aikoと優里、シンガーソングライターの対照的な最新作が上位に 作風や歌の強みに表れる違い

 続いて、優里。こちらはシンガーソングライターとしてのデビューから5年目での2作目。「ドライフラワー」のヒットをはじめ印象的なラブソングを送り出してきた優里だが、その本領はどんなところにあるのだろうか? 遅まきながら改めて考えてみる。

 クセの強い、コブシを効かせるかのようなボーカルに、言葉をしっかりと下支えして耳に刻み込んでいくメロディ。そうしたシンガーソングライターとしての強みは、曲を聴いて真っ先に飛び込んでくる。素朴ながら闊達に動く歌メロと力強い歌声の相性はさすがに良く、CHIMERAZが手掛けるサウンドは過不足なく楽曲を盛り上げる。

 しかし、もっとも印象的なのは、「この一言」という比喩に曲のテーマを凝縮させて、ときにはかなりファンタジーチックな物語を仕立て上げるキャッチーな歌詞だろう(たとえば「ベテルギウス」に代表されるような)。今作でも、アルバムの冒頭を飾る「ビリミリオン」のSFのようなおとぎ話のような想像力や、「アストロノーツ」の宇宙に広がる物語は、いささか暑苦しくもあるボーカルとは少しギャップを感じるくらいだ。

優里『ビリミリオン』Official Music Video

 とはいえ、詩的な飛躍で遠くにつれていくというよりは、どこか箱庭っぽくもあり、メッセージ自体は生活感があるというか、地に足の付いたところがあるように思う。ファンタジーへの没入と、身近な日常へのまなざしのバランスがほどよいというか。それゆえ、内容如何に関わらず、安心して聴いていられる。もうちょっとスリルがあってもいいのにな、とも思うのだけれど……。

 たまたま1位・2位と連なったaikoと優里だが、並べてみるとなかなか対照的で面白い。実際に耳を傾けて体感してみては。

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