新しい学校のリーダーズ、まとまりながらもはみ出すメンバーの個性 独創性に富んだ4人の武器

 まるで小学校や中学校の卒業式でおこなわれる「呼びかけ」のように、台詞を分担して挨拶するメンバー4人。そして決まって『ドラゴンボール』のギニュー特戦隊のようなポージングを披露する。この懐かしくも特殊な自己紹介が、今では日常茶飯事のように聞こえてくるようになった。TikTok、YouTube、Twitterはもちろんのこと、テレビ、ラジオなどさまざまなメディアにも登場するようになり、新しい学校のリーダーズは幅広い世代から知られるようになってきた。

新しい学校のリーダーズ - オトナブルー / THE FIRST TAKE

 「青春日本代表」を自称する新しい学校のリーダーズの活動がスタートしたのは、2015年。今でもはっきりと覚えているが、同年、ガム商品『Fit’s』のCMソングをtofubeatsがリミックスした「噛むとフニャン tofubeats Remix」にのって、セーラー服姿の少女たちがキレキレの動きと異様にまとまっているダンスを披露。その動画は、良い意味で奇妙な引っ掛かりがあった。当時の写真や動画では「実現不可能」とされてきた、全方位を見渡すことができる「360°VIDEO」という最新技術が駆使された表現の新しさも、これからなにかを起こしそうなグループのムードにピッタリと合っていた。その上、醸し出されるサイケデリックな要素は「アイドルグループ」として異色中の異色。そう、このときの彼女たちは「アイドル」として括られていたのだ(括らざるを得なかった、と言った方が適当かもしれない)。ただ新しい学校のリーダーズはその後、分類不可能なジャンル性を放つようになり、特定の枠組みからもどんどんはみ出していった。

新しい学校のリーダーズ / 『噛むとフニャン tofubeats Remix』360° Music Video Clip

KANON「結成当初は名前と好きな食べものしか情報として出さなかった」

 楽曲面でも、「毒花」(2018年)ではMVのタイトルロゴや世界観で梶芽衣子主演の映画『女囚さそり』シリーズを連想させながら「昭和歌謡」というグループの方向性の一つをはっきり指し示し、「SNS24時」(2017年)はSNSにとらわれる現代の人々の模様をキャッチするなど、彼女たちの目線と身体を通した時代性が描き出されていた。

ATARASHII GAKKO! - 新しい学校のリーダーズ 「毒花」
ATARASHII GAKKO! - 新しい学校のリーダーズ 「SNS24時」MUSIC VIDEO(Youtube ver.)

 一方で筆者が興味深かったのは、表現の鋭さをひしひしと感じさせながら、素性をはっきり明かさなかったところだ。彼女たちにインタビューした際、メンバーのKANONは「結成当初は名前と好きな食べものしか情報として出さない、など作り込んだところがあった」と話していた(※1)。それは情報過多なこの時代に向けた新しい学校のリーダーズなりの批評のようにも受けとれたし、とりわけ「女性アイドルシーン」に限ってみても音楽性からスタイルまでなんでもありな状況のなかで唯一無二をアピールするための「模索」にも思えた。

 一つ言えるのは、そういった実験性こそが新しい学校のリーダーズの大きな魅力であるということ。インタビュー時、MIZYUは「以前までは4人が中心になってライブの演出を考えていたんです。自分たちでダンボールを切ったり、縫い合わせたりして。そういうアナログなやり方も文化祭みたいで楽しかった。でも2022年の『無名卒業ライブ』でプロの演出家さんに入っていただいて、初めて見えた景色がたくさんありました。また、そういう本格的なステージや演出を経験したからこそ、手作りでやっていた時期の尊さにも気づくことができた。両方のやり方が好きなんですよね」と振り返っていた(※2)。駆け出しだった頃は、当然ながら予算や表現方法にも限りがあったはずだ。このコメントは、4人の「突飛さ」も含んだアイデアを具現できるのは、彼女たち以外あり得なかったことの証明ではないだろうか。それくらい独創性に富んでいたと考えられる。そしてそれは現在まで、4人の「武器」になっている。

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