aikoと優里、シンガーソングライターの対照的な最新作が上位に 作風や歌の強みに表れる違い
参照:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2023-04-10/
2023年04月10日付のオリコン週間アルバムランキングで首位を獲得したのはaiko『今の二人をお互いが見てる』で、推定売上枚数は30,210枚だった。ついで2位には優里の2ndアルバム『弐』が25,471枚を売り上げてランクイン。ほか、トップ10内での初登場作品を列挙すると、5位 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ デビューミニアルバム「Dream Believers」』(9.593枚)、6位 クリープハイプ『だからそれは真実』(7,353枚)、9位 FUNKY MONKEY BΛBY’S『ファンキーモンキーベイビーズZ』(4,877枚)、10位 ZIPANG OPERA『風林火山』(4,833枚)だった。
さて、今回取り上げるのは2作品。aiko『今の二人をお互いが見てる』と優里『弐』だ。まずはaikoから。
『今の二人をお互いが見てる』は、7月にはデビュー25周年を控えるaikoの15作目。今作のリリースが告知されたときから、このアルバムタイトルにはしびれた。なんてことのない日本語の一文、と言ったらそれまでだけれど、「今」という形容詞があるだけで途端に重みが増す。
というのも、「今」を見ることは思っているより難しいと思うからだ。とくに、そこになにか特別な表現――たとえば「恋」とか――を託そうとするときに。誰かを見つめるときには、ただただ見つめるだけじゃなくて、そこに過去(これまでの関係)を重ねたり、未来(これからこうなりたい、という願望)を重ねたりしてしまうこともあれば、ときには他の誰かの面影をそこに見出してしまいもするだろう。そのほうが、率直でシンプルな表現よりもなにか含蓄があるような気がしてしまう。しかし、現在進行形で、今のお互いをまなざしあう。こんなことが成立するとしたら、たしかにそれは恋に代表されるような、ふたりのあいだの特別な関係があってこそだろう。そんなことに改めて思い至ったのだった。
長々とタイトルについて語ってしまったが、今作は聴きどころの多い作品だ。アレンジは、aiko作品ではおなじみの島田昌典と、前作『どうしたって伝えられないから』から続くトオミヨウ。ダイナミックなホーンを使いながら華やかなサウンドに仕上げる前者に、要所要所でのミニマルなアプローチが光る後者。特にトオミが手掛けたラストナンバー「玄関のあとで」は声色からピッチまで繊細なニュアンスが詰め込まれたaikoのボーカルを引き立たせるシンプルなアレンジに聴き入る。〈君が泣いたあの日は〉のか細く連なるハイトーンは思わず身震いするほど生々しい。