coldrain、攻めの信念を貫き続けた15周年の集大成 “ラウドロックの新たな始まり”も告げた圧巻の横浜アリーナ公演

coldrain、集大成と始まりの横浜アリ公演

 coldrainにとって、初の横浜アリーナ公演『15th ANNIVERSARY “15 × (5+U)” LIVE AT YOKOHAMA ARENA』が10月16日に開催された。結成15周年に至るまでの軌跡を見せるだけでなく、日本のラウドロックを最前線で担ってきたバンドとして“今どんな音を鳴らすべきなのか”まで克明に刻みつけた、素晴らしいライブであった。

 2007年に名古屋で結成されたcoldrain。2009年の1stアルバム『Final Destination』でハードコアやスクリーモ由来のサウンドから出発し、初の海外レコーディングを行った2ndミニアルバム『Through Clarity』で強靭なアグレッションを手にしたのが2012年。さらに3rdアルバム『The Revelation』でオーセンティックなメタルコアを取り入れた後、本格的な海外進出を果たしたのが2014〜2015年。それから10周年を迎えた2017年以降は、再び国内シーンにリーチし得るような楽曲を生み出しているが、それは海外進出が単に広がりを手にするための出来事だったのではなく、“内なるcoldrainらしさ”を研ぎ澄ませる上での重要な転期になっていたことを意味している。

 2010年代後半といえば、主にBring Me The HorizonやI Prevailが先導してきたメタルコアやポストハードコアのポップ化が海外のヘヴィミュージックシーンを席巻したタームだが、2022年現在はそうしたサウンドがすっかり飽和化していると言っていい。この現状を思うと、coldrainがその間に自分たちならではのオリジナリティとしっかり向き合い、作品を生み出していた意義は非常に大きい。海外進出を経験したバンドとして、時にトレンドを取り入れながらもそこに左右されるのではなく、あくまでcoldrainの核を最大限に羽ばたかせるためにはどうするべきなのかーーその答えとして、本来の武器である歌とメロディを自由に研ぎ澄ませたことで、今回のライブでも軸になっていたアリーナクラスの楽曲が次々と生まれていくことになる。『FATELESS』(2017年)、『THE SIDE EFFECTS』(2019年)を経て、今年7月にリリースされた最新作『Nonnegative』はその最高到達点だ。

 コロナ禍によってもともとの予定より2年延期された横浜アリーナ公演だが、そうしたcoldrainの歌、メロディ、ハイクオリティな演奏が過去最高に濃縮された『Nonnegative』を披露する場として、結果的に横浜アリーナは最良の場だったのではないだろうか。開演前のSEで流れていたSlipknotやHoobastankなど、coldrainのルーツとなったバンドのエッセンスが『Nonnegative』にはブラッシュアップされて注ぎ込まれているが、それもライブが決して当たり前ではなくなった期間を経て、coldrainが再び開放的なライブに向かうために必要な原点回帰だったのだと思う。Masato(Vo)もMCで語っていたように、「マイナスになってしまったものを0に戻す」意味合いが込められたアルバムであり、15周年の集大成でありながらも、もう一度未来に向かうための“始まりのライブ”でもある。『Nonnegative』とは、何度もシーンや自分たち自身と向き合い続けた先で、本来の武器を自覚したロックバンドとしての在り方そのものを意味しているのだ。

 そうやって、coldrainはどこまでも“coldrainのまま”横浜アリーナのステージに立った。

 ライブは『Nonnegative』のオープニングナンバー「Help Me Help You」からスタート。一列に横並びで登場した5人の快調な演奏が響き渡り、歓声は上げられないが、クラップやシンガロングを促すパートにオーディエンスが全身全霊で応えていく。2曲目「CALLING」に入る前には、背後のスクリーンに歴代のアルバムジャケットがずらりと並び、誰もが15年間のcoldrainの歴史と自分自身の歩みを重ね合わせることができたはず。

 徹頭徹尾クールな映像演出と合わせて、スクリーンにはダイナミックに歌詞も投影され、メッセージでもリスナーを射抜いてきたバンドであることを実感させた。〈no matter how breathless/no matter how hopeless/don’t go dying on your own/just help me help you/straight through hell together〉(「Help Me Help You」)や、〈15 years of believing/5 + all that held the line/we’re not leaving nobodies leaving〉(「CALLING」)といった歌詞は特にストレートで、その場にいるオーディエンス全員もcoldrainの歴史の一部なんだということを堂々と証明してみせた。ライブタイトルの『15 × (5+U)』もまさにそう。揺るぎない5人と全てのリスナーで作り上げてきた15周年ライブのオープニングがこの2曲だった時点で、ライブの“勝ち”は確約されていたようなものだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる