Dragon Ash、ロックバンドとしての歩みを止めなかった25年間 揺るぎない意志を体現した特別な夜

Dragon Ash、デビュー25周年公演レポ

 2022年2月21日、Dragon Ashは25回目のデビュー記念日を迎えた。本稿ではこの日、豊洲PITで開催されたワンマンライブ『DRAGONASH 25th Anniv. LIVE “THE SILVER LILIES”』について振り返っていく。

Dragon Ash

 今さら説明不要かもしれないが、Dragon Ashは日本の音楽シーンにおいて、ミクスチャーロックの可能性を果敢に切り拓き続けてきたバンドである。ロック、パンク、ハードコア、グランジ、ヒップホップ、ラテンをはじめとしたジャンルの壁、邦楽と洋楽の壁、メジャーシーンとストリートシーンの間に立ちはだかる壁、そうした数々の壁を越境し続けてきた彼らの野心的なトライアルの数々が、日本の音楽シーンにおけるロックの革新を推進してきたといっても過言ではないだろう。今では当たり前のものとして浸透しているミクスチャーロックという概念に、確かな輪郭と市民権を与えたことは、Dragon Ashのあまりにも大きな功績の一つだ。

 もちろん、彼らが突き進んできた旅路は、決して平坦なものではなかったはずだ。幾度となく迷い、葛藤し、傷つきながら、それでも懸命に板の上に立ち続けた25年間の歩み。その過程の2012年には、バンドのオリジナルメンバーであったIKUZONEの急逝という、あまりにも大きすぎる喪失もあった。そして2020年には、ダンサーとしてDragon Ashのステージを鮮やかに彩ってきたATSUSHIとDRI-Vとの別れも経験した。

 それでもDragon Ashの歩みは、いつだって彼らのロックを信じて、歩みを共にするリスナーたちによって支えられていた。Dragon Ashは、そうした同志たちとの連帯を何よりも重んじているバンドであり、だからこそ、この25年間の孤高な旅路は決して孤独なものではなかったのだと思う。

 前置きが長くなってしまったが、今回のファンクラブ会員からのリクエストをもとに編纂されたセットリストは、まるで、Dragon Ashを信じて共闘を続けてきた同志たちとの絆を再確認するために編まれたもののように思えた。この言葉を安易に使うのは憚られるが、これまでの四半世紀の歴史を総括する意味合いも込められたこの日のセットリストは、やはり、あまりにも「特別」なものであった。

 はじめに1枚目のミニアルバム『The Day dragged on』から、表題曲「The Day dragged on」と「天使ノロック」が立て続けて披露される。当時3ピースバンドとして走り始めたDragon Ash、その歴史の原点に滲む剥き出しのエモーションが、現在の5人体制で再演されていく。続けて、これまでのバンド史を辿っていくようにして、初期の楽曲が次々と披露されていく。ヒップホップのアプローチを追求した「Under Age's song」、スカのリズムを大胆に導入した「Just I'll say」などのナンバーが特に象徴的であったように、まさにバンドの進化の過程を追体験していくようなパートであった。

 共に歩んできた同志たちへのメッセージとして鳴らされた「運命共同体」を経て、ラテン×ロックの「Los Lobos」、バンドサウンド×スクラッチの「Let yourself go, Let myself go」など、ミクスチャーロックの可能性を切り拓き続けるDragon Ashの生き様をそのまま表すような楽曲が続いていく。そして中盤は、過去のアルバムにシークレットトラックとして収録されていた「花言葉」「HOT CAKE」「Iceman」が立て続けに披露される。おそらく多くの観客にとって、これらの楽曲の披露は、たとえ期待はしていたとしても予想外だったはずで、フロアからは驚きと歓びを目一杯に表すように無数の拳が上がっていた。

 Dragon Ashの歴史を語る上では決して欠かせない代表曲「Life goes on」の後に披露されたのは、そのシングルのカップリング曲「Snowscape」だ。獰猛に爆走していくロックナンバーであり、まるでリミッターが解除されてしまったかのような5人の加熱ぶりに、フロアの温度も一気に高まっていく。その熱量の上昇をさらに加速させていくかのように「Revolater」がドロップされ、ゲストにSHUN、SHIGEOを迎えて披露された「Episode 4」では、3人の怒涛のマイクリレーが繰り広げられていく。

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