を余す事なく全部理解するのは難しいけれど、想像する事で心を重ねたり、その人の幸せを心から願うという深い愛情を歌いたくて作った曲です」と投稿していた(※1)。この言葉を一つの補助線としながら「紙一重」を聴くことで、わずかな隔たりを介してお互いに心を重ね合わせようとする画眉丸と佐切の心情が浮かび上がってくる。サビからラストにかけて歌われる〈あなたは誰かを今日も想いながら/胸に抱いた願い  追い続けるのでしょう/いつかその声が届きますように〉〈何度傷ついても/守り続けた愛が/いつかあなたを包みますように〉という言葉は、愛する妻との再会を目指して闘い続ける画眉丸に対する、佐切の深い想いの表れであると解釈できる。そうした透徹な祈りを託した言葉たちを、ドラマチックでありながらも上品に抑制されたバラードに乗せて届ける「紙一重」は、オープニングテーマの「W●RK」(millennium parade × 椎名林檎)とは異なる切り口で、『地獄楽』の本質を見事に射抜いた楽曲であると言える。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる