coldrain、15年分の仲間と築いた“声を上げる場所” ライブシーンの盛大な狼煙上げとなった『BLARE FEST.2023』を総括

『BLARE FEST.2023』総括レポート

 海外アクトも『BLARE FEST』の見どころの1つ。今回はcoldrainから見た若手・同期・先輩で、各世代なりのミクスチャーを体現する3組が揃った。ロンドン出身のWARGASMは、ビートミュージック以降の感性でニューメタルを再解釈し、煌びやかに見える世界の裏側にある混沌や自己閉塞を、トランスを引き起こすような強烈な音像で鳴らしてみせた。同じくロンドン郊外のベッドフォードで結成されたDon Brocoは、楽曲によってポストハードコア、ニューメタル、オルタナティブロックなどさまざまな表情を見せながら、エンターテインメント性の強いステージを展開していく。

 coldrainの直接的なルーツと言える、米ロサンゼルス出身のHoobastankのステージにはMasatoがゲストボーカルとして登場。シャウトパートで共演を果たした「Out Of Control」は、coldrainの15年間が結実したような名シーンとなった。余談ながら「Bloody Power Fame」(coldrain)は同曲へのオマージュなのかもしれないが、少なくとも『Nonnegative』を聴く限り、Hoobastankがcoldrainの根幹にあるとても大きな影響源であることは間違いないだろう。

Hoobastank

 そして両日のトリを飾ったcoldrainのステージは本当に素晴らしかった。「Final destination」「Die tomorrow」「To Be Alive」「No Escape」などの爆発力溢れる初期曲、「Vena」「Fire In The Sky」などのヘヴィな中期曲、そして「Help Me Help You」「Cut Me」「Rabbit Hole」などサビのメロディが冴え渡る『Nonnegative』の楽曲をバランスよく配置したセットリスト。今のcoldrainのモードはもちろん、〈We're making history〉(「F.T.T.T」)と歌われたように、まさにcoldrainの歴史を体感させるライブだった。その象徴こそ、初日の「RUNAWAY」でJESSE(The BONEZ)が、2日目の「The Revelation」でライブ活動休止中のKoie(Crossfaith)がステージに登場した瞬間だ。SiMのステージでMasatoが客演した「f.a.i.t.h」もそうだったが、共にラウドやミクスチャーを切り拓いてきた仲間と歌い上げられたこれらの楽曲は、間違いなく2日間のハイライトだった。

 Masatoは、初日のMCで「俺たちに才能があるとすれば、15年間諦めず続けてきたこと」だと語り、2日目のMCで「音楽をやっていたら、困った時もこんなにたくさんの仲間が助けてくれる」と語った。それは15年間かけてついに辿り着けた景色への感慨であり、coldrainという輪の中で手を取り合えた多くの仲間との絆こそ、閉塞を打破するために必要なものだという確信でもあったと思う。また、前回の『BLARE FEST.2020』を境にコロナ禍に突入してしまったため、今回の『BLARE FEST.2023』は明確に声を上げるフェスにしたいーーすなわち、“ライブシーンが前進することの象徴”として『BLARE FEST.2023』を開催したいという気概もあったはずだ。Masatoがライブ中に放った「日本最高峰、いや日本一のフェスへようこそ!」という力強い言葉は、2023年のライブシーンに求められる景色と、coldrainの5人が長年夢見てきた景色が、この『BLARE FEST.2023』で実現できたことへの喜びの証だったのだろう。

Masato
Y.K.C
RxYxO
Sugi
Katsuma
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Masato
Y.K.C
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 今年5月に米ラスベガスで開催予定の『Sick New World』は、System of a Down、KoЯn、Deftones、Papa Roach、Hoobastankらが出演する巨大なニューメタル&ミクスチャーロックフェスとして注目を集めている。多様なジャンルを取り込みながら固定概念を壊し、声なき者の声を代弁するアティテュードこそが本来の“ロック”や“メタル”だったことを思えば、ノスタルジーとは正反対の意味で、ニューメタル&ミクスチャーロックが今再び脚光を浴びている理由もよくわかるだろう。そして今回の『BLARE FEST.2023』も間違いなくそこに通ずるフェスだった。2000年代、日本のミクスチャーロックは海外のニューメタル、ポストグランジ、ポップパンクなどと共振しつつも、独自の進化を遂げてラウドロックを生み出した。そして、その意志を受け継ぐバンドが、時にポップミュージックともシームレスに繋がりながら、新しい音楽を生み出し始めている2020年代。それらをひっくるめて、“誇り高きラウドシーンの歴史と最前線”としてプレゼンしてみせたのが『BLARE FEST.2023』の大きな意義だ。

 最後になるが、会場に入ってすぐ見える巨大な『BLARE FEST.2023』の横断幕が絶好のフォトスポットになっていたほか、充実したフード店舗のラインナップ、ゆっくりと休憩も取れる広々とした会場、そして海沿いの景色なども含め、とても快適に過ごせるフェスだった。毎年開催されるフェスではないものの、ライブシーン全体にラウドな活力が必要になった時、また『BLARE FEST』は戻ってきてくれるだろう。次の開催が早くも楽しみである。

※1:『MUSICA』Vol.126

■リリース情報
2023年4月19日(水)発売
coldrain 映像作品『“15 ×( 5 + U )” LIVE AT YOKOHAMA ARENA』
予約・購入
https://coldrain.lnk.to/LiveAtYArena

Blu-ray
初回限定盤(2BD+PHOTO BOOK+特殊パッケージ)¥8,250(税込)
通常盤(2BD)/ ¥6,600(税込)
DVD
初回限定盤(2DVD+PHOTO BOOK+特殊パッケージ)¥7,700(税込)
通常盤(2DVD)¥6,050(税込)

<各仕様共通>
★Disc1
2022年10月16日の『15 ×( 5 + U )LIVE AT YOKOHAMA ARENA』公演
*MC含む全編ノーカット収録
*メンバーによるスペシャル副音声付き
★Disc2
Behind the scenes of "Nonnegative"
*アルバム製作秘話、ONE MAN TOUR 2022密着映像、メンバーインタビュー特別収録

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