coldrain、15年分の仲間と築いた“声を上げる場所” ライブシーンの盛大な狼煙上げとなった『BLARE FEST.2023』を総括

『BLARE FEST.2023』総括レポート

 結成15周年を迎えた2022年から2023年にかけて、coldrainは国内ラウドシーンのリーダーとして新たなスタートラインに立った。昨年10月の横浜アリーナ公演、そして先日2月4日〜5日にポートメッセなごやで行われた『BLARE FEST.2023』を観て確信したことだ。

 最初のブレイク以降、海外に乗り出す過程でハードコアやメタルコアに振り切るなど、その時々のバンドの在り方と照らし合わせながら音楽性を変化させてきたcoldrain。だが、ハイクオリティなパフォーマンスや楽曲に反して、2010年代に1つ成し遂げられていなかったことがあるとすれば、彼らを中心としたラウドシーンを国内に築き上げること。「俺らの世代に後から追随してくるバンドがいなかった」「もっと日本でも行ける場所があるんじゃないか?」「究極の邦楽として枠を超えていきたかった」(※1)といった葛藤は本人たちも明かしている通りだが、そこに対して曲作りの過程から自覚的になり、coldrainの“やりたいこと”と“やるべきこと”を見事に昇華し切ったのが、アルバム『FATELESS』(2017年)と初の日本武道館公演(2018年)のタイミング。そしてついに、coldrain発信で1つのシーンを形にできたのが、初開催となった前回の『BLARE FEST.2020』だった。

 しかし、その直後からコロナ禍に突入。音楽業界全体でライブが止まってしまったわけだが、coldrainは『Nonnegative』(2022年)という新たな金字塔アルバムを携え、再びラウドシーンを動かすために戻ってきた。「マイナスになってしまったものを0に戻す」という意図が込められた同作で、coldrainは15年間で紡いできた仲間との繋がりや、自らの音楽的ルーツを過去最もストレートに楽曲に落とし込んでいる。例えば、彼らと歩んできた全てのリスナーとバンドに捧げられた〈15 years of believing/5 + all that held the line/we’re not leaving nobodies leaving〉(「CALLING」)という歌詞。あるいは、Linkin ParkやHoobastankなど2000年代ミクスチャーロック&ニューメタルを彷彿とさせつつ、巨大なスケールのサビで一気に飛翔させるサウンド。現に“仲間”と“ルーツ”が今年の『BLARE FEST.2023』を象徴するキーワードだったことを思えば、『Nonnegative』に込められていた全てが『BLARE FEST.2023』への狼煙だったと言えるかもしれない。

 コロナの打撃をダイレクトに食らったロックバンドが、居場所を取り戻すために仲間と手を取り合い、もう一度“声を上げる”こと。表面的なジャンルではなく、内面性やアティテュードで団結するために、coldrainのルーツであるミクスチャーやニューメタルが体現していた精神性に立ち返ること。それこそが再びラウドシーンを動かす鍵になるという想いで組み上げられたのが『BLARE FEST.2023』であり、coldrainが『Nonnegative』で目指したものだったのではないか。

 それを踏まえると、国内ポストハードコアの筆頭 Fear, and Loathing in Las Vegas、Pay money To my Painから派生する形で生まれたThe BONEZ、メタルコアの正統な継承者 Sable Hillsという3組が初日の各ステージでトップバッターを務めたことは、『BLARE FEST.2023』の在り方を浮き彫りにしている。特にSable Hillsのライブをステージ袖から嬉しそうに眺めるMasato(Vo)の姿が印象的だった。coldrainにも刷り込まれているメタルコアのDNAを意識的に研ぎ澄ませている若手が現れたからこそ、『BLARE FEST.2023』の中でフックアップできたことの意義はとても大きかったはずだ。

 以降も2日間を通して、Dragon Ash、ROTTENGRAFFTY、マキシマム ザ ホルモンといった先輩バンドや、MAN WITH A MISSION、SiM、HEY-SMITHなど2010年代を並走してきたミクスチャー〜ラウドロックバンドがひしめき合うタイムテーブルとなった。また、スカの精神性の下にジャンルを越境しながらフェスの常連になった、ミクスチャーロックの先達のような東京スカパラダイスオーケストラや、今一度ロックバンドの強度を高めるために実験とコラボレーションを重ね、主催イベント『PARASITE DEJAVU』というフィールドを築き上げたTHE ORAL CIGARETTES、「できることが増えていくと、今度は何かをやらないことで叩かれる人も出てくるかもしれない。けれど、俺たちは弱い者の味方でもないし、ましてや強い者の味方でもない。正真正銘あなたの味方だ」という核心を突くMCで隔たりを取り払い、個々の尊厳を歌に乗せていったSUPER BEAVER……など、一見ラウドやミクスチャーから縁遠いバンドも、coldrainのストーリーと重ね合わせることで、1組1組がこの場にいる意味が浮かび上がってくる。

 中でも『BLARE FEST』の根幹と共振しながら、忘れられないライブをしたのがDragon Ash。コロナ禍がライブシーンにもたらした最大のダメージは、声も動きも封じられたことで、「どんなに社会が窮屈でもライブハウスだけは自由なんだ」という感性が失われかけたことにある。だが規制緩和で、久々に大声を出せるフェスになった感慨もあったのだろう。Kj(Vo/Gt)の目に浮かんだ涙には、がんじがらめだった3年間を乗り越え、“俺たちのライブ”が本来の姿を取り戻しつつあることへの喜びと、そんな場所をcoldrainが築いたことへの感謝が溢れていた。さらに、大合唱の「Fantasista」でJESSE(The BONEZ)がステージに登場し、終盤にはダメ押しの「ROCK BAND」まで披露。〈声高々に仲間と誓う そんなオレらROCK BAND〉という歌詞が、全出演バンドとオーディエンスの人生を讃えるかのように高らかに鳴り響いた。仲間と混ざり合いながらロックバンドとして走り続けてきた意味ーーすなわち『BLARE FEST』が今ここで開かれていることの意味を、強く体現するライブだった。

Dragon Ash

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